常習的な大分県教員採用試験汚職の膿を出せるか?

「常習虚偽有印公文書作成罪」を、新設するべきだ

谷口 滝也(2008-07-14 17:00)
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 2008年7月9日の中日新聞夕刊では、大分県の小学校教員採用をめぐる汚職事件で逮捕(収賄の疑い)された大分県教育委員会元参事が、2007年度と08年度に採用する中学校の教員試験で、上司の指示で一部の受験者に加点していたと報じている。

 そして、中学関係では、「加点した受験者数は覚えていない」、中学関係では、「見返りの金品は一切受け取っていない」という奇妙な発言をしたとも報じている。

 とき、エリートとして積極的に、または、あるときは、手下として自分の手を汚していたという事だろうか?

 今回の事件は、多くのマスコミの報じているような単なる贈収賄事件として片付けてしまって、本当によいのだろうか?

 私としては、今回のような悪質な例は氷山の一角だと思う。刑法改正で新しい条文と罪名まで付け加えるべきだと思う。

 大分県の教育審議監、校長、教頭、元参事など、どこまで関係者の闇は深いのだろうか。

 今のマスコミは忘れていて報じていないが、1991年(平成3年)ごろにも、教員採用、それから教員異動をめぐる汚職事件が国会で質問されていた。

 当時、徳島県教育長の有罪判決があったり、徳山教育事務所長や、元山口県教育委員会教職員課長補佐らが逮捕される事件があった。

 1991年2月22日、国会の衆議院、文教委員会で、山原健二郎議員は、当時、こう発言している。

 「徳島の事件でも山口の事件でも、試験結果の集計書類を改ざんして依頼者の成績のかさ上げをしたり、あるいは選考に携わるのはわずかな者だけで、公正さを確保するためのチェック機能も働くようになっていないという点が指摘されています。それからまた、徳島の場合は、議員など依頼者に対し、試験結果を事前に通知する慣行がまかり通り、情実、不正をはびこらせる要因の1つとなっていました」(国会会議録より引用)

 事件の裁判過程では、刑法の虚偽有印公文書作成・同行使(1年以上10年以下の懲役)についても、元参事は問われる可能性があると思う。むしろ、問われないとおかしい(虚偽の採用試験合格名簿提出や、試験結果のデータ改ざん、虚偽の公文書の作成にもかかわったからだ)。

 補足すると、現在の日本では、点数を改ざんして30人以上の善良な受験生を不合格に追い込んでも、虚偽有印公文書作成罪は、常習性や被害人数に比例しているような形にはなっていない。

 例えば、刑法185条の賭博罪と、刑法186条の常習賭博罪では罪の重さが全然違うが、そのようにはなっていないのだ。

 私は、受験生の無念な気持ちは、試験のやり直しの可能性が出てきたという明るい材料や、大分県教育委員会の再発防止策だけでは足りないと思う。

 教員採用試験などの公務員採用試験で、数年に渡る常習的な点数改ざんがあった以上は、多くの受験生を奈落の底に落としたエリートの犯罪常習性が厳しく問われないといけないと思う。

 小泉前総理は、「格差は、どんな時代の、どんな場所にでもある」と言っていたが、今の日本には、格差を助長する不正が多くの場所にまだ残っているのではないだろうか。

 非常勤扱いの教員の人が、正規採用を目指して毎年受験を続けているのは、逮捕された人間も知っていた。

 日本の不正採用の膿が、全部出たとは、とても思えない。私は、日本の刑法に、「常習虚偽有印公文書作成罪」を、新設して、「3年以上10年以下の懲役に、500万以下の罰金を併科(両方)」するというぐらいに、法律を根本から考え直すべきだと思う。

 過去の不正採用事件では、判決で執行猶予がついた場合もあった。今回の事件は、ほかの県にも無関係ではないと思う。組織の上層部に、悪がはびこっていてはいけない。
 
■関連リンク
大分県教育委員会、教育委員会職員等の逮捕に係る教育長コメント


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