2007-10-10
■[編集]100万冊のマンガを、凡人が売るということ
今日は通常業務や単行本作業に加えて、来年行われる予定のものがいろいろ動き出してあわただしい一日でした。「あの野郎、やりやがった!」と言ってもらえそうなことをいくつか動かしていますので、今から楽しみです。
さて。マンガというのは当たるとものすごくて、何百万部も売れるものだと世間様からは思われています。そういう世界も一応あるにはあるのですが、ほとんどの出版関係者には縁のない話で、実際のところは短期間に10万部以上を売り上げればそこそこのヒット作品と認識されます。
「現役編集者が怒りの提言「権利ビジネスに頼るな!!」(後編)」にいい塩梅の記述があったので抜き出しますが、はじめて世に出た時ののだめカンタービレは「初版2万部程度の作品」だったようです。刊行後どれほど伸びるかは中身と運によりますが、最初の部数はどれも意外とそんなもんです。
私は凡人ですので、オリジナル作品を何百万部も売るような眼力や手腕は持ち合わせていません。またミリオンセラー作家の卵に幸運にも出会うことができて、かつその人物が自分を選んでくれると思えるほど楽天家ではありません。では、そんな人物には本を売ることはできないかというと、答えは否です。
私の担当作品のひとつが、あと少しで累計100万部に達します。原作を吟味し、作家を選び、プロットに細心の注意を払い、作家ががんばり、足りないところは他の作家の力を借り、アニメの力を利用し、表紙も付録も誌上通販も連動企画も初回限定版もやりつくし、新規のデザイナーを開拓し、カバーを原作のイラストレーターに塗ってもらい、本のオビをカラーにし、販促物を作り、販売のタイミングを測り続け、営業さんと書店員さんに尽力してもらって、積み上げた100万冊です。
才能があれば、大作家が担当にいれば、する必要のない苦労かもしれません。でも、これは裏を返せば、適切な努力をし、最善を尽くして、いろいろな人に協力してもらうことができれば、才能が乏しくても数字を出せるということです。
大手や天才たちの影で、こんなことを考えながら淡々と数字を積んでいく編集者が、一人ぐらいいてもいいじゃないかと私は思うのです。