地域コミュニティ税でまちづくりを推進できるか

市民への情報公開は不十分、議論し尽くせ!

大谷 憲史(2007-06-27 05:00)
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 2006年1月1日、宮崎市は佐土原町・田野町・高岡町と合併し、新宮崎市としてスタートした。合併と同時に、住民主体のまちづくりの推進を目的に、旧3町域の合併特例区に新たな地域コミュニティーを、そして旧宮崎市域に地域自治区が設けられた。

よりよい街づくりをめざして、議論を重ねたい(写真はイメージ)

 今後は、防災活動・防犯活動・地域福祉活動など、ますます多様化する地域課題に対し、地域住民自らが決定し、自ら責任を持って解決するための活動費の財源や、充実した地域コミュニティーの形成が望まれる。

 宮崎市では、地域コミュニティーにおける活動経費の一部を広く市民に求め、地域へ交付する「地域コミュニティー税」の導入の検討を行っている。2007年3月、宮崎市は市民や有識者からなる地域コミュニティー税検討委員会を設置した。

 委員会はこれまで3回開催され、「(1)地域のまちづくりの仕組みや地域コミュニティー税のあり方について」、「(2)そのほか、地域自治に関すること」について検討を進めている。

 第1回の会合で、委員からは「自治会活動を阻害する心配があるのではないか」、「地域づくりを自主的に行うための資金源になるので導入は良いことである」など賛否の意見が飛び交い、議論は白熱した。

 ある委員は「自治会費と税金を両方納める二重払いになるのではないか」、「実質的な増税であり、課税の根拠を明らかにすべきだ。しっかりとした説明がないと市民の理解が得られない」と強く指摘した。

 宮崎市は「自治会未加入者は自治会費を納めずに防犯灯などの恩恵を受けている」など、一部自治会から不公平感を訴える声が上がったのをきっかけに、新税導入の検討を始めた。また、市によると、この地域コミュニティー税は、市が公共性の高い地域活動を支援するため、新しい税で基金をつくり、自治会に助成することなどを検討しているため、自治会費を代理で集める側面を持っていることを、この第1回の会合で説明している。

 さらに、ほかの委員からは「税金を払ったから自治会活動をしなくてもいいという人が出てくるのでは」、「導入には賛成だが、脱退者が増えるのではないかと心配している」など、地域コミュニティー税の導入をきっかけに「自治会離れ」の加速を危惧(きぐ)する意見もあった。

 その後、2007年4月12日に第2回、5月15日に第3回の会合が行われた。検討委員会では活発な意見交換が行われているようだが、私たち一般市民の間ではそれほど話題になってはいない。マスコミで取り上げられることはあるが、情報が伝わってこない。

 宮崎市は、地域コミュニティー税を導入する意図や基本的な考え方を、市民に伝える努力をしているのだろうか。

 これまで3回にわたって行われた検討委員会では、検討委員に対してさまざまな資料を使って説明している。それらの資料は、宮崎市のホームページからPDF形式でダウンロードして見られる。しかし、すべての市民がパソコンやインターネットに精通しているわけではない。

 来年度の導入を検討しているのであれば、検討委員会とは別に、世論に訴えるためにも、一般市民向けのパンフレットなどを作成し、PRを推進していかなければならない。

 自治会離れは、どこの自治体でも問題となっている。

 宮崎においても、高層マンションが立ち並び、隣人が何をしている人なのか知らないという状況は少なくない。地域の活動よりも自分の家庭のイベントを大切にする風潮のなかにあって、私たち市民は、地域のなかで生きていることを強く認識する必要がある。

 これからの少子高齢社会、人口減少社会において、自治会そのものを存続するか、廃止するかという視点も必要なのではないか。

 世帯数の減少で活動そのものをできない自治会が出てくることも予想される。すべての自治会を廃止し、地域コミュニティーという、より大きなまとまりにおける自治活動を模索したほうが効果的かもしれない。市内に設置された地域コミュニティー事務所や地域自治区事務所に、これまでの自治会的な機能を加えるほうが良いのではないだろうか。

 特に宮崎は、毎年のように台風や大雨による災害が発生している。このような災害から、自分の家族・財産・命を守るためには、地域とのかかわりが重要となってくる。災害は広範囲におよび、自治会では対応しきれない場合も出てくる。高齢者世帯が多い自治会は大変である。

 宮崎市が考える「防災活動・防犯活動・地域福祉活動など、ますます多様化する地域課題に対し、地域住民自らが決定する」ためには、今後の社会情勢を見込み、自治会単位を超えた広範囲での活動を展開していかなければならない。

 そのためにも、自治会存続・廃止に関する議論が必要だと思うのである。

 この地域コミュニティー税の導入には、さまざまなハードルが存在する。新税として、市民からの税金徴収を検討する前に、私たち市民に対して、きちんと情報を公開すべきである。検討委員会という限られた委員たちによる会合だけではなく、市や検討委員会と私たち市民との意見交換会を数多く開催するとともに、ホームページだけではなく、あらゆる手段を使って情報を市民に伝えてもらいたい。

 地域コミュニティー税で町づくりを推進できるか。現状ではかなり厳しいだろう。



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