東国原知事の議会改革──1問1答方式の可能性(上)

6月宮崎県議会一般質問を傍聴した

大谷 憲史(2007-06-20 19:50)
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 宮崎県の6月県議会の一般質問が、6月13日に始まり、19日終了した。

 今回の県議会は、「1問1答方式」の採用が注目だった。そこで、県議会会場に傍聴に行った。東国原知事の定例記者会見には、オーマイニュースの市民記者として参加したが、今回は一県民としての傍聴だ。

 初日13日午前8時30分、県議会場の隣に用意された一般傍聴人控え室で、受付を済ませた。人数が多い時は午前9時30分に抽選が行なわれるが、この日は定員60名を超えなかったため、全員傍聴できた。

 これまで続けられてきた県議会の質疑応答は、「一括方式」といわれる。議員が中央の壇上に立ち、そこで質問事項をすべてまとめて一括で質問する。議員による質問項目が多岐にわたり、そのたびに、県庁の関係部署担当者(執行部=行政)が登壇して、質問に答弁するため、かなり時間がかかっていた。

 これに対して、2月県議会で、東国原知事が議会側に対し、「1問1答方式の方が、県民に分かりやすい」と提案した。

 議会もこれに応え、「1問1答方式」か、「一括方式」か、「分割方式(教育や福祉などテーマごとに質問を分割する)」かの、3つの方法から選択できるようにした。

 同時に、答える側の執行部(県庁担当部署)もわざわざ登壇せずに、自席から答弁できるようにした。知事や副知事らの席にはマイク(19本計248万円)が取り付けられた。

 午前10時、開会。

 トップバッターは社民党の鳥飼謙二議員だ。鳥飼議員は、持ち時間30分で7つの質問を用意していた。最初の「県政刷新に関する知事の政治姿勢について」に関しては、登壇して、質問したが、その後の質問は、新設の質問席から行なった。

 初の「1問1答方式」と言うこともあって、議会側からも、執行部側からも緊張感が伝わってくる。しかも、「一括方式」に比べて、質問も答弁も分りやすく、スムーズに流れる。

宮崎県政を東国原知事はどう司るのか(写真はイメージ、宮崎の大型リゾート施設『フェニックス・シーガイヤ・リゾート』、ロイター)

 ただ、5番目の「県職員の意識改革と職員処遇について」の質問で、つまづいた。

 鳥飼議員の「県職員の現業職の配置転換において、年度内退職者はどのくらいいるのか」という質問に対して、河野俊嗣副知事が「具体的な数字などについて、質問すると通告されていない」と答弁したことで、鳥飼議員が資料の提示を要求し、10分ほど議事が中断した。

 再開後、河野副知事から具体的な退職者数の説明があった。鳥飼議員は「質問事項は、前もって伝えてあるので、執行部側はあらゆることを想定して、資料を用意しておかなければならない」と発言。これに対して、東国原知事が「今は資料が手元にないため、後日資料をそろえて報告すると説明している」と発言し、再度、中断した。

 議長、鳥飼議員が知事席付近に集まり、議会の運営について確認することとなった。そして5分後、

 「答弁に関しては、できるだけ資料をそろえて臨む。資料が足りない場合は、後日そろえてから報告する」

 と、知事、副知事ともに謝罪した。

 残り2つの質問を残して、初の「1問1答方式」で臨んだ鳥飼議員の質問が終わった。

 2人目の議員は、従来通りの「一括方式」で質問に臨んだが、東国原知事就任後も、5つの部署で、預けによる裏金づくりが行なわれていたという新事実が飛び出し、傍聴席はどよめいた。

 一般質問初日の議会傍聴は、午前中だけ。終了後、ある新聞社の記者が、高齢の一般傍聴の方にインタビューをしていた。

 「先ほどの鳥飼議員のときのトラブルは、鳥飼議員が悪いと思いますか。それとも、執行部側が悪いと思いますか」

 質問が稚拙である。

 私が思うに「良い、悪い」という基準で、判断できるものではない。東国原知事の「1問1答方式」を議会側も受け入れ、お互いに議会改革を進めている。まだ始まったばかりであり、今回のトラブルで議員側も、執行部側も改善しなければならないと考えているはずだ。

 鳥飼議員自身も、「1問1答方式」を導入している大阪府などに視察に出かけ、議員なりに研究している。執行部も、自席にあるマイクを使う1問1答では、質問に即答しなければならないため、より答弁力が問われる。

 まだまだ原稿の棒読みや、声が小さい執行部が多いのが気になったが、傍聴人たちにも、分りやすく説明しようとする姿勢は良かった。

 まだまだ始まったばかり。これからも議会傍聴を続け、一県民の視点から、この議会改革を見つめていきたい。(つづく)

【記者注】県議会で「1問1答方式」を導入しているのは、栃木県、群馬県、長野県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、島根県、徳島県、熊本県の10府県(宮崎県議会事務局発表)。



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