【発明の名称】 |
蟹足風かまぼこ及び同製造方法 |
【発明者】 |
【氏名】沖 松夫
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【要約】 |
【課題】本物の蟹足に酷似した蟹足風かまぼこ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】走行する帯状の透明性合成樹脂フィルム3に食用油脂等の撥水材4aを薄く付着させる下地工程A、前記撥水材上に赤着色の擂り身4bを付着させて,斑点網目状の蟹足模様層4を形成する模様工程B、蟹足模様層を加熱してゲル状にする焼付工程C、細紐状で白色の擂り身を束ねたかまぼこ本体1を,前記合成樹脂製フィルム3に蟹足模様層を形成した皮膜2で,該蟹足模様層を接触させて包み込む包込工程Dを含む工程よりなるものである。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 細紐状で白色の擂り身を束ねたかまぼこ本体(1)の外面を、透明性合成樹脂製フィルム(3)の裏面に,食用油脂等の撥水材(4a)を付着させ,その上に赤着色の擂り身(4b)を付着させ加熱による焼付けで斑点網目状の蟹足模様層(4)を形成した皮膜(2)で包んでなる蟹足風かまぼこ。 【請求項2】 走行する帯状の透明性合成樹脂フィルム(3)に食用油脂等の撥水材(4a)を薄く付着させる下地工程(A)、前記撥水材上に赤着色の擂り身(4b)を付着させて,斑点網目状の蟹足模様層(4)を形成する模様工程(B)、蟹足模様層を加熱してゲル状にする焼付工程(C)、細紐状で白色の擂り身を束ねたかまぼこ本体(1)を,前記合成樹脂製フィルム(3)に蟹足模様層を形成した皮膜(2)で,該蟹足模様層を接触させて包み込む包込工程(D)を含む工程よりなる蟹足風かまぼこの製造方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、本物の蟹足と酷似した模様を持つ蟹足風かまぼこおよびその製造方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 従来、蟹足風かまぼこの模様は、次のいずれかの方法で形成されてきた。 (甲)魚の擂り身で成形したかまぼこ本体に、着色剤を直接擦り付け、あるいはスプレーする。 (乙)かまぼこ本体を、着色剤を付着させた薄い合成樹脂製フィルムで包み込む。 (丙)かまぼこ本体を、合成樹脂製フィルムに赤色の擂り身をスプレーし、その上に白色の擂り身をスプレーして形成した皮膜材で包み込む。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 しかし、このいずれの方法によっても、本物の蟹足と酷似する模様を施すことができていないのが現状である。 【0004】本物の蟹足を詳しく観察すると、裂き身の赤い表皮部分には、白い斑点網目状(斑点状と網目状が入り混じった状態)の複雑な模様があることが分かる。これに比較して、前記(甲)および(乙)の従来技術に係る蟹足風かまぼこの着色方法では、こうした斑点網目状の模様を形成することができず、全体的に模様のない赤色(及びピンク色)しか現出することができない。 【0005】前記(丙)の従来技術は、一応斑点状の模様を形成することができるものの、本物の蟹足の模様とはやや異なっている。斑点状の模様そのものが本物のそれとは異なる他に、赤色の擂り身と白色の擂り身が混ざり合って、全体としてピンク色掛かったぼやけた感じになるからである。 【0006】本発明は係る点に鑑み創案されたものであり、本物の蟹足に酷似した蟹足風かまぼこ及びその製造方法を提供することを課題とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】 図1乃至図4を参照して説明する。本発明に係る蟹足風かまぼこは、細紐状で白色の擂り身を束ねたかまぼこ本体1の外面を、透明性合成樹脂製フィルム3の裏面に、食用油脂等の撥水材4aを付着させ、その上に赤着色の擂り身4bを付着させ加熱による焼付けで斑点網目状の蟹足模様層4を形成した皮膜2で包んでなるものである。 