『BLEACH(ブリーチ)第34巻』 久保帯人著

◇読者レビュー◇ 一筋縄ではいかないキャラクターの強さ

林田 力(2008-08-07 17:00)
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 本書は久保帯人が週刊少年ジャンプに連載している漫画の単行本である。前巻に引き続き、破面(アランカル)に連れ去られた井上織姫を救出するため、虚圏(ウェコムンド)に乗り込んだ主人公・黒崎一護(くろさきいちご)たちの戦いを描く。

 一護たちは立ちふさがる破面を倒していったものの、破面の上級幹部の十刃(エスパーダ)には苦戦し、追い詰められた状態になっていた。絶体絶命のピンチを救ったのが護廷十三隊の隊長たちである。この巻では従前の一護たちと破面との戦いから、護廷十三隊の隊長と破面との戦いにシフトする。

 『BLEACH』で興味深いのはキャラクターの強さである。バトル物の漫画では主人公たちは次々と強敵と戦い、戦いを経るごとに格段に強くなっていく宿命にある。そのため、主人公は過去に苦戦したキャラクターよりもはるかに強力になるという、強さのインフレ状態に陥りがちである。

 ところが『BLEACH』においては、直線的な強さの物差しでは測れない面がある。一護は尸魂界潜入篇において護廷十三隊十一番隊隊長の更木剣八を退けた(引き分けという見方もある)。その後、一護は卍解や虚化を習得し、格段に強くなったはずである。

 一方、剣八は尸魂界潜入篇で一護と戦った後、眼帯を付けて霊力を抑制した状態で、九番隊隊長の東仙要を圧倒している。その東仙は藍染惣右介に従って謀反を起こした後、破面の統括官になるが、十刃のグリムジョー・ジャガージャックの左腕を切り落とすほどの強さを示す。

 このグリムジョーと一護は戦い、虚化によって辛うじて勝利したものの、満身創痍(そうい)になってしまう。一護は卍解や虚化を習得する前の段階で剣八に勝ったにもかかわらず、剣八が圧倒した東仙の下に位置するグリムジョーには、虚化によってようやく勝利できたことになる。

 そして満身創痍の状態で新たな十刃ノイトラ・ジルガとの戦いを余儀なくされた一護を助けたのは剣八であった。一度は一護が倒した剣八であるが、一護以上に強力な頼もしい存在に映る。

 このように『BLEACH』の世界ではキャラクターの強さを直線的に位置付けにくくなっている。この点に単純なバトル物とは異なる味わいがある。一筋縄ではいかないキャラクターの強さにより物語の深みを増していると考える。

『BLEACH 第34巻』
集英社
2008年7月4日発行
定価410円(税込み)
216ページ

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