街は生きている!

橘通りの公園化で街は活性化するのか

大谷 憲史(2007-06-03 10:00)
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 5月28日、宮崎市が進めてきた橘通りの公園化構想などを含む「宮崎市中心市街地活性化基本計画」が、「中心市街地活性化法」に基づく内閣総理大臣の認定を受けた。

 今回、認定を受けたのは、宮崎市以外に、岩手県久慈市、石川県金沢市、岐阜県岐阜市、広島県府中市、山口県山口市、香川県高松市、熊本県熊本市、熊本県八代市、大分県豊後高田市、長野県長野市の10の都市である。 5月31日に国から認定書が交付された。

観光地として名高いシーガイアも市街からほど近い位置にある(ロイター)

 宮崎市の基本計画は、宮崎市、花のまちづくり公社と宮崎商工会議所などで作った中心市街地活性化協議会が、「橘通りの公園化」を目指して策定した。「にぎわいの創出」、「まちなか居住環境の向上」、「就業機会の増加」の3点を重点目標として挙げている。事業対象地域は、JR宮崎駅周辺や橘通りなど計162ヘクタールで、5年後の2012年をめどに開始することになっている。

 すでに、宮崎山形屋と共同で進める立体駐車場の整備や宮崎太陽銀行本店跡地を文化、芸術の拠点とする「アートセンター(仮称)」に整備するなど、以前から話は進められていた。

にぎわいの創出

 これまでの中心市街地の商店街や宮崎商工会議所を中心にしたイベントの開催で、街は少しずつにぎわいを取り戻しつつある。

 宮崎国際音楽祭の関連イベントで、昨年から始まった「宮崎国際ストリート音楽祭」では、橘通りやアーケードなどをステージに、各種音楽イベントが開催されており、身近に音楽に触れられることもあって好評である。

 今年で6年目を迎える「まつりえれこっちゃみやざき」は、橘通りをステージとして市民5000人が踊る「市民総おどり」や地元民謡をベースにしたダンスコンテストなどで盛り上がる宮崎の夏の風物詩となっている。

 今回の中心市街地活性化基本計画により、さらなるにぎわいを創出するイベントが出てくることが期待される。

まちなか居住環境の向上

 橘通りのデパート前交差点。ここが宮崎市内の中心となるが、そのデパートの反対側には消費者金融がテナントとして入っているビルが建っている。以前は普通の会社や事務所が入っていたが、いつのころからか消費者金融ビルと呼ばれるようになった。

 県外からやってくるビジネスマンや観光客からすると、中心市街地に消費者金融ビルが建っているのは異様な風景らしい。たしかに、県外に出掛けてみるとデパートやショッピングセンターの周辺に、消費者金融だけが入ったビルをあまり見たことがない。それだけ宮崎県民が消費者金融を利用しているということになるのだが、まちなか居住環境の向上のためにも、どうにかしてほしいものである。

 中心市街地活性化基本計画では、対象地域の歩行者数を現在の約1.8倍にし、居住人口を7575人から8025人に増やすことを掲げているが、たった500人程度増やしたところで、どのような効果が得られるのだろうか。

 まちなかに住むということよりも、まちなかに何かを利用するために出掛ける市民のほうがはるかに多い。おまけに、まちなかを公園化することで、確実に居住地の面積は少なくなる。橘通り東1丁目近辺では複合型高層マンションの計画もあるが、都市景観および公園化の視点から見れば、ここの地域だけ高層建築物が建つのはどうなのだろうか。

就業機会の増加

 中心市街地にあるテナントビルには、IT企業のDELL(デル)がコールセンターを開設し、5年後には1000人規模に拡大するという。このデルによるコールセンター進出を足がかりに、宮崎市内中心市街地にコールセンターを開設する企業が増えている。さらに、IT関連企業の進出も進み、中心市街地で働くという環境が整いつつある状況である。

 しかし、同じ中心市街地の橘通りには、シャッター通りと呼ばれる通りもあり、そこには店を閉じた商店が目立つ。個人商店では、商店主の高齢化で後継者がいないところもあり、店を閉めざるを得ないのである。宮崎商工会議所では、若者が起業しやすいように空き店舗を安い家賃で貸し出すようなチャレンジショップという取り組みも行っている。

 起業を考えている若者と店を閉じざるを得ない高齢の商店主をうまくマッチングできないだろうか。

 高齢の商店主がこれまでの商売の経験やノウハウなどを、これから起業を考えている若い人に伝えたり、商店主が閉じる予定にしていた店舗を安い家賃で貸し出したりすることで、少しでもシャッターが下りている店を減らすことができれば、新たなる就業機会につながるのではないかと考える。

橘通りの公園化

 以前、宮崎市内のNPO法人が、宮崎市を「環境首都」とするために、橘通りから完全に車を締め出し、その代わりにトラムと呼ばれる電動の路面バスを走らせる計画を立てたことがあった。しかし、今回の中心市街地活性化基本計画には、このことは盛り込まれてはいない。

 メインストリートである橘通りを片側2車線に減らすということは、逆に交通量が増え、渋滞が発生し、公園化どころか車による排ガスでさらなる環境問題に発展しかねない。

 さらに、まちなかの居住環境が向上し、就業機会が増えていくことにより、ますます中心市街地に人や車が集中することになる。

 果たしてそれでいいのだろうか。中心市街地だけが活性化すればいいのだろうか。

街は生きている

 宮崎市のホームページに次のようなことが書かれていた。

 「まちなかにおける居住人口の減少と高齢化、消費行動の多様化、車社会の浸透に伴う幹線道路沿いへの大型店の立地など、さまざまな社会情勢の変化を背景に、にぎわいの喪失に歯止めがかからず、中心市街地が活性化していない状況にあります」

 その昔、橘通りは宮崎市の中心市街地ではなかった。

 東京が日本の中心でなかった歴史があったのと同じように、その時代の政治経済や人間の生活様式によって、絶えず中心市街地は変わってきた。宮崎市のホームページにも書かれているように、車社会の浸透によって、もしかすると今後は中心市街地という概念が消え、一極集中から多極分散になることも考えられる。

 しかも、少子高齢社会で、今後、日本の人口も減少に転じる。

 そのような社会情勢のなかで、現在の中心市街地にこだわり、今後もここを都市の中心にしたいのであれば、それ相当の覚悟と、中心市街地の活性化にかかわってきた学識者、商業者、NPO、行政機関等だけではなく、広く市民のコンセンサスをとらなければならないだろう。

 事業開始までの5年間、しっかりと見守っていきたい。



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