大麻:種子購入動機、「観賞のみ」ゼロ 依存症患者調査

2009年4月20日 15時0分 更新:4月20日 15時11分

 広がる大麻汚染の一因とされる「観賞用」名目の種子販売を巡り国立精神・神経センター(東京都小平市)が、薬物依存症の民間リハビリ施設の利用者にアンケートをしたところ、観賞目的で種を購入した人はほとんどいないことが分かった。栽培して吸うために種を買った人が大半で、販売側の名目と購入実態がかけ離れていることが初めて裏付けられた。種の所持は大麻取締法の規制対象外。販売は事実上野放しとなっており、国は新たな対応を迫られそうだ。

 調査は、同センター薬物依存研究部が08年11~12月、薬物依存症の患者が入・通所する「ダルク」など全国49施設を対象に無記名で実施。42施設の計408人から回答があった。

 大麻種子の入手経験があると答えたのは159人(39.0%)。このうち95人(59.7%)が入手目的を「大麻の栽培」とし、さらにそのうちの87人(91.6%)が栽培の動機を「大麻を吸うため」と回答した。

 入手経験者に入手方法(複数回答)を尋ねたところインターネットや専門店で買った人が71人(44.7%)、知人などからもらった人が86人(54.1%)だった。

 種の購入者71人に限定すると買った目的(複数回答)は「栽培」が53人(74.6%)で最も多く、「観賞」は2人(2.8%)。このほか「食材にする」12人(16.9%)▽「人にあげる」6人(8.5%)▽「人に売る」5人(7.0%)。「観賞」と答えた2人はいずれも栽培と食材の目的もあったと回答しており、観賞目的だけで種を購入した人はいないことになる。

 警察庁によると、08年に大麻取締法違反で検挙されたのは前年比507人増の2778人で、統計を取り始めた56年以降で最多。同法は種段階の所持は規制していないが、都道府県の免許を受けた業者以外が栽培すると違法となる。栽培による検挙も210人(前年比83人増)と大幅に増えた。

 インターネット上には観賞目的で種を売る業者のサイトが相次いで開設されているが「業者数など正確な実態はつかめない」(厚生労働省監視指導・麻薬対策課)のが現状だ。販売業者を同法違反のほう助容疑で摘発するケースも出てきているが、種は七味唐辛子の原料などに使われるため、厚労省も「法改正で所持自体を処罰対象にするのは難しい」としている。

 調査を担当した薬物依存研究部の嶋根卓也研究員は「観賞名目に実態がないことが判明したことで、捜査機関などはあらゆる法律を駆使して業者に対応すべきだろう」と話している。【江刺正嘉】

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