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実況見聞

【実況見聞】

お産満足度 向上作戦

2009年04月20日

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会席料理の焼きタケノコを味わう人たち。香ばしいにおいが漂った=香芝市真美ケ丘1丁目の林産婦人科五位堂医院

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気持ちよく過ごせる空間を大事にしたという、きよ女性クリニック。庭やテラスもあり、開放感が味わえる=奈良市石木町

 会席料理のフルコースやエステティック、デザインに凝った室内やゲストハウス――。ホテルの話でなく、産婦人科の取り組みだ。少子化に歯止めがかからないなか、妊婦により高い満足度を感じてもらおうと、民間診療所が様々な工夫を凝らしている。(土居新平)

 ◇医院で会席料理

 出産後間もないお母さんたちの前に、次々と会席料理が運ばれてきた。目玉は旬の朝掘りの焼きタケノコ。香ばしいゴマしょうゆのにおいにお母さんたちの表情が緩んだ。

 林産婦人科五位堂医院(香芝市真美ケ丘1丁目)が大阪市中央区の和食割烹(かっぽう)「淺井 東迎(とうげい)」の料理を出し始めたのは昨年6月。突き出しからお造り、デザートまで8品、店と同じ味が楽しめる。店主の東迎高清さんは「感動を与えられるように気を使っています」と話す。

 医院ではイタリア料理も提供し、4日間ほどの入院期間中にどちらかが味わえる。料理代は平均約45万円の出産費用に含まれる。「産婦人科は医療をしっかりした上でのサービス業。ホテルに泊まりに来ているような気持ちになってほしい」と医院の林穣太郎事務長。

 医院の15部屋はすべて個室、和室は畳10畳ほどの広さで、洋室にはシャンデリアもある。各室にトイレ、シャワーが付き、家族が泊まることもできて好評という。

 ◎開放感ある空間

 きよ女性クリニック(奈良市石木町)の木を組み合わせたデザインの建物は一見、産婦人科には見えない。京都市のデザイナーが手がけ、高い天井や庭、テラスは開放感がいっぱいだ。壁には、産後に訪れた人たちの笑顔の記念写真を何十枚も飾る。

 一昨年と昨年には患者や家族ら150人を招待したプロのギタリストらによるコンサートを開いた。奈良市大柳生町にはゲストハウスもあり、妊婦が学ぶ母親学級を開いている。

 クリニックでお産はしておらず、出産の際は県内の診療所を紹介し、清塚康彦院長が出向いてお産を担う。清塚院長が大切にするのは「空間と人」。「不安を抱えて訪れる人を笑顔で迎え、身内のような安心感を持ってもらうことが一番。物質的なサービスより、人と人とのきずなを大切にしている」と話す。

 ◎産後癒やすエステ

 照明を落としたはら産婦人科(生駒市東生駒1丁目)の一室。オレンジのアロマの香りが漂い、静かな音楽が流れた。長女の出産を終えて4日目の同市俵口町の石井あゆみさん(40)がベッドに横になると、エステティシャンが目やこめかみ、足、背中から肩にかけてゆっくりとほぐしていった。約40分のエステが終わると「すごく気持ちよかったー。頑張ったご褒美ですね」と石井さん。

 はら産婦人科は、前身の診療所に続いて産後のエステを採り入れた。土肥裕子院長は「お産が終わって疲れているから、幸せなひとときをつくってあげたい」と話す。

 エステを担うのは院内エステサービス会社「ヴィサージュ」(王寺町王寺)。県内4カ所の産婦人科にプロのエステティシャンを派遣している。代表の川内町子さんによると、ここ数年で一気に広まった。カウンセリングも学び、母親の気持ちも和らげるよう心がけているという。

 【キーワード】・県内の少子化

 県少子化対策室によると、県内の女性1人が一生のうちに産む子供の数を示す合計特殊出生率は1・22(07年)。全国平均1・34を下回り、全国で下から4番目。20代後半の女性の非婚率が63・5%に上るなど晩婚化が背景の一つにある。県地域医療連携課によると、県内で出産を担っている病院は9カ所、診療所は19カ所。少子化が進み、産科医の確保が難しくなったこともあり、病院は05年から7カ所も減った。

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