2008-01-03
■[雑学]巡査大明神 ― 神様になったおまわりさん
正月ということで、神社や初詣の話題が一部盛り上がっております。
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そこで私からもひとつ。日本で唯一おまわりさんを神様として祀っている変わり種、佐賀県の増田神社の話を紹介したいと思います。
増田神社の祭神は「巡査大明神」こと佐賀県巡査の増田敬太郎氏。明治2年(1869年)、熊本の豪農の家の長男に生まれた彼は、北海道の開拓や役場の書記、養蚕業、貿易業などの仕事を転々とした後に明治28年(1895年)7月に佐賀県の巡査教習所に入所。10日ほど教習を受けて佐賀県巡査を拝命した彼は、すぐに当時コレラが流行っていた唐津市の肥前町高串に派遣されます。
ところが、7月21日に高串に入った増田巡査は2日後の23日午後にコレラを発病。翌日の午後3時に亡くなってしまいます。実際のところ巡査としての活動は3日しかしておりません。
落ち着かない職歴や亡くなりかたを見るに、どうも相当なうっかり八兵衛臭のする増田巡査なのですが、彼はわずか3日とはいえコレラを恐れずに献身的に働き、亡くなる時には
私が高串のコレラはあの世に背負っていきます。
と言い残したと伝えられています。そして、因果関係はともかくとして、彼の死に合わせたように、高串のコレラは終息を迎えたのです。
増田巡査の言動に感動した人々は、彼の遺骨の一部を近くの秋葉神社に埋葬し、墓碑を建立しました。その後も増田巡査にまつわる霊験譚がいくつか流布し、人々の崇敬の念やみがたく、昭和15年(1940年)にはついに秋葉神社を合祀吸収する形で「増田神社」が誕生。秋葉明神を追い落として「巡査大明神」が主祭神となります。
なお、増田神社は今でも尊崇を集めており、毎年7月26日に近い日曜日には増田神社夏祭りが催されます。
八百万の神を祀る神社の中でもとびきりの変わり種の増田神社。佐賀に行くことがありましたら立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
※今回の参考文献