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- ▼-「病室」 [金富隆 WEB多事争論編集委員] (02/16 10:19)
- ├Re:「病室」 [T.Z.] (03/23 02:45)
- │└Re[2]:「病室」 [T.Z.] (03/23 03:16)
- └Re:「病室」 [不惑] (04/17 22:49)
[1] 「病室」
- 投稿者
- 金富隆 WEB多事争論編集委員
- 投稿日
- 02/16 10:19
その病室は短い廊下を抜けた奥にあった。鹿児島の病院、５階病棟。
部屋の主は緩やかな午睡を楽しんでいたように見えたが、私たちの姿に
気づくと、いつもの人懐っこい笑顔を見せた。
おお、久しぶり。
病身を押して少しだけベッドから身体を起こす。それはわずかな動作だった。だがこのとき、全身は深くガンに蝕まれていたことを考えると、それ自体が
「筑紫哲也」であることへの矜持だったようにも思える。“客を前にして横に
なっているわけにはいかない”。胸の奥に秘めた矜持。このとき家族に告げられた余命から二ヶ月が過ぎていた。
最後の夏、筑紫さんが選んだのは南国・鹿児島での転地療養。増殖を続ける
ガン細胞と戦うため、放射線療法の権威を頼ってのことだった。
８月下旬のその日、窓の外では蝉の音が響いていた。広く浸潤した肺ガンの
影響から声はしわがれ、話すのも時折つらそうだったが、それでもジョークを
飛ばす姿は筑紫哲也そのものだった。
いまテレビは何を見ているのですか？ …「篤姫」だけだね（笑）。
ここが鹿児島だってせいもあるけれど。あれはなかなか良くできてる。
でもホント、ニュースなんて見なくなったなあ。鹿児島に来て、ニュースを
見ないことが精神衛生上どれだけ良いか、初めて分かったね（笑）。
ここで連日行われていたのは、肺ガンに効果ありという放射線療法。ピンポイントでガン細胞を叩くことができ、筑紫さんはこれに最後の望みをかけていた。
だが自ら選んだ治療であっても、放射線が負担にならないはずはない。後で知ったことだが、間断なく襲う痛みに医師はこの後、緩和ケアを薦めたという。
「自分は治療を受けに来たのであって、緩和が目的ではありませんから」。
ご家族によると、ぎりぎりの時まで筑紫さんは病と闘う姿勢を見せ続けていた。
だが一方で、病室には不思議な明るさがあった。ご家族の笑いさざめき。
…おい、君は最近どうしてるんだ？
見舞いの私たちにも供される、さりげない気遣い。それは筑紫哲也というひとが持つ、本質的な明るさではなかったかと思う。
病室は建物の奥に位置したが、一般病室の並びにあり、すぐ前の廊下は他の患者さんや見舞い客が行き交っていた。
「筑紫哲也」がそこにいるとは誰も気づかない様子で、それがなんだかおかしかった。ご本人も酸素ボンベをごろごろ引っ張りながら普通に廊下を歩いていたようだし、元々そういうことに頓着する方でもなかった。
気づかれてないんですか？ …まあ、今のところはね（笑）。
言葉には悪戯っ子のようなトーンがにじんでいた。変わらないものはもうひとつ。ニュースなんて見ない。そう言い切っていても、何気ない雑談の向かう先は、やはりニュースだった。
…オバマが勝つかどうか。ぼくは微妙だと思うね。情勢は分かってるし、
可能性は高いと思うけど、さあその通りに行くかどうか。
最後の最後まで分からないよ。アフガン攻撃、イラク戦争。アメリカ人は
自分の国が犯した間違いに気づき始めているし、そこは望みではあるけれど。
…でもアメリカ人は超えられるかなあ、レイシズムを。最後はそこのところが、
分かれ目になるんだと思うね。
見ない、興味は無いなんて口では言いつつも、ニュースへの興味はベッドの上で持ち続けていたのだと思う。森羅万象への関心は、最後まで尽きることはなかった。羅針盤の無いこの混沌とした時代、どんな発言をされたのだろうと思うことがある。筑紫さんが亡くなったのは、この二ヵ月後のことだった。
[22] Re:「病室」
- 投稿者
- T.Z.
- 投稿日
- 03/23 02:45
筑紫さんの闘病の様子を伝えて頂いて有難うございます。
最期まで、らしさを失わずにいたんだと思うと、嬉しいやら寂しいやら、いまだに涙ぐんでしまいます。
私は、どこか遠慮があって、ちゃんと闘病中の筑紫さんとお話をせずにお別れを迎えてしまいました。その後悔の気持ちが、最期の様子を近しい人から伝え聞くことで、ちょっとずつ氷解していくような感じです。
筑紫さんが最期まで気にしていたという大統領選挙。
幸運にも、取材に行かせてもらうことができました。渡米前に、もう筑紫さんの容態がよくないと聞いていたので、どうか大統領選が終わるまで待っていて！
[23] Re[2]:「病室」
- 投稿者
- T.Z.
- 投稿日
- 03/23 03:16
（間違って途中で投稿ボタンを押してしまったので、続けます）
筑紫さんが最期まで気にしていたという大統領選挙。
幸運にも、取材に行かせてもらうことができました。渡米前に、もう筑紫さんの容態がよくないと聞いていたので、どうか大統領選が終わるまで待っていて！と祈るような気持ちで出張に出かけたのを覚えています。
オバマの当選で、アメリカがイラク戦争以来の間違いの積み重ねから、ようやく方向転換するんだ、世界はかろうじて希望をつなぐことができたんだ！と高揚した気持ちを筑紫さんに伝えようと帰国した、その空港からの帰り道に筑紫さんの訃報を伝え聞くことになってしまうとは・・・。
あの大統領選挙から、そして筑紫さんとのお別れからはや４ヵ月半。オバマ政権の動向やアメリカ経済のニュースが入るたび、筑紫さんだったら何と言うかな、何を語るかな、と思いながら伝えています。
・・・筑紫さんから学びたかったこと、筑紫さんと共有したかったことは、まだまだ際限なくある気がしています。このweb多事争論の「場」で、そんな思いを少しでも「消化」していきたいです。
[127] Re:「病室」
- 投稿者
- 不惑 E-MAIL
- 投稿日
- 04/17 22:49
金さんは お名前からして 韓国系 中国系 台湾系のいずれかかなと 推測されます
この文章からあなたがレイシズムに、嫌悪感を持っておられるのも、推測されます
そういう金さんにお聞きしますが、韓国人が日本人に持つレイシズムにどう思われますか？
私の知る所では、彼らは日本人に対して相当な人種的差別感を抱いてる様に感じますが？
日本文化の全てのルーツは朝鮮半島と言う主張など その際たる物だと 思うのですが？
ご意見期待しております」