各界に大きな影響を与えている西松建設による違法献金事件。では、検察の組織、政治資金規正法、国策捜査とは何なのか。ごくごく基本的なことも含め、かつて東京地検特捜部で捜査したことのある「ヤメ検」、名城大学教授で弁護士の郷原信郎さんに遠慮なく聞いた。【中山裕司】
--愚問かもしれませんが検事は官僚なのでしょうか。
郷原さん 検察庁は法務省に属する行政機関で、広い意味で政府の一員であることは間違いありません。一方で検察庁は捜査や訴追などの司法的権限を法務省から独立して行使できる独立機関です。
--行政機関なのですね。
郷原さん 日本の検察は「厳正中立」「不偏不党」を極端に強調します。しかも、そこでの「正義」は検察内部で完結するものです。行政組織の一翼でありながら、外部と遮断された聖域みたいに扱われています。
--政府が検察の捜査にかかわることはありますか。
郷原さん 外国での捜査共助では、政府の外交ルートで捜査を依頼する例はあります。また、捜査で行政庁に重大な影響がある場合は事前に告知することは否定できませんが、仮に政府が「この人を捜査しろ」といっても、指示に従うことはありません。
--公正中立性はどのようにして担保するのでしょうか。
郷原さん 重大な事件であれば、最高検を頂点とするラインで慎重に判断するのが通例です。政治資金規正法違反や政治家の汚職などは権限の行使が大きな政治的影響を及ぼすので、公正中立の観点から客観的にチェックする必要があります。
毎日新聞 2009年4月20日 東京夕刊