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特集ワイド:愚問ですが 東京地検特捜部と西松事件 「ヤメ検」郷原信郎さんに聞く(4/4ページ)

   ■

 --民主党の有識者会議のメンバーですが、もしかして民主党の支持者ですか。

 郷原さん 私が検察の捜査に批判的な意見を述べたことが、結果的に小沢代表に有利に働いて「小沢擁護論者」と思われているふしがあります。しかし、これは的外れです。現職の検事のころから、私は談合構造の問題と、それを背景にした政治と受注業者の癒着を徹底的に捜査してきた人間です。その立場から、ゼネコンから多額の政治献金を受けていた小沢さんの政治手法は個人的には支持しません。政治的にはニュートラルです。検察捜査の批判をしているのはまったく別の問題です。

 --国策捜査はあるのですか。

 郷原さん ある政党が望む一定の方向の捜査を検察が行うことを「国策捜査」と言うならば、それはありません。しかし、誤った捜査が結果的に大きな政治的影響を及ぼしてしまうことはありえます。

 --つかぬことをお聞きしますが、検察官の仕事は楽しかったですか。

 郷原さん 検事という仕事にめぐり合ったことの幸せを、長崎地検の次席検事として自民党長崎県連違法献金事件(02年)の捜査を指揮した時に実感しました。後輩にもそれを実感してほしいのですが、西松事件の捜査の現場はまったく逆だと想像します。捜査の方向性に確信が持てず、達成感も使命感もない。逆に社会からは批判を受けるという大変な状況だと思います。今の東京地検特捜部は、太平洋戦争中にガダルカナル島の山中をさまよった日本兵と同じような状態だと思います。一日でも早く今回の捜査を終結させ、反省や総括をして、特捜検察の再生を目指してもらいたいと思います。

 --恐縮ですが、幸せだった検事をなぜ辞めたのですか。

 郷原さん 経験を生かす場が検察の中にはないと思ったことが大きな原因です。そこで、検察で得た知識や経験を別の分野に活用したいと考えたのです。

 --愚かな質問ばかりで失礼しました。

   ◇

 「愚問ですが」は旬の話題について、渦中の人やその道のプロフェッショナルに話を聞きます。分かりやすさが身上の新シリーズ(随時掲載)にご期待ください。

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 ■東京地検特捜部が手掛けた主な事件

立件時期 容疑者・被告(肩書は当時)  容疑・罪名

 76年 田中角栄前首相        外為法違反

     (ロッキード事件)

 89年 江副浩正・リクルート前会長  NTT法違反

     (リクルート事件)

 93年 金丸信・自民党前副総裁    所得税法違反

     (東京佐川急便事件)

 94年 中村喜四郎・前建設相     あっせん収賄

     (ゼネコン汚職)

 97年 酒巻英雄・野村証券元社長   証券取引法違反など

     (野村証券利益供与事件)

 01年 村上正邦・元労相       受託収賄

     (KSD事件)

 02年 鈴木宗男・衆院議員      あっせん収賄

 04年 村岡兼造・元官房長官     政治資金規正法違反

     (日歯連事件)

 06年 堀江貴文・ライブドア社長   証券取引法違反

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 ■人物略歴

 ◇ごうはら・のぶお

 1955年生まれ。東京大理学部卒。83年検事任官。東京地検特捜部検事、長崎地検次席検事などを経て今年4月から現職。著書に「思考停止社会」(講談社現代新書)など。

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毎日新聞 2009年4月20日 東京夕刊

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