「第4回裁判官と語らんネ~私もなりたい裁判員~」に参加してきました

裁判員制度のPRはまだまだ

大谷 憲史(2007-06-01 15:00)
Yahoo!ブックマークに登録 このエントリーを含むはてなブックマーク  newsing it! この記事をchoixに投稿

 5月30日、宮崎地方裁判所で「第4回裁判官と語らんネ~私もなりたい裁判員」という裁判員制度のPRイベントが開催された。20代の大学生から高齢者まで、さまざまな年齢層の市民20数名が参加した。私自身、まだ裁判員制度への理解が十分とは言えないので、大いに勉強しようと思った。

第1部 映画視聴

 午後1時、イベントは宮崎地方裁判所の事務局長のあいさつで始まり、まずは、裁判員制度広報用映画『裁判員~選ばれ、そして見えてきたもの~』を視聴した。

裁判員制度は2009年5月までに始まる(写真はイメージ、ロイター)

 俳優、村上弘明扮(ふん)する会社員、村瀬智明が裁判員の候補者名簿に登載された。放火事件の裁判における裁判員候補となり、最初は裁判員になることを辞退していたが、妻のひとことをきっかけとして裁判員となり、ほかの5名の裁判員たちと放火事件の裁判に臨むというストーリーである。

 裁判員候補者はくじ引きで決められ、1年間有効の「裁判員候補者名簿」に掲載される。裁判員制度が適用される刑事事件の裁判が行われる6~8週間前に、候補者名簿に掲載された人に通知が郵送される。通知書の中には「質問票」があり、裁判員になるか辞退するか。辞退するのであればどのような理由なのかを記入することになっている。分からないことや辞退理由に関することは裁判所へ問い合わせ可能とのこと。

 辞退する場合でも、裁判当日の「裁判員選任手続き」には出向かなければならない。選任手続きでは、裁判員候補者50~100名が集まり、裁判所の説明に従って、「当日質問票」に裁判員になるか辞退するかを再度記入しなければならない。

 その後、「当日質問書」をもとにして、裁判長、検察官、弁護人立ち会いのもとで裁判員候補者との面談をする。その場において、裁判員になる意思の確認や裁判員を辞退する旨を確認する。最終的に、検察官や弁護人の意見をもとに、裁判長が裁判員を決めることになる。

 辞退や選ばれなかった場合でも、半日はつぶれることになるが、当日の旅費と日当は支払われる。学生や70歳以上の方、病気で来られない方は、特別な理由がなくても辞退することができる。

 映画では、このような「裁判員の基礎知識」的な内容が分かりやすく説明されていた。

 裁判員になると、「裁判員宣誓」を行う。裁判員には守秘義務があるからだ。裁判の進行状況は、パワーポイントを使い、液晶プロジェクター等で表示される。また、裁判中は、なるべく分かりやすい言葉を使うように、裁判長、検察官、弁護人も配慮に努める。

 映画では裁判は2日間の予定であった。1日目の裁判が終わると、「中間評議」が行われる。ここでは裁判長が各裁判員に本日の裁判の感想や意見を求めるが、ここで自分の態度を決める必要はない。すべては2日目の最終評議で話し合われることになる。

 裁判のすべてが終わると、「最終評議」が行われる。ここで、裁判所側と裁判員が評議し、判決を確定する。裁判所側は、判決のための資料を配付し、裁判長と2名の裁判官、6名の裁判員で協議することになる。最終評議にかける時間は、刑事事件によってまちまちだが、最終的には多数決で決めることになるようだ。この最終評議での話し合いは、映画『12人の優しい日本人たち』を彷彿(ほうふつ)とさせた。

 映画を通して、大まかな裁判員制度の流れを把握することができた。

第2部 刑事事件傍聴

 70分程度の映画視聴のあと、実際の刑事事件の裁判を傍聴した。久しぶりの傍聴であったが、以前とはちょっと様子が違っていた。

 違いとは、法廷前面の弁護人側と検察側の席の後ろ上部に、液晶プロジェクター用のスクリーンがあったことだ。そのスクリーンに検察側の説明にもとづく各種証拠等が映し出され、裁判が進められていった。分かりやすいのは良いのだが、ところどころに誤字や脱字を見つけた。

