サイバー犯罪研究所ファイル2 「すでにお金を払ってしまったんですが……」

偽アンチスパイウェア購入トラブルは減ったのか

大谷 憲史(2007-05-07 16:00)
Yahoo!ブックマークに登録 このエントリーを含むはてなブックマーク  newsing it! この記事をchoixに投稿
 私はサイバー犯罪関係の無料相談を実施しているが、なかでも多いのがお金を払ってしまったあとの相談。とくに、アダルトサイトでの入会トラブルの相談である。すでにお金を払ってしまったあとでは、良いアドバイスができないこともある。今回のトラブル・ファイルもそうである。

 2005年の暮れから増え始めた相談として、偽アンチスパイウェア購入のトラブルがあった。

 インターネット中に、突然、パソコンの画面にポップアップ広告が現れ、「あなたのPCは危険にさらされています。いますぐシステムのチェックを行う必要があります。そのためには、ここをクリック!」。読者のみなさんもお目にかかったことがあるのではないだろうか。

 クリックすると、パソコンのシステムをチェックするようなページが現れ、数秒後に勝手にシステム・チェックがはじまる。そして,「あなたのパソコンは、スパイウェアに感染している恐れがあります。いますぐ、このアンチスパイウェアソフトの購入を勧めます」との表示が出る。

 Windowsのサポートページに似たような表示画面で、ネット初心者からすれば安心できる企業からのものでは? と思わせるほどである。よく見ると怪しい日本語の表記も見られるのだが。

 販売価格は日本円で4000円程度。

 それほど高いものではなく、ネットに詳しくなく、他の人に聞いても分からないだろうと判断した方は、購入ページをクリックし、クレジットカード番号を入力してしまう。

 しかし、購入しても販売会社からは何の連絡もなく、やはりサイトに書かれていた怪しい日本語が気になり、その商品名を検索してみたら……。

 「この商品は偽モノだ!」、「被害を受けた」などと書かれた電子掲示板を発見。

 そこで、私のところへ相談の電話がかかってくるのであるが、それもいろいろな相談機関を経由して、最後にたどり着いたのがここ、サイバー犯罪研究所ということが多い。

 ほとんどの相談内容が商品の解約に関するもので、各都道府県に置かれている消費生活センターに電話をかけたところ「特定の商品に関する解約に関する相談はお受けできない」と回答される。ある相談では、パソコンメーカーのお客様相談室に問い合わせたところ、そのような相談事例は受けたことがないと言われたとのこと。そこで私のところに相談が回されてくるのである。

 ほとんどの相談では,相談者自らがクーリングオフ制度を使った商品解約を考えているようだが、相手の会社が日本国内ではなく、シンガポール、アメリカにあるということがネックになっていた。相手会社に解約の申し入れをメールでしても埒が明かない状態だが、どうにかして解約したい。クレジットカードを使っているので、海外で偽造カードを作られる心配が……。

 そもそも偽アンチスパイウェア販売業者は、クレジットカードを偽造してまで金儲けを考えているのではなく、あくまでも偽アンチスパイウェアを買ってもらえそうな人間から4000円の購入代金を騙し取っているのである。下手な鉄砲も数打ちゃ当たるといったところである。

 売買契約は購入者本人の意思でするものではある。自分の意思に反して相手会社の購入誘導(消極的な購買動機)によることを証明することができれば、クレジット会社は相手会社への支払いをストップしてくれる。ほとんどのクレジット会社では、日本国内にいるクレジットカード契約者が海外で何かを購入して支払いが発生する場合、その額に関係なく契約者本人に確認の連絡を入れるようになっている。その支払いが契約者本人の積極的な購入意思ではないと確認された場合、または、カード限度額を超える法外な支払いが本人のものではないと確認された場合,支払いは停止される。

 私も過去に3度ほど海外で買い物をしたことになっていた。1回目は20万円、2回目は30万円、3回目は50万円。クレジットカード会社から連絡があり、支払いはストップされた。それからクレジットカードは持たないようにしている。

 しかし、私が調べたところでは、大手クレジットカード会社1社だけが「カード契約者が一度結んだ売買契約ですから,その支払いをストップすることはありません」と回答した。その後、改善されたかどうか確認はしていないが、大手だけに気になるところである。

 一連の偽アンチスパイウェア購入トラブルの相談のほとんどが、購入契約を解除したいというものばかりで、「パソコンにインストールされた偽アンチスパイウェアソフトをアンインストールする方法を教えてください」というものはほとんどなかった。

 偽アンチスパイウェアソフトになかには、ご丁寧にアンインストール・プログラムがあり,それを実行してパソコンを再起動すればよいというものもあった。ソフト自体にはさほど大きな影響を与えるプログラムは含まれていないということであった。

 さて、最近、この手の偽ソフトウェア購入に関するトラブル相談は減ってきた。というよりも、まったく来なくなった。トラブルに遭う人が少なくなったのだろうか。

 いや、そうではない。。

 昨年から流行し、普及してきている動画系サイトに、偽アンチスパイウェア購入へ誘導するポップアップ広告が仕組まれている。動画を求めて海外サイトを歩き回る日本人のために、日本語のページを開設しているところもある。「おっ、ここは日本語で書かれている」ということで安心した隙を狙ってポップアップ広告を仕掛けるのである。私も1度お目にかかった。

 けっして偽アンチスパイウェアのトラブルが少なくなってきたわけではない。その名のとおり、あなたの身近なところで、あなたに分からないようにして忍び寄ってきているのかもしれない。

 被害に遭いそうな方、被害にあった方、ぜひご相談を。誰かに話すことで少しは楽になることもありますよ。

マイスクラップ 印刷用ページ メール転送する
40
あなたも評価に参加してみませんか? 市民記者になると10点評価ができます!
※評価結果は定期的に反映されます。
評価する

この記事に一言

more
(まだコメントはありません)
タイトル
コメント

オーマイ・アンケート

あなたは本をどのように入手していますか?
笹井 健次
インターネットにて購入している。
実際の本屋の店舗で購入している。
図書館などの施設で借りている。
家族や知人から借りている。
その他。
本は読まない。

empro

empro は OhmyNews 編集部発の実験メディアプロジェクトです
»empro とは?

活躍中

more