再生医療への応用が期待される人工多能性幹細胞(iPS細胞)の基礎研究などを担う実験動物中央研究所(実中研、文部科学省所管)が、現在の川崎市宮前区から川崎区殿町三丁目地区に移転する方針を固めたことが十六日分かった。移転先は「神奈川口構想」予定地。ライフサイエンス分野の集積を目指す川崎臨海部に、中核となる公的機関が立地することになる。
移転先は再拡張・国際化を控えた羽田空港との連絡道路予定地に近接する地区。市は二〇一〇年度から先行区域の基盤整備事業に着手する。文科省は「数年後には新たな研究所を完成させたい」(学術機関課)としている。
実中研は一九六二年から、宮前区野川で無菌状態のまま育てた実験用動物を生産。慶応大や京都大、理化学研究所などに供給し、共同でiPS細胞の基礎研究を続けてきた。一方で、周辺の宅地化が進んだことなどから移転構想が浮上していた。
空港隣接地への移転により、最新の研究開発機器を導入して技術確立に向けた研究を加速させるほか、国内外の研究者の交流促進も目指す。市は将来は再生医療に関連する研究室の立ち上げや、創薬などの先端産業の進出を期待している。
川崎臨海部では市が中心となり、ライフサイエンスをはじめ環境やエネルギー分野の研究機関や先端産業の集積を進めている。殿町三丁目地区には、既に産学官と民間が連携する環境総合研究所や健康安全研究センター(仮称)の整備が決まっている。
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