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more楽:東京の役者が挑む上方歌舞伎 波乱の物語、派手に演出

 上方で育ってきた上方歌舞伎は近年、上演される演目も回数も少なくなっている。しかしその面白さに東京の歌舞伎役者たちが着目して上演を続けている。上方歌舞伎の面白さを紹介しよう。【宮辻政夫】

 上方歌舞伎の特徴は(1)様式的な江戸歌舞伎に対し、作風も演技も写実的、合理的(2)ストーリー性がある(3)お家騒動ものが多い(4)観客へのサービス精神にあふれる--など。

 上方歌舞伎を手がけてきた東京の役者では(故人を除き)市川猿之助さん、中村勘三郎さんらが著名。近年、上方歌舞伎への傾倒が目立つのは、市川染五郎さんと中村橋之助さんだ。染五郎さんは「怪談敷島譚(かいだんしきしまものがたり)」を01年、大阪松竹座で33年ぶりに上演。これは河竹黙阿弥原作で元来は江戸歌舞伎だが、3役早変わりという上方式演出を踏襲した。また04年には国立劇場で「花雪恋手鑑(はなふぶきこいのてかがみ)(通称『乳貰(ちちもら)い』)」という純上方歌舞伎を上演した。松竹関西演劇部所蔵の古い歌舞伎脚本にも多く目を通すなど勉強も怠りない。

 橋之助さんも負けてはいない。京都・南座で「小笠原騒動」(99年)を猿之助さん以来22年ぶりに上演。さらに「鏡山縁勇絵(かがみやまゆかりのおとこえ)」(00年)は107年ぶりに、「霧太郎天狗酒〓(きりたろうてんぐのさかもり)」(07年)は111年ぶりに、それぞれ復活させた。どれも上方歌舞伎の傑作である。

 さらに5月3~26日、南座で「小笠原騒動」(奈河彰輔さん補綴(ほてい)・演出)を再演する。九州の小笠原豊前守(中村勘太郎さん)のお家乗っ取りを謀る犬神兵部(橋之助さん)とお大の方(中村七之助さん)。対抗する小笠原隼人(片岡愛之助さん)。貧苦のためいったんは陰謀に加担するが改心する岡田良助(橋之助さん)、良助を妻(七之助さん)のかたきと狙う小平次(勘太郎さん)らが絡む。白狐(しろぎつね)の化身菊平(愛之助さん)も加わって波乱に富むストーリー。

 花形4人がそれぞれ2役を演じるのも見どころ。また水車小屋で、良助と小平次がずぶぬれになって大立ち回りを見せる。良助の家族への愛、改心のドラマも見応えがある。

 橋之助さんは上方歌舞伎について「遠い存在じゃない。人間の皮膚のにおいがする。(松竹関西演劇部の)多くの台本を見て『上演されない狂言はつまらない』というのはウソだと思った。やってみたい作品はまだいっぱいある。(関西在住の)愛之助さんらともやっていきたい」と意欲を燃やす。愛之助さんは「出たいと思っていたので、ありがたい」。奈河さんは「若い役者の方々が上方歌舞伎に興味を持ってくださるのは、まことに結構なこと」と期待している。

 チケットホン松竹(0570・000・489)

毎日新聞 2009年4月18日 東京朝刊

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