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[33] “正しい戦争”って?

投稿者
JNNワシントン支局 井上波
投稿日
2009/3/25 10:34

イラク戦争が始まってから、3月20日で6年が経った。

21日の土曜日、ワシントンで行われた反戦集会。
会場となった広場に行ってみると、芝生の青が妙に目だっていた。
参加者は、ざっと見渡しておよそ1000~1500人といったところだろうか。
2年前に同じ場所で行われた集会には、1万人以上集まっていたという。
確かに集まっている顔ぶれを見渡すと、以前よく見かけた
“反戦デモに参加しなさそうな家族連れ”の姿はあまりない。

公約通り、イラクからの撤退を決めたオバマ大統領。
世論調査ではアメリカ国民の6割以上がその政策を支持している。
そして次なる主戦場となったアフガニスタンには、
とりあえず17,000人が増派されることが決まっている。

「イラク戦争は間違いだった」とオバマは言う。
「本来戦うべき場所はアフガニスタンだったのだ」と、
まるでアフガニスタンでの戦争は“正しい”かのように言う。
そして、大統領の言葉に疑問を差し挟む空気が、今のアメリカには無い。
メディアでもあまり論じられていない。
アメリカ人の友人に「何でアフガン戦争は正しいの?」と投げかけてみたら、
「9・11を起こしたアルカイダをタリバンがかくまっていたから」とお決まりの答えが返ってきた。

でもちょっと待てよ・・・確かにタリバンは映画や音楽を禁止したり、
女性に教育を受ける機会を与えなかったり、公開処刑をしたり、
我々の常識では考えられないことをたくさんやっていた。
アルカイダに“safe haven=安全な隠れ家”を提供したことも事実だろう。
ただ、彼らはアルカイダとは別の組織だし、ましてや同時多発テロの実行犯ではない。
コラムニストのファリード・ザカリア氏は最近のニューズウィークに
「アフガニスタンのタリバンンは、この10年国際的なテロ活動に積極的に関わったことは無い」と書いていた。
我々はタリバンのこと、アフガニスタンのことをちゃんと知っているのだろうか。

でも今のアメリカ人の多くは、そんなことには耳を貸さない。
オバマ大統領が好き=彼のやることは正しい・・・その素直さと言うか、単純さが恐ろしく思えてならない。実際にその戦争で犠牲になる人の多くは、何の罪も無い市民なのに・・・。

イラクを“正しい戦争”だと言うブッシュと、
アフガンが“正しい戦争”であるかのように言うオバマ。
実はそんなに変わらないのかもしれない。

そもそも“正しい戦争”なんてあるのだろうか?

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