公民館へ行こう!

町の元祖カルチャーセンターは健在なり

大谷 憲史(2007-05-17 05:00)
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 大型連休が終わると、公民館がにぎやかになる。公立公民館主催の前期講座が始まるからだ。

 私が若いころは、公民館は地域のお年寄りのたまり場的な場所としてのイメージで、選挙の投票に出掛けるだけの存在でしかなかった。

地域にいるさまざまな世代が協力し合いながら公民館の運営をするといいだろう(写真はイメージ)

 2000年。当時の森首相の肝いりで始まった「IT講習会」の舞台となったのが、各地域にある公民館やコミュニティーセンターであった。この講習会に間に合わせるために、私が住んでいる地域の19の公民館すべてにパソコン(Windows Meマシン)10台が配備された。受講料が安いということで、このIT講習会はパソコンを学びたいという方にとって参加しやすい講座となった。

 しかし、あとが続かなかった。

 盛り上がったIT講習会も1年で終了。講習会のために借り出されたインストラクターたちは、自分の仕事と掛け持ちでやっていたため、多忙を極(きわ)めていた。地域住民からは、講習会が終了しても公民館講座として定着させて欲しいという声もあった。IT講習会以前にも公民館ではパソコン講座が行われていたが、それほど人気のある講座ではなかったそうだ。

 私の地元の公民館でもパソコン講座の定着化を願う声が上がり、2002年から開催することとなった。

 私はそれまでほとんど公民館に足を運んだことがなかったが、講座開催のための打ち合わせで何度か公民館にお邪魔して驚いた。囲碁・将棋講座、カラオケ講座、英会話講座、料理講座から、カクテル講座、自然科学教室、子育て講座、介護講座など時勢に合った講座まで開催されていた。カクテル講座は実地研修もあり、バーでカクテルを作って飲むこともあるという。ぜひ、参加してみたいと思った。

 これらの公民館主催講座の受講料はすべて無料。テキスト、教材等の実費を受講生が負担することにはなるが、民間のカルチャーセンターに比べると破格の安さである。

 文化的な講座だけではなく、スポーツ関係の活動もすごい。公民館事務室の壁に1カ月の公民館利用日程が書かれた黒板が掲げてあった。それを見て、公民館の体育館の利用率の高さに驚かされた。バレーボール、バドミントンなどの定番のサークルだけではなく、ミニバレー、インディアカなど、個性的なスポーツのサークル名もぎっしりと書かれてあった。

 実業団のような競技団体ではなく、健康増進と仲間作りを目的にしたスポーツサークルがほとんどだが、あらためて、元祖・町のカルチャーセンター「公民館」の存在意義を感じさせられた。

 公民館活動は、国民の生涯学習を推進するために、「社会教育法」、「公民館法」でしっかりとうたわれている。その法律によると、公民館を利用する側には、ある程度の制限があることが分かる。

 例えば、公立公民館が主催する講座は、もちろん市内在住者に限るのだが、市内であればどこからでも参加できるというわけではない。その講座定員の6割程度が地域住民でなければならないのである。仮に定員20名の講座があれば、12名程度が公民館のある地元住民、あとの8名がそれ以外の市内在住者ということになる。地元の公民館ではなく、よその公民館で講座を受講する方(越境受講生)は、受講から漏れることもある。

 しかし、必ずしも法律通りに講座が運営されているわけではない。2002年から私が担当を始めたパソコン講座は、人気講座となった。市の広報で公民館講座が発表されると、公民館には講座申し込みのハガキが殺到する。パソコンの台数の関係で公民館によって定員の違いはあるが、20名の定員に対して申込者が50名を超えることがほとんどだ。何度申し込んでも抽選で外れ、2年目にしてやっと当選したというような方も少なくない。

 公民館ではなるべく、地元の住民を受講生として選ぶようにしているが、公民館によっては定員割れのところもある。市内でもちょっと外れた場所にある公民館は、募集をかけてもなかなか受講生が集まらない。

そういった場合は、越境受講生も受け入れるようにしている。

 5年もパソコン講座を担当していると、公民館講座の運営に口を出したくなることもある。それは、講座

の企画である。市内19の公民館どこでも同じような講座を同じ定員で募集しているが、より多くの市民が受講できるようにするためにも、弾力的な講座の運営が望みたい。

 例えば、A公民館では「パソコン初級者講座」、B公民館では「デジタルカメラ講座」、C公民館では、「仕事に使えるワード講座」というように、各公民館で核になる講座を決めて募集をかける。また、地域に若い家族が多い場合、子育て支援事業と関連させ、地域にいるおばあちゃんや、子どものことを勉強している大学生をスタッフとして「幼児向けの講座」を行い、別室のパソコン室でお母さんは「再就職のためのパソコン講座」を受講するといったような運営法も考えられる。より多くの方がパソコンに接し、公民館講座に接するためには、各公民館が特色ある講座を開発する必要があるのではないか。

 私の住んでいる地域に限ったことかもしれないが、公民館の館長、および指導員の職員はほとんどが教員経験者である。広く公募はしているそうだが、退職した校長や教頭先生が公民館職員になることが多い。指導員は、年間で60近い講座の企画・運営、講師との交渉を行っている。60歳を過ぎてからのこのような仕事は大変である。

 公民館で活動や講座を受講するだけではなく、数少ない公民館職員の業務をサポートするために、地域のサークル、市民団体や特定非営利活動法人(NPO法人)にも講座の企画段階から参加してもらうなどの公民館業務の改革も始まっている。

 私の住む宮崎市では、まだこのような改革は行われてはいないが、地域住民が講座の企画・運営から参加できるシステムが確立すれば、町の元祖・カルチャーセンターだけではなく、パソコンもインターネットも完備した地域の情報発信基地として、公民館を身近に感じることができるのではないだろうか。

 明日、ちょっと公民館に足を運んでみませんか?



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