サイバー犯罪研究所ファイル5「消えたクライアント・その1」
「平成の5・15事件」に釣られてしまった相談屋
私のところに相談の電話をかけてきたクライアントからの連絡が途絶えた。
今から1年少し前の2006年5月5日。
福岡市在住の男性D氏からの相談であった。ゲイが集まるサイトの電子掲示板上で個人名と写真を公開され、精神的に非常に参っているのでどうにかして欲しいとのこと。地元の警察署にも連絡しているが、「掲示板管理人に直接連絡するように」と言われたという。
大型連休中で管理人に連絡がつかない状況。ここの管理人が宮崎市に住んでいるということまでは突き止めることができた。どうにかして、サイバー犯罪研究所でここの管理人とコンタクトを取ることはできないだろうか。
とりあえず、私がその電子掲示板の存在を確認し、管理人に連絡を取ってみるということで、話をまとめた。
そのサイトに接続し、問題の電子掲示板の書き込みと顔写真を確認した。2ちゃんねるを利用している方はご存じだと思うが、削除依頼を出してもなかなかすぐに削除してもらえることは少ない。だめもとで、管理人に削除依頼のメールを送った。
問題の電子掲示板の書き込みを読んで、どうして普通の男性であるD氏の個人名や写真が公開されなければならないのか、相談を聞いていてどうも腑(ふ)に落ちない点があったので、再度、D氏に連絡を取った。
D氏の母親が電話に出て説明してくれた。彼女の話の概略は以下のとおり。
■D氏の一家は宮崎市出身であり、D氏の兄は、2006年1月まで内閣府情報調査室の国際部長をしていたが、上海総領事館での自殺問題の責任を取らされた形で、T県警察本部長に左遷された。また、D氏の弟(元高校教師)はシティフォンを利用した電磁波で死に追いやられた。
■警察、公安関係に恨みを持っている人間から、いろいろと嫌がらせを受けてきた。今回の電子掲示板だけではなく、2ちゃんねるでも誹謗(ひぼう)中傷を受けてきた。D氏はネット上だけではなく、実際に1部上場の音楽関係の会社から脅迫を受けたこともあった。
■今回の問題の電子掲示板の管理人は、D氏への誹謗中傷がどこまで進むのか成り行きを見ていたいので、書き込みを削除せずに放置している。
私は、警察関係者を家族に持つところは大変だなあというくらいの気持ちでそれらの話を聞いていた。
さらに、D氏の母親の説明は続いた。
■熊本市にある総務省九州総合通信局の担当者にも連絡を取り、相談に乗ってもらっている。また、熊本地方検察庁の検事にも連絡を取り、プロバイダー責任法等による法的手段についても相談に乗ってもらっている。
であれば、私のような民間の、何の力もない無料相談センターに電話をかけてくることはないと思ったのだが、さらにD氏の母は言う。
■警察関係者が家族にいるが、いち市民として普通の生活をしたい。故郷の宮崎に帰りたいが、なかなかそうもいかない。調べたところ、このようなネット上での被害救済をしてもらえる民間機関が西日本管内では、お宅しかなかったのでどうにかして欲しい。どうぞよろしくお願いします。
聞いた話の中にはうさん臭さもあったが、要するに私への依頼は、問題の電子掲示板の書き込みを削除してほしいということだから、「管理人さんへ送ったメール次第ですから応じてくれないかもしれませんよ」と前置きをして電話を置いた。
翌日の午前中。問題の電子掲示板を確認すると、D氏に関する書き込み内容がすべて削除されていた。
早速、このことをD氏へ伝えた。D氏の母親が対応してくれた。
これで私の役目は終わったと思ったのだが、その後、1時間30分にも及ぶ長電話となり、D氏の母親は以下のようなことを話した。
■T県警察本部長をされているD氏の兄の名前は、M氏である。
■M氏の内閣情報調査室(内調)時代の部下であったOK氏が、「日本乗っ取り(平成の5・15事件)」の計画を記した「OKメモ」の行方を政府、公安、自民党等が追っている。
■OKメモの所在はD氏の母親しか知らない。D氏の母親は、墓場まで持っていくつもりで、一切のことを外部に公表しないつもりでいたが、政府や政治家、政治ブローカーたちが裏側でやっていることを誰かに伝えたいと思い、第3者である私(大谷)に話した。
ほかにも、「臓器売買ネットワークの存在」、「A大学留学生行方不明事件」、「12月の潮干狩り事件」などの話を聞かされた。本当なのだろうか? と耳を疑いたくなるようなものばかりであったが、そのなかで、本当だと確認できた話もあった。
それは、「宮崎市内の宗教系幼稚園でお金に絡む問題が発覚し、騒がれますよ」と言うものだった。そして、この電話があった後に、実際にこれは事件になり、地元新聞に載った。こうしたこともあり、D氏の母親から聞かされた話に興味を持ってしまった。
また時期を同じくして、自衛官による情報漏えい問題、イージス艦情報漏えい問題などが起き、もしかして何か関連があるのではないかと考えてしまった。
「日本乗っ取り計画」、別名「平成の5.・15事件」とD氏の母親が呼んでいた事件に関わる「OKメモ」のことも気になるようになった。怪しいとは思いつつも、私に実害のない程度に調べてみることにした。
(つづく)