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社説:小沢代表 党首討論から逃げるな

 自民党が麻生太郎首相と小沢一郎民主党代表との党首討論開催を再三求めているのに対し、民主党が拒み続けている。

 公設第1秘書の政治資金規正法違反事件で小沢氏は逃げ腰になっていると国民に印象づける狙いが自民党にはあるのだろう。だが、実際に狙い通りの状況になっていないか。小沢氏が続投し、「首相候補」として衆院選を戦うというのなら、党首討論から逃げてはならない。

 元々、小沢氏は党首討論に熱心ではない。麻生首相と小沢氏の討論は昨秋の臨時国会で1度行われただけだ。通常国会での最初の党首討論は昨年は4月9日、一昨年は5月16日だったから、今年が特に遅れているわけではないと見ることもできる。今回も党首討論は連休後に先送りして、小沢氏は週明けから地方行脚を再開するという。

 しかし、「政治家主導の政治を」と英国にならった党首討論の実現を提案したのは、自由党党首だった当時の小沢氏本人である。

 小沢氏は次の衆院選で民主党が勝てば代表の自分が首相になると言っている。首相になれば党首討論だけでなく予算委員会などに連日臨むことになる。国会という表舞台での討論に消極的な小沢氏が果たして国民にきちんとメッセージを発信することができるだろうか。不安になる。

 献金事件について小沢氏は「違法性はない」と繰り返し、東京地検特捜部の捜査は小沢氏をねらい撃ちにする政治的意図があると考えているようだ。一方で企業・団体献金の全面禁止にも言及している。

 ならば討論で麻生首相と政治献金のあり方も含めて堂々と渡り合えばよい。それを避けるのは、やはり事件の話は取り上げられたくないのだろうと見られても仕方がない。

 大事なのは政治とカネの問題だけではない。与党と野党の代表同士による党首討論は次期衆院選の争点を国民の前に明確にする場となる。毎週開いてもいいほどなのだ。

 自民党は05年の衆院選後、国民の信を問うことなく次々と首相を交代させ、なし崩しに方針転換をしてきた。今回も自民党内では衆院解散の前に大型補正予算案を成立させるべきだとの声が強まっている。

 民主党は「巨額の財政支出と借金を伴う補正予算案を組むのなら、なおさら国民に信を問うべきだ」と早期解散を求めるのが当然で、党首討論はそれを首相に迫る格好の場ともなるはずだ。ところが、そうした声も党内では大きくならない。

 守勢に回っているのは小沢氏の進退問題がネックになっているからだろう。代表続投がプラスになっていないのは既に明らかではないか。

毎日新聞 2009年4月20日 東京朝刊

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