2008-03-01
■[お仕事]3つのよくある質問とその回答
今日の一枚
海藍さんの呪いが解けた。
Q:未収録作品を初回限定版にして売るのはよくないと思いますが?
Q:「稀刊ツエルブ」になんでトリコロが載ってるんですか?
A:あれは単行本には収録できない、お蔵入りの予定だった単発物の原稿です。
Q:「稀刊ツエルブ」はあれ単体で単行本にして売れたのでは?
A:「稀刊ツエルブ」は海藍さんが単行本(本屋に恒常的に並ぶ本)にする意思のないお蔵入り原稿を、「熱心なファンのための特装版付録」という条件付きで多数収録させてもらった本です。単品で売ろうとしたら、歯抜けだらけの中途半端で嬉しくない本になっていたと思います。
- 作者: 海藍
- 出版社/メーカー: 角川(メディアワークス)
- 発売日: 2008/02/27
- メディア: 単行本
2008-02-28
■[書評]一途な愛の二つの形:月吉ヒロキ「独蛾」/真田鈴「すきなんていってあげない」
今日の一枚
しょんぼり。
このblogでは書評とエロ方面の話は普段はしていないのですが、担当の作家2人がほぼ同時期に単行本を出して、しかもそのどちらもがとてもよい出来だったので、ちょっと書いてみようと思います。
「LO第50弾記念作品」と帯に銘打たれた「独蛾」は、月吉ヒロキさんの2冊目の単行本になります。内気な少女を痴漢が弄ぶ描写のエロさと執拗さで、LOの読者を瞠目させた初単行本「夏蟲」から3年。その間に前作をはるかにしのぐ力を身に付けて、月吉さんが帰ってきました。
表題作『独蛾』には、自分のことを不感症だと思っているお堅い少女・白河すみれ(おでこがキュート)と、彼女が慕う教師の倉橋(変態)、倉橋の友人ですみれのカウンセリングを受け持つ荒木(変態)の3人の人物が登場します。物語は基本的には荒木が超強力で都合のいい催眠術を駆使して、すみれの心と身体を開発していくことで進行していきますが、まずその「開発」ぶりが尋常ではありません。
「独蛾」の裏表紙の帯には次のように書かれています。
電車痴漢・黒タイツ失禁・催眠調教・野外羞恥プレイ・目隠し・足舐め・クリ責め・電マ責め・フェラ特訓・ビデオ撮影・犬姿勢放尿・尻穴特訓・拘束強制アクメ・ネトラレプレイ・逆痴漢・連続膣内射精
…でも純愛。ただひたすらに愛だけ。
上に書かれたプレイはすべて、作者一流のねちっこい描写で、これでもかとばかりに描かれます。これだけでもちょっとすごい物量です。しかしこの作品にはさらにその先があります。『独蛾』において作者は荒木の催眠術を使って、喜怒哀楽羞恥絶望官能その他の、ありとあらゆる表情をすみれから引き出していくのです。
「萌え」というのは要するに女を鑑賞することであり、エロゲーの物語がどうこうとか言っても、実際のところ、喜んだり悲しんだり絶望したりしている女の姿を鑑賞するための方便である、と。
ヒロインのぐっとくる姿をいろいろと観賞するためには、通常はそれなりの量の時間と事件(物語)が必要です。しかし強力で都合のいい催眠術を導入すれば、七面倒臭い過程をすっとばして結果だけを鑑賞することができます。実際『独蛾』は大量のプレイと多彩な表情を盛り込みながら、尺的には150ページくらいしか使っていません。物語を思い切って割り切ることで、空いた隙間に快楽を詰め込む。『独蛾』はこれにより他を圧倒する密度を手にしました。
まず間違いなく2008年度のエロマンガの5指に数えられるであろう特濃の一品。
ハード目なエロマンガが好きな人はぜひ一度ご覧ください。
最後に。この単行本は中身を読み終わるまでカバーを取ってはいけません。先に見るとどっちらける可能性があるものがあるので、お気をつけください。
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■一途な女の子が、好きな男にいじわるされる作品集―真田鈴「すきなんていってあげない」
「すきなんていってあげない」は月吉さん同様、真田鈴さんの2冊目の単行本になります。エロマンガの世界では真田さんはどうもツンデレ描きとして認識されているようでして、帯の文言もそれを意識したものになっています。実際初単行本の「だいきらい×だいすき」にはわかりやすいツンデレさんが多数出てくるのですが、今回の「すきなんていってあげない」にはステレオタイプなツンデレはほとんど出てきません。
「すきなんていってあげない」には全3話の『恋のグラマー』と前後編の『フラちな』、そして5つの短編が収録されています。各作品の男女の取り合わせは
・家庭教師を請け負ったお姉さんと、彼女と同じ大学に行きたい男の子
・口下手無表情少女と思い込みの激しい男
・後輩のミスで怪我をした女の先輩と、引け目を感じて奉仕奴隷に勤しむ後輩
どの作品も概ねヒロインの立場が強く、ツリ目率も高いので、表面だけ見ればツンデレっぽい感じではあります。しかし実際はどのヒロインもほぼはじめからデレ期に入っていて、ツンデレの基であるところのツンがほとんど出てきません。ビターな前置きなしで甘々な話が展開されます。
ではこの本はダメなのかと問われれば、それは断じてNO。
これは甘美なデレ期を堪能することに特化した本なのです。
ツンデレはデレが進行することで男女の力関係が逆転することがあります。この本は全体的にそのような具合になっていて、ヒロインはみんな一途で主人公にベタ惚れ。主人公はヒロインの好意に乗っかる形でヒロインにいじわるをする、という構図がエロシーンで多々見受けられます。気が強くて立場も上の女の子が、いじわるをされて困ったり感じちゃったりする姿のなんと愛らしいことか!