【0008】また、本発明に係る蟹足風かまぼこの製造方法は、走行する帯状の透明性合成樹脂フィルム3に食用油脂等の撥水材4aを薄く付着させる下地工程A、前記撥水材4a上に赤着色の擂り身4bを付着させて、斑点網目状の蟹足模様層4を形成する模様工程B、蟹足模様層4を加熱してゲル状にする焼付工程C、および、細紐状で白色の擂り身を束ねたかまぼこ本体1を、前記合成樹脂製フィルム3に蟹足模様層4を形成した皮膜2で、該蟹足模様層4を接触させて包み込む包込工程Dを含む工程よりなるものである。 【0009】 【発明の実施の形態】 本発明に係る蟹足風かまぼこの実施形態を、図1および図2に示す。なお、図2に示す撥水材4aの状態は、その量や焼付工程Cにおける加熱の程度によって流動的に変化するので、同図に示す状態になるとは限らない。 【0010】この蟹足風かまぼこは、かまぼこ本体1と皮膜2とからなる。かまぼこ本体1は、細紐状で白色の魚肉の擂り身を束ねたものである。また、皮膜2は、合成樹脂製フィルム3の裏面に、食用油脂である撥水材4aを付着させ、その上に魚肉を赤色に着色した擂り身4bを付着させて、赤地に撥水材4aが斑点状に無数に散在し、全体として斑点網目状の蟹足模様層4を形成したものである。そして、かまぼこ本体1を、皮膜2で、その蟹足模様層4を接触させる状態で包んでいる。 【0011】この蟹足風かまぼこは、斑点網目状の蟹足模様層4を有しているので、本物の蟹足と酷似しており、よって本物の蟹足を食しているような感覚を消費者に与えることができる。 【0012】当該蟹足風かまぼこは、下地工程A、模様工程B、焼付工程Cおよび包込工程Dを備える製造方法によって製造することができる。また、この製造方法は、図3および図4に示す製造装置で実行することができる。 【0013】この製造方法において、最初の下地工程Aでは、ベルトコンベア5のベルト5aに密着した状態で帯状の透明又は半透明合成樹脂フィルム3を走行させ、その合成樹脂フィルム3に、食用油脂である撥水材4aを薄く付着させる。撥水材4aを付着させる手段としては、撥水材用スプレーガン6によるスプレーが付着量を調整し易いので最も適しているが、ローラーや刷毛で直接塗布することもできる。また、撥水材4aは、サラダ油等の食用油脂が適しているが、他の撥水性のある材料を使用することもできる。なお、本実施形態における撥水材用スプレーガン6は、エアーコンプレッサー7から供給されるエアーによって、撥水材タンク8に貯蔵した撥水材4aを噴射するものである。 【0014】模様工程Bでは、前記撥水材4a上に赤着色の擂り身4bを付着させて、赤地に撥水材4aが斑点状に無数に散在し、全体として斑点網目状の蟹足模様層4を形成する。この擂り身4bの付着手段も、擂り身用スプレーガン9によるスプレーが最も適しているが、ローラーや刷毛による塗布も可能である。擂り身用スプレーガン9は、エアーコンプレッサー7のエアーによって擂り身タンク10の擂り身4bをスプレーする。 【0015】撥水材4a上にスプレーされた赤着色の擂り身4bは、その赤地に、撥水材4aによる大小無数の穴(斑点)が空いて散在した状態になり、変化に富んだ斑点網目状の模様が形成される。これは、合成樹脂製フィルム3上に、撥水材4aがあらかじめスプレーされているので、その上にスプレーされた擂り身4bは、当該撥水材4aの油分によって弾かれることにより形成されるものである。擂り身4bは、その70%以上が水分であるので、このように油分と大きく反発し合うことになる。その結果、穴の大きさや配置によって、斑点網目状の変化に富んだ、本物の蟹足に酷似した模様が形成されると考えられる。 【0016】この模様工程Bでは、前記した従来技術(丙)のように、赤色の擂り身4bと白色の擂り身を混合しないので、全体がピンク色掛かることがなく、よって、本物の蟹足にきわめて酷似する。 【0017】なお、穴の大きさは赤着色の擂り身4bや撥水材4aの量によって変化するので、どのような模様を求める蟹によって細かく調節する必要がある。ちなみに、擂り身4bの量が少なく、また撥水材4aの量が多いほど大きな穴が形成され、その逆の場合は小さな穴が形成される傾向がある。 【0018】焼付工程Cでは、皮膜2を、蟹足模様層4の方から加熱装置11で加熱して焼付け、蟹足模様層4をゲル状とする。