昨年秋の米証券大手、リーマン・ブラザーズの破綻以後の金融危機と世界同時不況の影響で、大型増資に踏み切る企業が相次いでいる。自己資本の充実に向けた動きで国際的な自己資本比率規制がある金融機関だけでなく、東芝など大手企業も検討に入った。
新株発行を伴う増資は株価下落の要因ともなるため、既存株主の反発を招く可能性もある。だが、今年3月期決算が赤字になる企業にとって増資は生き残りをかけた最終手段である。
東芝は平成21年3月期業績が3500億円もの最終赤字に陥ることから、自己資本が初めて10%を切る水準となり、資本増強が不可欠と判断し、5000億円規模の増資を検討している。普通株による公募増資で約3000億円を調達するほか、銀行など金融機関に対し2000億円規模の劣後債引き受けを要請する方向だ。早ければ6月にも実施する。東芝が公募増資を行うのは、昭和56年以来28年ぶりだ。
今後、政府の産業活力再生特別措置法(産活法)の改正で、一般企業への公的資金投入が可能になる見通しだが、この制度の活用についても「あらゆる手段を考えていて(選択肢として)排除しない」(村岡富美雄専務)としている。
このほか、製造業では、価格下落により急速に業績が悪化した半導体業界で、国内2位のルネサステクノロジが親会社の日立製作所と三菱電機を引受先に約540億円の増資を実施。また、DRAM市場世界3位のエルピーダメモリも、取引先5社を引受先とする第三者割当増資で約460億円を調達するなど、業績悪化に伴う財務基盤強化に向けた動きが目立っている。
株主から預かった資金である自己資本の減少は、企業の格付け引き下げにもつながり、社債発行など今後の資金調達にも影響を及ぼす。自己資本がマイナスとなった場合は、債務超過となり企業の存続そのものが危うくなる。
電機業界では、日立製作所も昨年12月末時点の自己資本が同3月期に比べ約4500億円減るなど自己資本の傷みが進んでいる。今後の決算発表と前後して、増資など資本増強に向けた動きが本格化しかねない。
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