外務省の隠れ慣習「ローカルランク」

元エリート官僚のトップ当選から出た「嘘」

大谷 憲史(2007-05-22 05:00)
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 「情報公開男!」と言うキャッチフレーズで、世田谷区議会選挙でトップ当選した森学区会議員(38歳 民主党)が、ポスターと選挙公報で誤った職歴を掲載していたことが問題となっている。

 この森区会議員の説明で、出てきたのが「ローカルランク」という言葉だった。当然、「ローカルランクとは何だ?」と言うことになる。

 外務省では、海外で、相手国の官僚やビジネス面での交渉をスムーズに進めるために、便宜的に、自分の「等級」を引き上げる「ローカルランク」(=その赴任地における等級)の慣習があるそうだ。森区会議員は、このローカルランクを利用して、「2等書記官」の肩書きで働いていたそうだ。

 さらにあきれたことに、森区会議員は、

 「書記官同士は、お互いにさん付けで呼び合い、お互いが何等級かを意識して仕事することもなかった。仕事の違いもなかった。嘘をつこうとしたわけではなく、私の勘違いだった」

 と説明する。

 私は1993年4月から1996年3月まで、在中華人民共和国上海領事館の嘱託職員として勤務していた。外務省からではなく、当時の文部省から日本人学校の職員としての派遣だった。

 一時期、海外で勤務する日本人学校教員による不祥事(書記官と偽っての豪遊など)があり、赴任前の研修では、

 「表向きは領事館嘱託職員ではあるが、あなた方は外交官でも書記官でもない。あくまでも教員である」

 と厳しく言われた。
 
 派遣された中国の上海では、日本領事館の職員とも接することが多く、「××さん」と呼び合うことはあっても、決して自分の立場(教員)を忘れることはなかった。

 自分の肩書き、階級を忘れるような外交官は、いかがなものだろうか? しかも、「情報公開男!」として、今回の世田谷区区議選挙ではトップ当選である。

 森区会議員は、反省の色を見せているものの、「虚偽事項の公表」に抵触する恐れがある。公選法235条によれば「2年以下の禁固か30万円以下の罰金」である。

 森区会議員は、自分の職歴詐称を情報公開しただけではなく、外務省で慣習的に行われているという「ローカルランク」という知らなかった事までも世間一般に情報公開してくれた。

 もしかすると、「ローカルランク」で勘違いをしている日本の外交官たちが、世界中のあっちこっちの国々で活躍しているのだろうか?



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