YESもNOも言えない地元マスコミ

宮崎県は、何も変わらないよ

大谷 憲史(2007-05-19 13:00)
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 5月15日、宮崎県で県議会の正副議長を決める臨時議会が紛糾した。

 コトの発端は、東国原英夫知事が前日14日に報道陣に語った「県議会の正副議長が投票で決まるのは異例、初めてである」との発言だった。

 自民党県議員が「県民に誤解を与える」と趣旨説明を求め、知事が本会議で「一部言葉足らずで、事実誤認な印象を与えた」と釈明するまでの間、多くの議会傍聴者がいるにも関わらず、議事は約4時間半中断された。

 この日の昼のニュースで、この知事発言と臨時議会紛糾の様子を伝えた地元・民放テレビは、夕方のニュース番組で、「県民の皆様に誤解を与えるような報道を改め、公正・公平な報道に努めたい」とする謝罪を行った。

 県議会の正副議長は、地方自治法に基づき、投票で選出するようになっている。

 14日に知事が発言した内容については、1日の猶予があったはずなのだが、取材の場で疑問を呈する記者はいなかったようだ。

 そして、15日の議会開会直前に、「県議会の正副議長を、談合で決めていたかのように思われるのは困る」と言う県民からの電話を受け、一部の自民党議員が、東国原知事発言の趣旨確認を、坂口博美議長に申し出たのである。

 今から約10年前、地元民放のラジオ番組の視聴者参加コーナーで、タレントのオスマン・サンコン氏の肌の色をギャグにしたことがあった。その詳細は覚えてはいないが「夜で、肌の色が黒くて見えませんでした」と言うオチに対して、番組のパーソナリティーがひとこと「うまい!」と喚いた。

 私は、怒りを覚えた。

 すぐに、私はラジオ局に電話をかけた。担当プロデューサーが対応した。「オスマン・サンコン氏は誰でも知っている有名人で、彼なら肌が黒いことを番組で取り上げても問題はないだろう」と社内の話し合いで視聴者の作品を、採用したと説明したのだ。この説明を聞いて、改めて驚いた。人権感覚まったくないである。次週の同じ番組で、パーソナリティーが謝罪すると言うことで落ち着いた。

 翌週の番組で、パーソナリティーが「先週の視聴者参加コーナーで、人権に対する配慮の欠けた作品が流れたことをお詫び申し上げます」と謝罪した。この謝罪に、また、視聴者からクレームがついた。「それはどんな作品で、どう人権に対する配慮が欠けていたのか? 」という意見だった。

 さらに翌週、番組側、は視聴者からの意見をもとにして、再度、その作品を紹介してしまったのである。その結果「人の肌の色を笑いものにするような番組は、最低だ」と言う視聴者からの意見が殺到して、その番組は打ち切り終了になった。

 私の電話がきっかけで、申し訳ないと思いつつ、それ以上に、ラジオを聴いている人たちのニュース報道や人権に対する反応の鋭さに驚いた。ただ単にラジオを、娯楽のひとつと聞き流しているだけではない。番組のアナウンサーやパーソナリティーが何を話し、何を伝えようとしているのかを、きちんと聴いているのだ。

 その年、1997年は、「人権教育の為の国連10年」に関する国内行動計画が策定され、国際的な人権尊重の機運が、高まりつつある中での出来事であった。

 東国原知事の発言も、10年前の私のように、「うん? おかしいよ」という疑問からの電話が、役だったようだ。

 5月15日午前10時に県議会は、開会後すぐ休憩に入り、幹事長会などを断続開催した。

 「自民党県議内での選挙が、異例という趣旨で申し上げた」と説明していた東国原知事は,午後2時30分に再開された本会議で「県議会、県民に誤解を与えたことをおわびする」と釈明した。一部の諸派議員からは、知事への過剰反応を指摘する声もあった。

 4月23日で就任3カ月を迎えた東国原英夫知事について、知事を「支持する」と答え宮崎県民は86.7パーセントに達した(宮崎日日新聞社が実施した県民意識調査)。記事には、「精力的なテレビ出演などを通じて、全国区の人気を誇る東国原知事は、県の行財政改革に取り組む姿勢も評価され、県民の高い支持を得ている」と書かれていた。

 果たして、この高い支持率が物語っているのは、「県民の高い期待」だけなのだろうか。

 地元マスコミは大丈夫だろうか、というのが私の考えである。

 今回の東国原知事の発言を真っ先に聞いたのは、報道陣である。知事の発言をチェックする時間は、十分あったはずである。しかし、知事の発言に対して報道機関のチェックは機能していなかった。

 「知事、今の発言はおかしいのではないのか?」と言う記者はいなかったのか! 「ノー」と言える記者はいなかったのか! 

 県政記者クラブは、県民を代表して、知事のことばを、きちんと県民に伝えているのか!

 5月11日の定例記者会見において、東国原知事は、現在の「県政記者クラブ」及び県政記者クラブ主催の「定例記者会見」の見直しを示唆した。私は、この発言通りに、知事には県政記者クラブを廃止していただき、知事の発言を広く県民に伝えるための新しいシステムを模索して欲しいと思う。

 異常な高支持率の中で、知事に対してYesもNoも言えない状況が続くと言うことは異常である。「どげんかせんといかん!」と感じているのは、知事だけではないはずだ。マスコミも、私たち県民も現状をどうにかしないといけないと思っているはずである。いや、そう願っているに違いない。

 もっとたくさん議論して、おかしいことはおかしい、変えないといけない事は変えようと発言する機運を、お互いの利害関係を乗り越えて高めていかなければ、宮崎県は何も変わらない。

 これからは、「OhmyNews」に代表される「市民メディア」からの意見発信が、非常に大きな意味をもつことになるのではないだろうか。

 私は、YesもNoもはっきりと言える市民記者になりたいと思う。



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