特派員・記者からの多事争論

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[69] 銀河鉄道の朝。

投稿者
28歳 情報番組ディレクター
投稿日
2009/4/6 19:47

4月6日 19:00
飛びました、ミサイル。
なんのことはない、北朝鮮の予告通り、日本のはるか上空を越え。


私は、その時、
岩手県のT村に、いた。
通過ルートとは、少しずれていたので、私の頭上をミサイルが横切った、というのはおおげさかもしれないが。

そして、新幹線「はやて」に乗って、ようやく東京に戻り、
原稿をかき、徹夜で編集し、放送に臨む。
じっくりと考える余裕は、正直、ない。


迎撃システムのある岩手県T村の役場の取材、というのが私に与えられた任務。
T村には、テレビ局・新聞局の記者が詰めかけていた。

村に突然やってきた“有事”。
国から「PAC-3」なるミサイルを配備され、
大勢のマスコミが詰めかけ、
資金不足・人手不足のなか、24時間体勢で警戒体制をとり、
「村を守る」という使命にもえていた役場。

そんな空気を、少しでも放送に反映させることができたのか。
否。

カメラマンの撮った映像は、全国に流れた。
しかし、それは、
数多くの番組が、カメラを出していたうちの、ひとつの自治体の映像にしか過ぎない。

ご覧の通り、多く流れるのは、発射直後の混乱ぶりが、より“派手”な自治体の様子・・・

「誤報だって!誤報!!」強く叫ぶ女性。
編集される時に、選ばれる映像は、そんな映像だから。

T村の“有事”を待ちくたびれた、初日のぐったりした様子や、
入学式のさなか、ひとり中学校の職員室で発射の情報におびえている用務員の姿や、
スピーカーから流れる緊急放送に耳をかたむけることなくサッカーする少年たちの姿や、
役場の職員が落ち着いて手順を踏む様子は、あまり“テレビ的”ではなかったのだ。

某キー局の討論番組では、
「ハリネズミみたいに国を守らないといけないときに、雇用だ、福祉だと、予算を割いて、国防そっちのけというのは、いかがなものか」と、
声高に議論されていた。

そんなほうが、“テレビ的”なんだろうか。

ミサイルは、飛んだ。
「ほんとうの幸せ」を探しているカンパネルラとジョバンニが、
無事なことを祈る。

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