 2年前に裁判を傍聴したときは、パワーポイントを使った裁判ではなかったので、裁判も進歩したのだなあと思っていたが、実際はそうではなかったことが第3部で分かった。

 当の刑事事件は、返品詐欺を繰り返した兄弟の裁判であったが、なんでおれたちの裁判にこんなに多くの傍聴人がいるのだろうと被告人たちは思ったに違いない。

第3部 裁判官と語らんネ

 裁判所側がメーンイベントとして準備した市民との交流会が「裁判官と語らんネ」である。

 参加者を3つのグループに分け、それぞれのグループに、裁判官、書記官、弁護士が入った。私が参加したグループは,先ほどの刑事事件で裁判長を務めた裁判官と弁護人を務めた弁護士、裁判所書記官と5名の市民の8名であった。

 ざっくばらんに何でも話して良いとのことだったので、まずは、私が質問した。

 「先ほどの刑事事件の裁判で、パワーポイントを使われていましたが、誤字や脱字が気になりました。パワーポイントはいつごろから導入されたのでしょうか」

 何のことはなかった。この裁判員制度のイベントのために用意したということであった。本当は、検察側および弁護側双方の説明をパワーポイントで行う予定であったが間に合わなかったため、検察側だけになってしまったようだ。誤字、脱字のチェックもしていなかったとのこと。

 参加された市民からは、裁判員制度以外に関する質問も出された。「刑事事件に絞った質問を」ということだったが、実際には民事も刑事もごっちゃになった質問が多かった。

 裁判員制度は2年後の2009年5月までに始めることになっているが、まだ先の話なので、市民から出された具体的な質問に関しては裁判所側も応えようがなかったようだ。

 しかし、約1時間にわたる交流会はとても良かった。普段、裁判官とざっくばらんに話すような機会はないので、このようなイベントは私たち市民にとってありがたい。

 このイベントは、もちろん裁判員制度を広めることがメインだが、裁判所側は以下のような視点をもっていた。

◆裁判所に足を運び、裁判所の姿を知ってほしい。

◆安心して裁判員制度に参加してもらうために、裁判官と話し合うことで不安を払拭(ふっしょく)してほしい。

◆市民から教えていただきたい。裁判所も市民から学びたい。

 今回のイベントに参加した市民は、何らかの形で裁判員制度に興味、関心をもって参加したわけである。しかし、その数はほんのわずかである。裁判所側は、県内各地でこのようなイベントを開催していると説明していたが、裁判員制度のPRはまだまだである。

 裁判所へなかなか足を運べない市民も多い。今回の映画の主人公のような働き盛りのサラリーマンや自営業の方は特に大変だろう。

 「裁判所へ足を運んでください」と言うことも大切なことかもしれないが、裁判所が近くの公民館や企業に足を運んで、裁判員制度を説明することも大切なことではないだろうか。

 裁判所も市民から学びたいという意欲があるのであれば、おのずと行動も伴うのではないだろうか。お役所的なPRだけではだめである。



マイスクラップ 印刷用ページ メール転送する
27
あなたも評価に参加してみませんか? 市民記者になると10点評価ができます!
※評価結果は定期的に反映されます。
評価する

この記事に一言

more
評価
閲覧
推薦
日付
Ronnie
39
0
06/02 00:33
みゆみゆ
40
0
06/01 16:16
タイトル
コメント

オーマイ・アンケート

あなたは本をどのように入手していますか?
笹井 健次
インターネットにて購入している。
実際の本屋の店舗で購入している。
図書館などの施設で借りている。
家族や知人から借りている。
その他。
本は読まない。

empro

empro は OhmyNews 編集部発の実験メディアプロジェクトです
»empro とは?

活躍中

more