不利益を被るのは誰だ!?

宮崎労働基準監督署のいい加減な仕事ぶり~上

大谷 憲史(2007-06-14 22:00)
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宮崎労働基準監督署(撮影:大谷 憲史)

 5月6日、私は勤めていた弁当屋を解雇された。

 解雇を言い渡されたのは4月6日、宮崎労働基準監督署で、社長・監督官・私の3名で私の残業分の未払い賃金の件で話し合っていたときのことだ。交渉の末、社長から未払い賃金を支払ってもらったが、その場で突然、しかも口頭で解雇を言い渡されたのだ。

 翌日、社長から書面で解雇通告書をいただいた。その通告書の解雇理由の1つに「(大谷)氏の要求する諸案と会社の規模や社長との性格が多くの点で不一致するため」と書かれていた。そこで、その「諸案とは何か」を社長に確認した。
 
 それに対して社長は、「諸案とは、今回あなた(大谷)から指摘を受けた『就業規則がない』『労働条件通告書がない』『最低賃金法を守っていない』と言うことを労働基準監督署に申告し、私にそれらをつくらせるように仕向けたことである」と返してきた。

 つまり、「労働基準監督署に申告したこと」が解雇理由の1つとなっているのだ。しかし、これは監督機関に対する申告について書かれた、労働基準法第104条「事業場に、この法律又はこの法律に基づいて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者はその事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる」という文言と、2項の「使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない」との定めに抵触している恐れがある。

 また、労働基準法第18条の2の「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」とある。私の解雇理由はこれにも抵触しているのではないか。

 そこで4月9日、「労働基準法第104条第2項違反と思われる解雇通告に関する申告書」を、宮崎労働基準監督署に提出した。担当のA氏と話し合い、「あっせん制度」があるという説明を聞き、あっせん制度に関する資料をいただいた。しかし、このことが後で大きな問題となってしまった。

 その後、私は労働局企画室の相談センターや労働条件相談センターに足を運び、労働基準監督署で紹介されたあっせん制度について話を聞いた。

 そのころは会社を辞める意志はまったくなく、他の従業員との人間関係も良好であった。そのため、できればこのまま仕事を続けたいと思っていた。“労働審判”は最後の手段と考え、話し合いでの「解雇の撤回」を模索していた。しかし、労働基準監督署から是正勧告を受けた後も弁当屋の労働環境は変わらなかった。

 5月6日、解雇当日。社長からねぎらいの言葉は何もなかった。

 とるべき手段はもはや1つしかなかった。

 ただ、裁判所へ提出した書類を見て1つだけ腑(ふ)に落ちないことがあった。それは、4月9日に私が労働基準監督署に申告した書類についてである。あのとき、確かに担当者であるA氏は私の申告書を受け取った。労働基準監督署では申告を受けて相手方を行政指導したという報告書の送付や連絡はしないということを後で知ったのだが、そのころはまだ、「社長に対する行政指導は行われていないのだろう」としか思っていなかった。

 労働審判の第1回審理を8日前にした6月5日、宮崎労働基準監督署に出向いた。

 私 「4月9日に私が提出した申告書はその後どうなったのでしょうか?」
 A氏 「4月9日のときにあなたに解雇理由を総合的に判断して、労働基準監督署としては何も指導ができないので、あっせんという制度をお伝えしました」
 私 「ではなくて、私の申告を受けて何か指導をされたのですか?」
 A氏 「いいえ。何もしていません」
 私 「どうしてですか?」
 A氏 「先ほども申しましたように、あなたの解雇理由を総合的に判断すると労働基準監督署では何もできないのです。だからあなたにあっせん制度をご紹介したのです」

 A氏の言う解雇理由を総合的に判断するというのは、解雇理由が他にもあったからである。そのもう1つの理由とは、「(大谷)氏の才能や技能・知識を当社のような弱小企業ではなく、もっと有名な企業等で発揮してもらいたいため」である。

 この2つの解雇理由を総合すると労働基準監督署では何もすることができない。だからあなたにあっせん制度を紹介したと言うのが担当者の主張である。

 私 「私は労働の専門家ではありませんが、この書籍に『労働基準監督署は労働基準法に違反しているときは労働者はその旨を所轄の労働基準監督署長に申告し、使用者に対する行政指導を促進することによって解雇の撤回を図ることができる』と書いてありますが、これはいかがなのですか?」
 A氏 「いや、こんなことは労働基準監督署ではしません。これは誰が書いた本ですか?」

 A氏では埒(らち)が明かないので、A氏の上司であるB氏を呼んでもらった。

 私が聞きたかったことは受理された申告書がその後どう処理されたのかである。これは今後の裁判に大きな影響を与える可能性がある。

 A氏立会いのもと私からこれまでの成り行きについて説明をした。

 B氏 「きみ(A氏)はこの申告書を受理しなかった?」
 A氏 「……。はい」

 驚いてしまった。A氏は私から申告書を受け取っていながら正式に受理していなかったのである。労働基準法第104条第2項違反と思われる解雇通告に関する調査が、まったく行なわれていなかったのである。当然、相手方の社長への事実確認も行なわれていない。

 B氏 「なんで受理しなかったの?」
 A氏 「大谷さんにあっせん制度を紹介したので、てっきりあっせん制度で解決するものだと思っていました」
 B氏 「勘違い?」
 A氏 「……」 
 私 「どのような方法で問題の解決を図るかは私の考え方次第です。あなた(A氏)の勝手な思い込みで受理しなかったのですね。あきれてモノが言えません」
 A氏 「……」
 私 「A氏が解雇理由を総合的に判断すると、労働基準監督署では何もできないと言っていましたが、妥当なのですか?」
 B氏 「いえ。解雇理由のなかに法令違反と思われるものがあればきちんと調査し、行政指導が必要であればきちんと指導しています」
 私 「先ほどA氏にこの書籍に書かれていた文章を見てもらったのですが、これはどうですか?」
 B氏 「はいそうですね。解雇を撤回する指導はできませんが、法令違反であると言うことに関してはきちんと指導することはできます」
 私 「今回私は、法令違反と思われることに関する申告を行なっているわけですが」
 B氏 「……」

 B氏 「どうされますか?今からでも申告書を受理して調査しますが……」

 いまさら受理されても第1回審理まではそう時間はない。相手方にすれば裁判のための証拠づくりと思われるだろう。当然、相手方が申告書に書かれていることを否認する可能性も大きい。

 私 「ご存じかとは思いますが物事には順序があります。もし、私の申告書が4月9日の時点で正式に受理され、適切に処理されていれば、私は労働審判という手段は考えなかったでしょう。というのも私はこの弁当屋で働きたいという意志をもっているからです。他の従業員さんからも辞めないでほしいと懇願されました。社長が憎いからこのようなことをやっているわけではありません。会社の立て直しを進めているなかで起きたことなのです。社長に分っていただけなかったから、労働基準監督署に出向いたわけです。外部からの圧力がかかれば少しは社長も考えが変わるのではないかと思ったのです」
 B氏 「荒療治ですか」
 私 「そういうことになると思います。でも、今となっては……」

 だめもとで4月9日付の申告書を再度提出した。

 至急調査を行なうとのことだが、それで今回の件はすまないだろう。社会保険庁のことが頭に浮かんだ。いい加減な仕事ぶりは労働基準監督署でも同じなのだろうか。労働者側である私がわざわざ出向いて確認しなければ今回の件は発覚しなかっただろう。

 今後、宮崎労働基準監督に対して責任の所在を追及していくことにする。



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