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こみー |
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06/29 01:50 |
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湯浅 秀昭 |
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06/28 20:55 |
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なぜか「八紘一宇」の文字が新しく見える平和の塔(撮影:大谷憲史) 宮崎神宮から車で10分ほど北上すると、緑に囲まれた小高い丘の上に塔が建っているのが見えてくる。宮崎市のシンボル的な塔で、昔は「八紘(はっこう)台」とも呼ばれていた。 現在では「平和の塔」と呼ばれ、周辺が「平和台公園」として整備されている。春には「フラワーフェスタ」の会場の1つとして利用され、公園内には西都原古墳群で有名なはにわが置かれている。散歩やジョギングコースとして、市民の憩いの場である。 この平和の塔が建てられたのは、日本が「天皇の国」や「皇国日本」と呼ばれていた“平和ではない時代”である。 『古事記』や『日本書紀』で初代天皇とされる神武天皇即位から数えて2600年にあたる1940年に向け、国民の意思を高める一大祭典を行うべく、当時の岡田啓介内閣によって1935年「紀元2600年祝典準備委員会」が設置された。また、1937年には「財団法人紀元2600年奉祝会」が設立されることとなった。 どのような一大祭典を行えば良いか 「神武天皇が橿原神宮で即位したときの勅語であるとされている『日本書紀』の『八紘を掩(おお)って宇と成さんことまたよからずや』という建国の理想を実現するのが良いのではないか」ということになった。 この神武天皇の建国の理論とは「この世の中にはいろいろな人がいるが、世界をひとつにまとまることが良いのではないか」という意味である。折しも日中戦争から太平洋戦争へと進んでいく中、これが当時の日本政府の「大東亜共栄圏構想」とマッチしていくのである。 実際にどこで行えば良いのか 「神武天皇が東征するまでの皇居としたと伝えられる皇宮屋(こぐや)の北方の丘に造ることが良いのではないか」となり、当時の相川勝六宮崎県知事が八紘台の建設を提唱した。八紘台の正式な名称は「八紘之基柱(あめつちのもとはしら)」である。 誰に設計を依頼するか 当時の毎日新聞社は懸賞募集によって決めようと提案したが、日本サッカー協会のシンボルマークである「八咫烏(やたがらす)」の製作者である彫刻家・日名子実三(ひなご・じつぞう)氏が自ら名乗り出て、設計をすることとなった。 完成した八紘一宇の塔 八紘之基柱は1939年5月20日に起工し、翌1940年11月25日に完成。竣工式が行われた。正面には,秩父宮殿下の真筆による「八紘一宇」(はっこういちう)の文字が刻み込まれ、この塔は「八紘一宇の塔」と呼ばれるようになった。 この八紘一宇の塔は高さ約40メートルで、塔の四隅には民族の結束と向上をあらわす篝火台(かがりびだい)がおかれ、その下四隅には神霊の仮の姿である武人・工人・農人・漁人の胸像を配置した。武人は「荒御魂(あらみたま)」、工人は「和御魂(にぎみたま)」、農人は「幸御魂(さちみたま)」、漁人は「奇御魂(くしみたま)」と呼ばれている。 八紘一宇という言葉は当時の思想的指導者であった国柱会・田中智学による造語である。彼の目的は世界を仏教化し法華経に帰依させることによって「平和を実現する」ことにあった。八紘一宇の精神は日中戦争から太平洋戦争へと進んでいく時代において、大東亜共栄圏を実現するためのスローガンとして利用されることとなったのである。 ふぞろいの礎石(撮影:大谷憲史) そのことはこの八紘一宇の塔に、しっかりと刻み込まれている。 観光スポットにもなっている平和の塔ではあるが、観光客向けに「世界平和の願いを込め、世界中から集まった石を礎石としてこの塔が建てられています」というような文章が書かれており、戦争に関する記述は少なく、ほとんど触れられていない。 例えば、日本の美しい建築物の中に「城」がある。その城壁に使われる石の大きさは違うものの、ほぼ同じ場所から採れるものか、同じ石質のものを使っている。 しかし、この平和の塔は違う。パンフレットなどによると世界中から集められたとあり、実際に平和の塔の礎石を見ると大きさも色も石質もバラバラで、ふぞろいの礎石となっている。 それだけではない。 この礎石をよく見ると、この石がどこから届いたものかを確認することができる。 表面がのっぺりとした礎石がほとんどである中で、1つだけ彫刻が施された礎石があった。その彫刻を見ると、どうやら中国から届いたものらしい。さらにこの石の左端を見たら、かすかに読み取れる文字が彫られていた。 「南京日本居留民会」 興味を持った。 長年の雨風で礎石は風化してはいるが、読めるものも多い。日をあらためてこの礎石を調べることにした。 左端に「南京日本居留民会」の文字が(撮影:大谷憲史)
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