羽柴秀吉氏、宮崎参上!

宮崎観光、浮上のキーは青島と秀吉?

大谷 憲史(2007-05-24 05:00)
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 東国原英夫宮崎県知事は、5月11日の定例会見で、宮崎市青島の景観上、問題となっている旧青島橘ホテルについて、青森県出身で旅館や建設業などを経営する羽柴グループ代表の羽柴秀吉(本名・三上誠三)氏(57)が温泉施設として再開発する構想を持っていることを明らかにした。

 ついこの間の統一地方選・夕張市長選挙で次点に泣いた羽柴氏だが、テレビの取材では、夏に向けて戦艦3隻を建造中であり、新たな事業を展開するというような発言をしていた。セレブのやることは分からない。が、今回の青島問題はどうだろうか。

どこまでも青い空と海の日南海岸(撮影:大谷憲史)

 青島への観光客は年間60万人。青島の持つ観光資源をもっと活用できれば、マニフェストで掲げる県外観光客の年率5パーセント増を達成できると知事は評価。同ホテル問題を解決すれば、さらに集客力を期待できるとした。

 この旧青島橘ホテルは20年ほど前に倒産した。旧第一不動産(現:FRE エフ・アール・イー)が買収したが、その後破産。ホテル施設の撤去にかかる費用をどうするのかという問題が残り、地元の宮崎市は、ホテルを所有していた不動産会社の破産管財人との交渉を繰り返しているが進展は見られない。宮崎市では跡地の開発計画との整合性をとりながら、2015年度までに、青島観光に関する基本構想を実現させる計画である。

 さて、羽柴氏はテレビ撮影で宮崎県入りしていた5月5日、東国原知事と宮崎空港で懇談。その際、羽柴氏が「宮崎にはスパが少ない。温泉施設を造ればいい」と述べ、同ホテルを候補地に挙げたらしい。また、10日のTBSの番組でもこのことが取り上げられていた。

 羽柴秀吉氏は、これまでに地元の金木町長選挙、1999年の東京都知事選挙、長野県知事選挙、大阪府知事選挙、参議院選挙、衆議院選挙、大阪市長選挙など多数の選挙に立候補し、いずれも落選。

 2006年、ホームページで宮崎県知事選挙に出馬する可能性があることを明かした。そこには「輝く宮崎新時代を切り開く よみがえる羽柴秀吉」、「宮崎県民の希望と幸せを願い、羽柴新党党首 羽柴秀吉いざ出陣!!」と書かれていた。おお、秀吉が来るのか! と一部で騒がれはしたが、出馬は見送られた。

 その後、夕張市長選挙に出馬。一部の商工連盟や地元有力者の支援を受け、初めて当選の可能性がある有力候補として扱われた。無所属新人の藤倉肇氏に敗れはしたが、得票差342票で次点まで迫り、彼の選挙人生で初めて供託金没収を免れたのである。

 今回の羽柴氏の「温泉施設建設計画」は、東国原知事のタレントから知事への転身や、羽柴氏自身の夕張市での経験を生かしての判断ではないだろうか。

 これまで羽柴氏は、有権者から「金持ちの道楽候補」と見られ、本人の強い政治信念よりもそのキャラクターの強さでことごとく落選してきた。自分がこれまでやってきたこととはまったく違う政治の世界に進もうとしてきたが、その理想に高さに周りがついていけなかった。

 一方、東国原氏は、これまでの過去の自分をさらけ出し、県民目線で持ち前のユーモアを加えた話に共感を覚えた県民の投票行動によって知事へ就任した。

 今回の夕張市長選挙では敗れはしたものの、羽柴氏の「私財を市民のために投げ打ってでも夕張市を再建させたい」という気持ちが、市民に伝わったことは彼にとってもっとも大きい収穫となったのではないだろうか。

 選挙に勝つためには、人心を掌握しなければならない。これは戦国の世も現代も変わらない。

 では、なぜ羽柴氏の次のターゲットが宮崎なのか。戦国武将の生まれ代わりがやることは分からない。

 ただ、これが4年後の「ポスト東国原」につながるとは到底考えられない。羽柴氏の目標は、あくまでも「大阪城(おおさかじょう)」。大阪なのである。

 現段階では情報は少ないが、羽柴秀吉氏に直接インタビューしたほうが早いかも知れない。

 東国原知事の就任以降、宮崎観光は好調である。

 5月12日から封切られた『歌謡曲だよ,人生は』(公式サイトはこちら)は、昭和の歌謡曲をモチーフにした12の短編からなる作品。このうち第4話「ラブユー東京」の冒頭に出てくる原始時代の映像は、宮崎の「えびの高原」の硫黄山で撮影されたものである。

 また、エンディング「東京ラプソディ」では瀬戸朝香さんがバスガイド役で登場しているが、着用しているのは宮崎交通のバスガイドの制服である。映画で登場するバス会社は架空であるが。

 昭和30年代。宮崎は新婚旅行のメッカと呼ばれ、新婚さんたちを乗せたバスが青島や日南海岸を走っていた。車内ではバスガイドさんがユーモアたっぷりに青島の話を……。

 当時、宮崎ではバスガイドは女性のあこがれの職業であった。新婚旅行ではなくても観光旅行で、この宮崎交通のバスガイドの制服を見た方も多いのではないだろうか。もう一度、スクリーンで見てほしい。

 青島観光が華やかであったころの昭和30年代に戻ることはできない。新婚旅行は海外に向かい、バブルがはじけ、青島の中心に廃虚ホテルが残った。異様な風景である。近くには青島パームビーチホテル、こどもの国などの観光施設があるが、なぜか廃虚ホテルが目立ち、そこで記念撮影をしている人もいる。

 県も市も地元も旧ホテル側の破産管財人との交渉を続けてはいるが、進展はない。宮崎の経済界が立ち上がり、廃虚ホテルの撤去費用を拠出できるような体力もない。せっかくの観光資源が泣いている。

 早くも、今回の羽柴秀吉氏の提案に歓迎の意向を示している向きもあるが、観光王の岩切章太郎氏が「大地に絵を描く」思いで築き上げた観光宮崎を本当に復活させようというのであれば、まずはその意気込みを羽柴氏に見せてもらいたい。

 前前知事時代に総合保養地域整備法(リゾート法)第1号の適用を受けたシーガイア。観光ホテル業、運送業等から撤退し、事業規模を縮小した宮崎交通。どちらもやっと再建計画から立ち上がり、再び宮崎観光の両翼として事業を展開している。

 残るは青島。問題は、東国原知事と羽柴秀吉氏との協議。これからも情報をお伝えしていきたい。

 宮崎に住んでいる私が言うのもおかしいが、「太陽とみどりの国」にふさわしく、自然が豊かで、空気も食べ物もおいしいし、人も熱い。

 ぜひ一度、宮崎に来てほしいと思う。



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