県政記者クラブもどげんかせんといかん!

市民に開かれた県政情報を

大谷 憲史(2007-05-18 05:00)
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 5月11日、宮崎県庁で定例の記者会見が行われた。あとで知ったことだが、この日の記者会見から県政記者クラブ加盟社以外の報道機関からの質問も、受けるようになったとのことである。

 この日の定例記者会見で東国原知事は、県政の取材活動を行う県政記者クラブと同クラブ主催の定例知事会見のあり方について、「宮崎県は生まれ変わらなければならない黎明期にあり、県政記者クラブも聖域ではない」と発言。

 さらに、「行政機関などに設けられている記者クラブ制度が、憲政史上、日本の政治、国全体を支えてきた部分は否めないと思う」と評価する一方で、「それが戦後60年たって何も問題視されないのはいかがか」と疑問を投げ掛けた。

 以前、長野県知事だった田中康夫氏(新党日本代表)も、知事時代に県政記者クラブの改革を行っている。だがそれ以降、県政記者クラブ改革を行った知事は、私が知る限りいない。

 東国原知事になって、宮崎県は事務事業の見直しを進めている。県議会も例外ではなく変わろうとしている。その中で、県政記者クラブや定例記者会見のあり方を見直すのは当然であり、「宮崎が変わった!」ことを示す1つの態度を全国にアピールしていきたい、と東国原知事は持論を展開している。このことは私たち市民記者にとってもありがたい改革である。

 テレビでも流れた、東国原知事とどこかの記者のやりとりの中に答えがある。

  ◇ ◇ ◇

東国原知事:あなた方記者は、私が県民のみなさんに対して話していることを伝えなければならない。だが、はたしてきちんと伝えているのか。

記者:知事が話されたことがすべて記事になるわけではない。知事の話はこちらで編集して、記事として伝えている。

東国原知事:その記事の真意が、果たして県民に伝わっているのか。この定例会見以外にも報道関係者と歩きながらの取材に応じたりして発言はしている。そして、同じようなことを定例会見でも話している。時には話すことがないこともあるが、それでも定例記者会見は必要なのか。

記者:必要である。知事の話を県民に伝えなければならない。

東国原知事:そうであれば、私の言葉を一言一句すべて記事にしなさい。県民に伝える義務があるのであれば……。

  ◇ ◇ ◇

 どこのメディアの記者だったかは確認していないが、「私は県民の代表として、みんなが知りたいことを取材し伝えようとしている。知事はそれを否定するのか」とでも言いたげな展開に見えたやりとりであった。

 確かに、記者の仕事は大変だ。ただ、取材される側からすればどうだろう。さっき廊下で歩きながら話したことは、報道各社、特に県政記者クラブに加盟している報道機関には幹事社を通して伝わっている内容もある。改めて場所を変えて、定例記者会見として同じ話をしなければならないと言うことに対して、「どげんかせんといかん!」と知事は考えたのではないか。

 誰に対する誰のための「定例記者会見」なのか。

 定例記者会見は、記者クラブのためのものではない。県の首長である県知事が、県民に対して、県政の現状を報告するための場でなければならない。

 県の事務事業見直しの中で、県政記者クラブの見直しが出てきた理由の1つには、記者クラブが県庁舎内の1室をワーキング・スペースとして利用していることにもある。

 結構な広さがある部屋で、記者会見の場にもなっている。取材活動の便宜を図って県が貸している部屋であるが、はたして家賃等は支払われているのかどうか。この部屋も、事務事業見直しの対象になっているという。

 東国原知事就任直後の臨時県議会では、事務局は「議会傍聴のために多くの県民が県議会場にやってくるのではないか」と予想し、別室を準備した。だが予想に反して傍聴者は伸びなかった。その代わりに反響があったのが、インターネットでの県議会中継だ。予想以上のアクセスの多さに、県議会職員だけではなく、知事自身も驚いた。

 インターネットが広く普及し、ネットの新しい利用スタイルであるWeb2.0やセカンド・ライフが取り上げられている中、県民の情報収集、情報発信のスタイルも確実に変化している。ニュースは、これまでの大手新聞のペーパー版やインターネット版だけではなく、このOhmyNewsを始めとする市民記者が作り出す「市民メディア」によるものまで多様である。

 はたして、記者クラブに所属しているほんの一握りの報道機関だけが県民代表を名乗って、「県民を代表していますんで、知事、そのへんをもう少し詳しく説明してください!」って言えるのだろうか。本当に県民が知りたい県政情報とは何だろうか。

 私も市民記者としてOhmyNewsに記事を書いているが、他のマスメディアの記者と同じように定例記者会見に参加し、質問して、知事から説明を聞くことはできる。ただ、定例記者会見を広く開放すると、混乱を招く可能性があると思う。ある程度のルールは必要になるが、それは県政記者クラブが決めるものではないだろう。県が独自に、「定例会見参加基準」なるものを作り、それを県民に示せばよい。

 東国原英夫知事は、「どげんかせんといかん!」と口で言っているだけの男ではない。変えなければならないことはきちんと変える男である(と県民としては思っている)。

 6月5日に開会する定例議会で、知事がどのような議案を提出するのか、見守っていきたい。 



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