サイバー犯罪研究所ファイル3「解約、できますか?」

深夜の男性からの相談は出会い系&アダルト系サイト

大谷 憲史(2007-05-09 05:00)
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 私が開催しているサイバー犯罪関係の無料相談では、夜の相談も多い。特に男性からである。出会い系やアダルト系サイトでのトラブルである。中には,子どもが勝手にアダルトサイトに契約してしまったので解約したいというものもあった。

 相談内容のほとんどが架空請求や不当請求に類するものである。なかには正規の会員制サイトに自ら申し込んでおきながら、不当請求であるから解約する方法を教えてほしいという相談者もいた。そういう場合には、「自己責任でお願いします」と丁重にお引き取り願っている。

 私の無料相談は、あくまでも架空請求&不当請求の被害に遭った可能性がある場合だけである。こうした件は、自分の興味・関心が先走り、周りのことが見えなくなったために引き起こされるトラブルである。

【コトのなりゆき】

 深夜1時過ぎに電話がかかってきた。相談者A氏は、「今なら無料!」という誘い文句につられ、興味半分で出会い系サイトに登録した。後日利用するということで、その日は登録だけ済ませた。忙しい日が続き、なかなかネットに接続することができなかったが、出会いサイトに登録してから3日後にネットに接続すると、メールが届いていた。登録した出会い系サイトからである。そのメールを見てA氏はがくぜんとしたという。

 「今回は、当サイトへのご登録をありがとうございました。現在、あなたさまは仮登録の状態となっています。このままの状態ですと利用規約に基づき本登録手続きまでの間に料金が発生します。このまま退会されるのであれば、本登録手続き後、退会手続きをお取りください」

 退会するにしても一度本登録をしなければならないので料金が発生してしまう。4万9000円である。そんなばかなことがあるかと無視していたら、またメールが届いた。

 「このメールが届いてから3日以内に、指定の銀行口座への入金をお願いいたします。お支払いがない場合には、利用規約に基づき、管轄の裁判所にて法的手続きを取らせていただきます……」

 A氏の頭によぎったのは「少額訴訟」のことだ。簡易裁判所の「支払い督促」や「少額訴訟制度」を利用して料金を請求する悪質な手口が報道されていることを知っていたA氏は、なす術なく私のところに電話をかけてきたのである。

【対策1:サイトを隅々まで確認する】

 まずは、問題の出会い系サイトを隅々まで確認することである。A氏が注目した「今なら無料!」という言葉ほどあいまいなものはない。利用者と業者の間で、「無料」のとらえ方が違うからである。利用者は当然「登録が無料」と考えるが、業者にとっては「仮登録が無料」、「サンプルページの閲覧が無料」など、無料の範囲はさまざまである。どうしてこのようなことになるのか。それは、利用規約をチェックしていないからである。

 利用規約に同意しなければ契約は成立しない。このようなサイトは、必ず利用規約を掲載しなければならない。ネットを利用していると「利用規約に同意する」というボタンがある。このボタンを利用者本人がクリックすることで契約は成立する。

 しかし、悪質なサイトでは、利用規約がどこにも掲載されていない。「今なら無料!」というボタンを押したら「ご登録ありがとうございます」と表示され、強引に契約に持ち込もうとするところもある。利用規約はサイトには掲載していないが会社にあると主張する業者まである。

 サイトの隅々を見回し、必ず「利用規約」が書かれているページを探し出し、隅々まで読むことが大切である。

【対策2:裁判所からの「支払い督促」や「少額訴訟の訴状」は放っておかない】
 
 「支払い督促」や「少額訴訟の訴状」は、普通郵便では配達されず、「特別送達」という方法で届く。この「特別送達」は封書の表に「特別送達」と明記されており、送達の事実を証明するために、必ず本人もしくは同居人に直接手渡すことになっている。

 もし裁判所から文書が届いてもあわてることはない。裁判所を偽っている可能性もあるからだ。まず、本当に実在する裁判所から届いたものかどうかを確認する必要がある。届いた文書に書かれている電話番号は悪質業者に電話がつながる可能性があるので、裁判所または消費生活センターなどに確認したほうがいい。

 届いた封書が本当の「支払い督促」や「少額訴訟」だった場合は、ただちに消費生活センターに連絡すること。

 「支払い督促」に対して不服があるときは、受け取った日から2週間以内に同封の「督促異議申立書」を提出する。異議申し立てをすると通常の訴訟に移行することができる。
 
 また、封書が「少額訴訟」であった場合、期日の前までに自分の言い分を書いた答弁書を簡易裁判所に送り、口頭弁論の期日に法廷に出席する。少額訴訟手続きによる審理を希望しない場合には、期日までに通常訴訟の手続きをしてほしい旨を簡易裁判所まで申し出ることになる。

 このような面倒な手続きをしてまで利用者からお金を取ろうと考える悪質業者は少ないと考えてよい。ただし、これはあくまでも「架空請求&不当請求」に限った話で、通常の会員制サイトに利用者本人が登録した場合は、それは自己責任でということになるので話は違ってくる。

【対策3:もっとも有効なのは「無視」すること】

 自分の意思に反し、「今なら無料!」に誘導されて登録した場合、その後、何回かにわたって支払い催促のメールが届くことがあるが無視して構わない。メールには「○月○日までに指定口座まで」と書かれていることが多いが、その日を過ぎたてもとくに何も起こらない。今後このようなメールが届くのがいやだから、お金が少額だから……、と安易に支払うと、次々にと請求を受けることになる。

 これもよく言われることだが、こちらから悪質業者へ連絡しないことも重要だ。不用意に業者に連絡したり返信すると、こちらの個人情報を知られる恐れがある。たとえ業者側から連絡があっても、名前、住所、電話番号、勤務先などの個人情報は絶対に知らせてはいけない。

【最後に……】

 利用者側が少しでもすきを見せると悪質業者はそこをついて攻めてくる。個人情報保護法が施行されたと言っても、自分の個人情報を守るのは自分である。

 さて、相談者のA氏。相談当初は落ち着きのない弱々しい声であったが、私との長時間にわたる相談によって、少しは落ち着いたようである。

 男性なら風俗に関して、さまざまな悩みを抱えている人が多いのではないだろうか。その悩みを解決するお手伝いをできれば幸いだ。

 もちろん、男性だけではなく女性もさまざまな悩みを抱えている。次回の「サイバー犯罪研究所ファイル」では、女性のある悩みに関する相談事例を紹介したい。



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