二十一日の全国学力テストは愛知県犬山市が参加に転じ、国公立は全校で実施される。だが、私立校の参加は減る一方だ。文部科学省がこだわる「一斉」にならないのは、目的が見えないからだ。
小学六年と中学三年が対象の全国学力テストは今年で三回目だ。全国の自治体が初回から参加したなかで、犬山市は「競争で学力向上を図ろうというテストは教育理念に合わない」と過去二回とも不参加だった。
しかし、三月の市教委で今年は参加を決めた。不参加に批判的な田中志典市長は教育委員を増員し、任期切れとなる参加反対派委員を賛成派委員に入れ替えた。多数派工作が実った結果といえる。
保護者のなかには「なぜ犬山だけが不参加なのか」「テストを受けさせ、結果を知りたい」といった疑問や反発があった。市長はそんな声に耳を傾けたのだろう。
市教委が不参加を貫いてきたのは、瀬見井久教育長の強い個性と指導力もあったろうが、独自に進めている教育改革への自信と自負があったからにちがいない。
点数ばかりに注目が集まる学力テストを教育現場でどう役立てるのか。学校別の成績公開はしないとみられるが、市としてデータをどのように活用していくのか。
ここで参加に転じるなら、そこまで踏み込んだ議論をしてほしかった。犬山市の努力は全国から注目されていただけに、「横並び」と落胆させてしまう。
国公立は全校参加となるが、私立はテスト離れが進む。参加校は一昨年62%、昨年53%だったが、今年は48%とさらに下がる。
不参加の理由はいくつかある。結果が届くのが遅くて活用しにくい▽学校の学習進度と合わない▽学校や生徒の客観的な学力は民間の模擬試験で十分−などだ。
いずれも児童生徒にとって役立たないという判断だ。文科省はテストの目的を「全国規模で結果を分析し、学力向上に活用する」というが、私立の減少傾向はテストがその目的に合致していないことを裏付けているのではないか。
義務教育なのに公私間で対応に差があれば「一斉」の意味は薄い。国公立実施校も半分程度の抽出調査に変えてはどうか。一回五十億円以上の費用も削減できる。
学力テストは競争原理による学力向上が図られ、結果を通じて各教委を監督できる。国が一斉に固執するのはそんな狙いと思惑があるのでは、と勘繰ってしまう。
この記事を印刷する