東国原知事の議会改革──1問1答方式の可能性(下)

裁判員制度にも学んでみよう

大谷 憲史(2007-06-21 05:00)
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 6月19日に終わった宮崎県の6月定例議会では、新たに導入された「1問1答方式」に注目が集まった。

 新方式を歓迎する議員からは、

 「テンポの難しさはあるが、すぐに執行部側からの答弁が返ってくるのでやりやすかった」
  
 「質問する議員も答弁する執行部も、言葉に詰まることもあるが、議会に面白みができたのではないか」

 との声があがる一方、

 「事前に一定の打ち合わせをしないと正しい答弁が得られない質問もある。これまでの一括方式と、1問1答方式を使い分ければよい」

 「本会議場は県政の大筋を聞く場であるから、これまでの一括方式で十分ではないか」

 と言う声も聞かれた。

 議会に緊張感が生まれ、居眠りをする議員がいなかったのも、議会改革の一つの成果だろう。

 傍聴席からも新方式歓迎の声が聞かれたものの、居眠りをしていた傍聴人も見受けられた。一般傍聴人に渡される資料は、一般質問のスケジュールと、議員の質問事項の一覧だけである。あとの情報は何もない。文字どおり傍聴するだけなので、居眠りをしている人がいても不思議ではない。

 新方式は、はたして傍聴席にいた私たち県民にとって分りやすかったと言えるのだろうか。

 最近、裁判員制度のイベントに参加し、実際の刑事事件の裁判を傍聴した。

 県内で起きた事件でマスコミでも取り上げられたとはいえ、事件の詳細を覚えている県民は少ない。ましてや傍聴席に座って、検察側や弁護人による難しい言葉を使っての話にはなかなかついていけない。

 そこで導入されたのが、パソコンを使ったプレゼンテーションである。

 裁判の流れを、プロジェクターを通してスクリーンに表示する。しかも傍聴席にも分りやすいように、難しい言葉は平易な言葉に置き換えるか、または注釈が付けられている。スライド形式に表示するだけではなく、パソコンの機能を十分に生かし一部動きのある表示もされていた。

 事件の詳細な資料を手元に持たない傍聴席の私たちにとっては、この進行は分りやすかった。今後、実際に裁判員制度がスタートしたら、このような方式で裁判が行なわれるとのことである。

 難しい言葉や数字が出てくる議会も、裁判と同じように分りにくいところがある。

 国会中継で、質問する議員がフリップ(*注)を手にして説明する場面をよく目にする。フリップがテレビ画面にアップで映し出されることもあるので、議員の質問内容がよく分かる。

 国会で行なわれていることが、県議会でできないことはない。

 パソコンを使ってのプレゼンテーションが難しいのであれば、国会のようにポイントをフリップにまとめ、それを議会内のカメラを通してスクリーンに映し出せば、プレゼンテーションと同じ効果を得ることができるだろう。

 1問1答方式は、執行部側(=県庁職員)と議員側における議会運営の改革のひとつに過ぎない。次のステップは、いかに県民に分りやすく伝えるかではないか。

 議会改革に終わりはない!


【用語解説】
フリップ: フリップカード、フリップチャートの省略語。A3、または変形B4サイズの紙の上に、イラストやグラフ、地図などを貼り付けた説明用のボード。テレビで使用されることが多く、スタジオや中継現場などで出演者とともに撮影する。



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