財団法人・日本漢字能力検定協会(京都市)をめぐる問題で、文部科学省は20日、大久保昇・前理事長が代表を務め、協会との取引の必要性が無いのに委託費を受け取っていたとされる2社に対し、損害賠償請求を検討するよう協会の鬼追(きおい)明夫・新理事長(74)=元日弁連会長=に指導した。同省はさらに「漢字検定を含めた対外活動」についても「停止・延期を含めた総合的な検討」を求めた。
6月に迫っている漢字検定について、文科省は後援や文部科学大臣賞の交付の中止を決定。銭谷真美事務次官も同日の定例記者会見で「社会的信頼を損なっている現在の状態で実施するのは問題がある」「総合的な判断が必要だ」と述べた。漢字検定は昨年度約286万人が受検した代表的な検定試験。文科省側は「影響が大きく『中止ありき』ではないが、予定通り実施するには早期の改善が必須だ」としている。
この日の指導は、同省を訪れた鬼追氏に清水潔・生涯学習政策局長が口頭で伝達。広告業務を委託したことになっているメディアボックス(08年までの委託費36億3千万円)、調査業務を委託したことになっている文章工学研究所(同約6千万円)の2社に損害賠償請求を検討▽前理事長らが今後も取引を継続すると決めた出版業務委託のオーク、検定業務委託の日本統計事務センターについては取引解消を検討――などを促した。
文科省は、大久保前理事長と息子の浩・前副理事長が提出した改善策が不十分で、より厳しい指導が必要と判断したという。
これに対し、鬼追新理事長は「検定業務は続けさせて下さい」と要望。報道陣に対し、前理事長らの会社から被った損害額が把握できた場合、2社に訴訟か交渉で賠償を求めるとした。前理事長が継続を決めた2社との取引は「世間の誤解を避ける意味でも絶つべきだ」と述べた。(上野創、松谷慶子)