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NIKKEI NET

社説2 日系人記者の釈放に動け(4/21)

 イラン革命裁判所がスパイ活動の罪で起訴された日系米国人の女性記者、ロクサナ・サベリさん(31)に禁固8年の有罪判決を言い渡した。取材活動の自由にかかわる問題である。日本政府は自らの問題ともとらえ、即時釈放をこれまでより強くイラン政府に求める必要がある。

 ロクサナさんは、イラン系米国人の父と日系米国人の母との間に生まれ、ミス・ダコタに選ばれた経験もある。イランでフリーランスで英国放送協会(BBC)、FOXなどの仕事をしていたが、1月30日に拘束された。当初の「容疑」はワインを買ったためとされた。

 米・イラン間に外交関係がないため、両親は日本政府にも釈放のために協力してほしいとする声明を発表し、日本政府は水面下で働きかけてきた。ロクサナさんは十分な説明のないまま、ほぼ2カ月間拘留され、4月8日に起訴が公表され、18日には早くも判決が下された。

 米政府は「容疑は根拠がなく、司法の透明性にも懸念がある」(ウッド国務省報道官代行)とイランに早期釈放を求めてきた。

 ホルブルック米特別代表(アフガニスタン・パキスタン担当)が3月末にオランダで開いたアフガニスタン安定化をめぐる多国間会合の際、イラン側代表に早期解放を求める書簡を手渡した。

 判決は米・イラン関係の改善を模索するうえで障害になる。オバマ米大統領も「重大な懸念」を表明、早期釈放を求めた。ロクサナさん側は上訴するとしており、イランのアハマディネジャド大統領も十分な弁護を司法当局に求める異例の要請をした。外交的判断だろう。

 事件は最も基本的には記者の取材活動の自由をめぐる問題である。それをスパイ活動とみなして制限しようとする国は少なくない。当事者がだれであれ、当事国がどこであれ、それを認めるわけにはいかない。

 イラン当局に対し、私たちはロクサナさんの即時釈放を求める。米政府だけでなく、日本政府も両親の要請にこたえ、釈放を求めてイランと交渉する必要がある。これは外交問題ではあるが、その前に民主主義の原理のひとつである、報道の自由にかかわる問題である。

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