県民総力戦で闘っているのは誰だ

裏金問題をきっかけに意識改革を!

大谷 憲史(2007-06-22 11:00)
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会見で記者の質問に答える宮崎県・東国原英夫知事(撮影:軸丸靖子)

 宮崎県都城市の児童自立支援施設「県立みやざき学園」に端を発した裏金問題。

 宮崎県は同学園の裏金問題を5月17日に公表した後、河野俊嗣副知事をトップとする庁内調査委員会を設置し、県のすべての部署に対して裏金の自主申告を求めるなどして調査を進めてきた。

 5月31日、県は3つの警察署を含む46の部署から新たに裏金の申告があったと発表した。裏金の総額は、分かっているだけで約2500万円。私的流用はなく、主に備品購入に充てていたということだ。

 17部署では現在も約410万円が残っている。大半が物品を架空購入し、その代金を納入業者に管理させるという、「預け」と呼ばれる手口で捻出(ねんしゅつ)していた。

 県は庁内の委員会による身内での調査以外に、31日に新たに弁護士2人と公認会計士1人でつくる「外部調査委員会」を設置した。徹底して裏金を調査する方針で、8月末までに調査結果をまとめる予定のようだが、さらに裏金が発覚する部署が増える可能性もある。

変わらないトップの体質

 東国原英夫知事が就任当初の幹部職員に対して、「裏金はありませんか? あれば申し出てください」と訓示を行ってから3カ月あまり。この間、幹部職員は何をやってきたのであろうか。

 前知事のカネ絡みの事件で県庁にも捜査の手が入ったことで、県職員は自分たちの襟(えり)を正さなければならないと感じたに違いない。

 しかし、最初に裏金が発覚した、県立みやざき学園では、当時の学園長が、職員から裏金の件で副学園長に相談があったことを知っておきながら、「私は聞いていなかったことにしてくれ」と伝えたそうである。定年退職を控え、裏金が発覚することを恐れたのだろう。前知事と変わらないトップの体質にはあきれてしまう。しかもこの県立みやざき学園は「児童自立支援施設」と言う教育機関である。

果たして必要な備品なのか

 その後は報道されている通りである。
 
 宮崎県が公表した「新たな裏金の内訳」を見ると、高鍋保健所の210円と言う少額から、児湯教育事務所の124万円あまりまでと幅が広い。私的な流用はないとのことだが、部署によっては液晶プロジェクター(約31万円)、デジタルカメラ(約16万円)、文書類に穴を開ける電動パンチ(約13万円)など高額な備品を購入したとのこと。

 15~16万円もするデジタルカメラとは、高級一眼レフタイプのものだろうか。文書の穴あけは、100円ショップのパンチで十分である。いすれにせよ、年間使用頻度がそう高いとは言えない備品である。

やはり県民不在?

 就任当初の演説で東国原知事は、「県民総力戦による県づくり」を強調した。さらに、「今まで宮崎はバラバラだった。統一して一丸になって進めば、明るい未来が開ける」とも発言した。宮崎は変わらないといけない、「どげんかせんといかん!」と言うことばがここから生まれたのである。

 しかし、県民総力戦で闘っているのは一体誰なのか?

 果たして今の宮崎は、統一して一丸になって進んでいる状況にあるのであろうか?

 5月27日、観光コースとなった宮崎県庁に訪れた観光客は2万人を超えた。観光バスが県庁前に止まるたびに県職員が出迎え、庁舎内を案内する。東国原知事によるトップセールスが功を奏した結果ではあるが、これも知事が言う「県民総力戦」のひとつなのだろうか。

 そもそも県の職員は、公僕として県民のために働いている。県外からの観光客を手厚く招くのも県職員の仕事のひとつなのかも知れないが、一方では「預かり」と言う手法による裏金づくりを行っている県職員もいる。

 裏金問題で新たに設置した「外部調査委員会」に、弁護士2人と公認会計士1人の3人しか入っていないのは残念である。この裏金は、すべて私たちの税金である。私たちの税金がどういう流れで裏金として「預かり」となったのかを知り究明していくためにも、県民も外部調査委員会に参加するべきである。

 県民総力戦とは言うものの、東国原知事や県にはまだまだ県民視線が足りない。

 観光コースとなった県庁舎もそうである。県民が参加できる機会を県は自ら失くそうとしている。県民が「県庁舎観光ガイド・ボランティア」となり、「どうぞ私たちの宮崎県を見てください」と県外からの観光客を迎えることで県民レベルでの交流が図れるとともに、東国原知事が提唱している「おもてなし」を具体的に行うことができるのである。

県職員の意識改革、県民の意識改革

 すべての県職員が悪いわけではない。この前の知事公舎見学の際、県民に対して説明をする県職員には好感が持てた。少しずつではあるが、知事の「どげんかせんといかん!」精神は県職員に浸透しているのではないかと思う。

 ただ、その変わろうとしている姿がなかなか県民に伝わってこないと言うのが現状ではないだろうか。

 県職員の意識改革は、私たち県民の意識改革にもつながっていると考える。県庁で起きているさまざまな問題について、「どうぞ県民のみなさんも参加してください」と言う県の姿勢と、「この問題はどうなっているんだ」と言う問題意識を持って積極的にかかわっていこうとする県民の姿勢がマッチすることで、宮崎県は大きく変わるのではないだろうか。

 外部調査委員会への一般県民の参加はできなかったものの、今回の裏金問題をきっかけとして、宮崎県と県民の距離が縮まるような取り組みを進めていきたい。

 6月定例議会が6月8日から始まる。まずは、多くの県民が県議会を傍聴し、県政に関心を持つことからであろう。県民総力戦で闘っているには東国原知事や県職員だけではない。私たち県民も闘わなければならないのだ。

◇ ◇ ◇

【関連用語】
児童自立支援施設:不良行為を行う、または行うおそれのある児童や、家庭環境など環境上の理由により生活指導等が必要な児童を入所させる、もしくは保護者の下から通所させ個々の児童の状況に応じて必要な指導を行い、その自立を支援することを目的とする施設。



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