加熱装置11としては電気ヒーターが適しているが、ガスやマイクロ波を利用した装置を使用することもできる。 【0019】この焼付工程Cは、蟹足模様層4を形成した皮膜2を、そのままの状態でかまぼこ本体1に被せると、軟らかい生の擂り身4bはかまぼこ本体1に押し潰されて広がり、穴が潰れて蟹足模様が消滅してしまうのを防止する。すなわち、この焼付工程Cで擂り身4bを加熱してゲル化させてその形状を安定化し、かまぼこ本体1に接した際の圧力によって模様が消滅しないようにするものである。なお、擂り身4bを加熱すると、水分が蒸発し、若干収縮しながらゲル化するので、穴が大きくなると共に、色も鮮やかとなって蟹足模様がさらに鮮明に現出し、本物の蟹足との違いが分からない程度まで酷似する。 【0020】包込工程Dでは、細紐状で白色の擂り身を束ねたかまぼこ本体1を、合成樹脂製フィルム3に蟹足模様層4を設けた皮膜2で、当該蟹足模様層4をかまぼこ本体1に接触させてた状態で包み込む。かまぼこ本体1に接触した蟹足模様層4は、かまぼこ本体1に含まれる澱粉の粘着性により、かまぼこ本体1に付着する。なお、この蟹足風かまぼこを食する際は、合成樹脂製フィルム3のみを剥がすが、当該合成樹脂製フィルム3は剥離性に優れるため、かまぼこ本体1と蟹足模様層4の一体物から容易に剥がすことができる。 【0021】最後に、かまぼこ本体1を皮膜2で包み込んだものを適当な長さにカットし、包装や殺菌加熱処理等を施して最終製品とする。 【0022】 【実施例】 幅16cm,厚さ0.03mmのフィルム3を送りながら、食用油脂を口径3mmの撥水材用スプレガン6から、エアーコンプレッサーで発生した空気により前記走行中のフィルム3上に吹付けた。食用油脂は、フィルム3上に幅8cmで付着した。 【0023】擂り身を口径3mmの擂り身用スプレーガン9から、エアーコンプレッサーで発生した走行中のフィルム3に向かって噴射した。擂り身は幅14cmに亘って吹付けられた。次いで電気加熱装置11を通過させた。加熱装置11を通過したフィルム上に厚さ1mmの蟹足模様層が形成されていた。加熱装置11を通過したフィルムで外径3cm,長さ8cmのかまぼこ本体1を包んだ。 【0024】図5は上記実施例におけるフィルム上の蟹足模様層の正面図である。 【0025】図6は撥水材を使用しない従来例(乙)で作った比較用のフィルム上の蟹足模様層の正面図である。 【0026】かまぼこ本体1の表面は、フィルム3を通して斑点網目状の蟹足模様が色鮮やかに見えた。フィルム3を剥離したところ、蟹足模様層4はかまぼこ本体1に付着し、フィルムには殆ど残らなかった。 【0027】 【発明の効果】 本発明に係る蟹足風かまぼこは、かまぼこ本体1の外面を、斑点網目状の蟹足模様層4を設けた皮膜2で包んだので、本物の蟹足と酷似させることができる。 【0028】また、本発明に係る蟹足風かまぼこの製造方法は、合成樹脂製フィルム3に撥水材4aを付着させた後、その上に赤着色の擂り身4bを付着させて斑点網目状の蟹足模様層4を形成し、さらに加熱によって当該蟹足模様層4をゲル化して皮膜2を形成し、その皮膜2でかまぼこ本体1を包み込むので、本物の蟹足に酷似した蟹足風かまぼこを製造することができる。
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【出願人】 |
【識別番号】591218466 【氏名又は名称】株式会社大崎水産
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【出願日】 |
平成13年3月23日(2001.3.23) |
【代理人】 |
【識別番号】100062328 【弁理士】 【氏名又は名称】古田 剛啓
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【公開番号】 |
特開2002−272425(P2002−272425A) |
【公開日】 |
平成14年9月24日(2002.9.24) |
【出願番号】 |
特願2001−84689(P2001−84689) |
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