「ツンデレ」という言葉が世に出てもう7年。訓練された読者なら、かつてあったであろうきついツン期を脳内で補完しながら、デレの甘さを存分に味わうことができるはずです。ステレオタイプのツンデレを一歩進めて甘味を際立たせた「すきなんていってあげない」。おすすめです。
■おまけ
2008-02-27
■[お仕事]DCEX「トリコロ特装版」発売&感想募集
今日の一枚
カメラを警戒中。
今日のトリビア。ハイエナは犬のような外見をしているが、ネコ亜目に属していて猫の方により近い。なので多汰美のハイエナジーはどちらかというとネコミミ。
微妙な豆知識は脇に置きまして。トリコロ特装版、紆余曲折ありましたがどうにか発売にこぎつけました。
- 作者: 海藍
- 出版社/メーカー: 角川(メディアワークス)
- 発売日: 2008/02/27
- メディア: 単行本
先日のエントリで書いたスタンスとはまた別に、「本屋で手に取った人に『うわ、馬鹿だ』と言ってもらえる本」を基本コンセプトにして作った今回の本ですが、いかがでしたでしょうか。
さて。今回の特装版は単行本未収録作品の大部分を本にしたということもあり、いろいろな人に感想を聞きたいねーという話を海藍さんとしております。
ただ、海藍さんは自分のサイトで率先して感想を求めるといったことをやりたがらない方なので、少し変則的ですが、今回このblogで読者の感想を募集してみたいと思います。
(1)自分のサイトをお持ちで、特装版について感想をお書きになった方がおられましたらそのURLを(2)サイトをお持ちでない方は直に感想を、メールで募集いたします。感想の受け付けアドレスはm.tamasaka@gmail.comになります。
なお、確定ではないので曖昧な書き方になりますが、感想いただいた方の中から抽選で何名かに、何らかのプレゼントを差し上げられそうです。多分ですが。あまり期待しないで感想お送りいただけますと幸いです。
募集の締め切りは1ヶ月後の3月27日いっぱいとさせていただきます。
みなさまの感想お待ちしております。
※注意1
今回の募集は私と海藍さんが個人的に行っているものです。メディアワークスさんは一切関知しておりません。迷惑がかかりますので、この件についてメディアワークスさんに問い合わせをするのはやめてください。
※注意2
プレゼントの当選者には追って発送先の確認のメールを送らせていただきます。個人情報の保護がうるさく言われる昨今ですので、感想のメールには住所氏名等の個人情報は記載されないようお願いいたします。
2008-02-08
■[編集]「初回限定版」を作る時の私のスタンス
今日の一枚
なにやらお怒りのご様子。
私は「初回限定版」や「特装版」と呼ばれる物を滅多に作りませんが、作ることになった時は次のことを心がけるようにしています。
(1)ファンが真に望んでいる物は何であるかを考える
Apple社CEOのスティーブ・ジョブズの言葉に「多くの場合、人は形にして見せてもらうまで、自分は何が欲しいのかわからないものだ」というのがあります。 ファンの声なき声に耳を傾け、彼らが真に望んでいる物を提供できれば最高です。
(2)ファンが商品化を望んでいた物を提供する
(1)が思いつかなかった時の次善の策です。その商品単体では商品力に不安がある物も商品化できるのが強みです。
(3)価格以上の価値があるとファンが実感できる物を作る
限定版は限定品が付く分割高になるのが通例です。ファンに本来必要のない余計な出費を強いるわけで、そのようなことをするからには、価格以上の価値があるとファンが実感できる物を作らねばなりません。
(4)利益ありきの物を作らない
不要品をセットにして販売するのはファンに対する搾取であり、そのような手法は通常「抱き合わせ商法」と呼ばれます。
私は限定版は「ファンに対する感謝の気持ちを形にする」商品であるべきだと考えています。現実にはなかなかそうした志のある商品には出会えませんが、自分がたまに作る限定版くらいは理想を追求したいものです。