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【社会】

謎の日本刀600本届け出 終戦直後のGHQ接収品か

2009年4月21日 07時06分

大量の所有者不明の刀が見つかった日本美術刀剣保存協会=20日午後、東京都渋谷区で、本社ヘリ「わかづる」から

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 日本刀の鑑定などを行う財団法人「日本美術刀剣保存協会」(東京都渋谷区)の本部で二月以降、入手経緯が不明の刀が六百本以上、相次いで見つかった。届け出を受けた警視庁が登録の有無などを調べているが、数十年間にわたり放置されて保存状態も悪く、元の所有者の特定は困難を極めそうだ。終戦直後に連合国軍総司令部(GHQ)に接収された「赤羽刀」との指摘もあるが判然としていない。

 協会などによると、渋谷区代々木の協会本部の改修工事に備えて、三階の収蔵庫を点検していた職員が二月初旬、たんすの中に三百九十二本の日本刀を発見、代々木署に通報して任意提出した。その後、協会が全館を調べたところ、三月末に地下倉庫でさらに二百本以上が見つかった。

 刀の現物を見た評論家で協会の佐々淳行会長は「大半の刀は赤さびて強く触ると折れてしまいそうな、ぼろぼろの鉄の固まり」と話した上で「赤羽刀の可能性がある」と指摘する。

 協会本部は一九六八年に台東区の上野周辺から現在地に移転しており、佐々会長は「移転直後に持ち込まれ、長く忘れ去られた刀が時を経て見つかったのではないか。多くは廃棄処分になるだろうが、美術的価値がある刀も何本か含まれていそうだ」と期待する。

 協会を指導する文化庁の担当者は「これだけ大量の刀の発見は聞いたことがない。協会側に経緯を調べて明らかにするよう求める」としている。

 銃刀法では、刃渡り十五センチ以上の刀の所持を原則禁じているが、美術的価値のある刀は都道府県教委の登録を受けることで、所持できる。

 警視庁によると、二月に発見された刀のうち、一部は登録が確認された。ただ、協会に刀を持ち込んで保管した当時の管理責任者の特定が難しいことなどから、無登録でも銃刀法違反に問われる可能性は低い。

 協会によると、三月に見つかった刀は、いずれも刃渡り十五センチ以下で、任意提出は求められず協会が保管している。

 佐々会長は「登録されていた刀は所有者の確認を進めて返還し、無登録で価値のある刀は登録手続きを行いたい」と話している。

<赤羽刀(あかばねとう)> 終戦後間もなく、GHQが日本の武装解除の一環として、全国から接収し、米軍倉庫に保管された数十万本の刀。倉庫があった北区赤羽にちなんで赤羽刀と呼ばれる。多くは、米国側によって廃棄や海外に流出したとされる。文化庁によると、1947年には美術的価値があると認められた約5500本が、日本側に返還された。

(東京新聞)

 

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