2009/04/14(火)
1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 21:34:36.06 ID:ldXTiZAH0
蒼星石「今日こそは…頂くよ、ローザミスティカ」
翠星石「蒼星石…」
雛苺「お父様に会うのはヒナなの!」
水銀燈「まとめてジャンクにしてあげるわぁ」
・・・・・・
蒼星石「今日こそは…頂くよ、ローザミスティカ」
翠星石「蒼星石…」
雛苺「お父様に会うのはヒナなの!」
水銀燈「まとめてジャンクにしてあげるわぁ」
・・・・・・
7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 21:44:29.03 ID:ldXTiZAH0
「…ン…ジュ…」
「ジュン!」
ジュン「はっ…」
小さな手で体を揺さぶられジュンはゆっくりと瞼を開いた
雛苺「ジュン! ジュン!」
ジュン「…なんだよ」
雛苺「だって、ジュンがうなされてたから…」
ジュン「うなされてた…僕が?」
まだ覚めやらぬ頭で先刻までの夢の内容を反芻する
9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 21:52:15.31 ID:ldXTiZAH0
ジュン(確か…真紅達が戦っていた、いつものアリスゲーム)
ジュン(でも雛苺や真紅達の様子が…)
雛苺「ねぇ、ジュンったら!」
雛苺がジュンの袖を引き、自分の方へ注意を促す
ジュン(夢とはいえあんな好戦的な雛苺は初めてだ)
雛苺「うゆ? どうしたの、ジュン」
ジュン「ん、いや何でもない…」
ジュンは体を起こすと机上にある眼鏡を手に取り階下へと降りていった
11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 22:01:08.08 ID:ldXTiZAH0
翠星石「おはようです、チビ人間」
キッチンで翠星石いつもの調子でお菓子作りに励んでいた
ジュン「あぁ、おはよう(そういえばこいつも夢の中じゃ…)」
翠星石「ん? どうしたですか。翠星石の顔に何かついてるですか?」
ジュンの視線を感じ取り、頬を赤らめながら言葉を投げる翠星石
ジュン「…いや、何でもないよ。そういえば真紅は?」
ジュンの言葉に不満げな顔で答える翠星石
翠星石「…真紅はnのフィールドに行ってるですよ」
13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 22:09:41.78 ID:ldXTiZAH0
ジュン「nのフィールド? なんでまた」
翠星石「なんでって…そんなに真紅の事が気になるですか」
頬を膨らませムッとした顔で答える翠星石
ジュン「何怒ってるんだよ…」
翠星石「怒ってないですよ!」
翠星石は手元にあるスコーンをジュンに投げつけた
ジュン「わっ!? おい、やめろって!」
翠星石「その薔薇の指輪は飾りですか! もうチビ人間の事なんか知らんです!」
キッチンから飛び出すと二階へ向かって駆け出す翠星石
ジュン「何だよ、あいつ…」
自分の手の指輪を見つめるジュン
ジュン「そういえば、この指輪で僕とあいつらの心が繋がってたんだっけ…」
15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 22:17:20.96 ID:ldXTiZAH0
ジュン(あいつらの考えが時々分かる事があったな)
雛苺「ジューン!」
ジュン「雛苺…(こいつの好物が分かった時も指輪のおかげだったな)」
雛苺「翠星石が怒ってたのよ」
ジュン「あぁ、怒ってたな」
雛苺「怒ってたな、じゃないのよ。分かってないの?」
ジュン「何が…?(こういう時に考えが分からないなんて気まぐれな指輪だな)」
雛苺「翠星石はね、ジュンの為にお菓子を作って待ってたのよ」
19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 22:24:05.77 ID:ldXTiZAH0
ジュン「んあ? それが何で怒る理由になるんだ?」
雛苺「はぁ…翠星石は褒めて貰いたかったのよ」
ジュン「褒める? まだお菓子を出されてもいなかったぞ」
雛苺「うゆ? じゃあ何で…」
ジュン「さあな…うっ」
雛苺「ジュン?」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「いつもいつも真紅、真紅ばかり…」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
ジュン(これは…翠星石の心か?)
雛苺「ジュン…?」
20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 22:28:49.02 ID:ldXTiZAH0
ジュン「あぁ、何でもないよ」
雛苺「…そう」
ジュン「何となく怒ってる理由が分かったよ」
雛苺「ホント?」
ジュン「あぁ、ちょっと翠星石の所に行ってくる」
雛苺「みんな仲良しが一番なのよー」
無邪気な笑顔でジュンを見送る雛苺
ジュン(こうやっていつでも考えが分かれば便利なんだけどな)
25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 22:35:40.62 ID:ldXTiZAH0
ゆっくりと二階への階段を登るジュン
ジュン(まったくこんなことで怒るなんて困った奴だ…)
ジュン(さっきだって真紅の事を少し口に出しただけじゃないか)
ジュン(真紅…そういえばnのフィールドに居るって言ってたっけ。一体何しに?)
ジュン(あいつらの考えが分かる指輪…)
ジュン(さっきの夢はまさか…)
ジュン(ははっ、考えすぎか)
二階へ上がり自分の部屋のノブに手をかけるジュン
ジュン「おーい、翠星石」
・・・・・・
32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 22:45:27.29 ID:ldXTiZAH0
夕食時―
のり「今日はみんなの大好きな花丸ハンバーグよー」
雛苺「わーい花丸ハンバーグ大好きなのー」
翠星石「こら! ちゃんとチビ人間がくるまで待つんです!」
雛苺「はーい(翠星石の機嫌がなおってよかったのー)」
ジュン「別に僕を待つ必要は無いぞ」
キッチンへ入り自分の席に着くジュン
翠星石「何言ってるですか! みんなで食べたほうがおいしいに決まってるです!」
真紅「そうね。それに食事は暖かいうちにいただくのが作ってくれた人への礼儀よ」
ジュン「戻ってたのか…真紅」
ジュンが席に着くのを確認するとリビングのソファから自分の席へ向かう真紅
34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 22:49:00.39 ID:ldXTiZAH0
真紅をじっと見つめるジュン。そしてその視線に気づく真紅
真紅「どうしたのジュン?」
ジュン「いや…」
翠星石「…」
真紅を見つめるジュンに苛立ちを隠せない翠星石
のり「みんな揃った事だし、いただきましょうか」
雛苺「はーい」
42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 22:55:54.84 ID:ldXTiZAH0
ジュン「そういえば昼間はnのフィールドに行ってたんだって?」
真紅「え…」
自分へふられた質問に少し戸惑う真紅
真紅「えぇ…nのフィールドに居たわ。でも珍しくないことでしょ?」
ジュン「そうだな…」
真紅「ふふっ、あなたが私の行動に興味を持つなんて珍しいわね」
ジュン「別にそんなんじゃ…」
翠星石「しゃ、喋りながら食べるのは行儀が悪いですぅ!」
少しむくれ顔で言葉を発する翠星石
51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 23:03:49.42 ID:ldXTiZAH0
雛苺「真紅はnのフィールドで何をしてたのー?」
翠星石「チビチビ!」
のり「ふふふ、いいじゃない。お喋りしながらの食事も楽しいわ」
翠星石「…ですぅ」
のりの言葉に渋々うなずく翠星石
真紅「そう…夢を見ていたわ。遠い遠い昔の…」
55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 23:07:53.47 ID:ldXTiZAH0
ジュン「夢…」
真紅「深い眠りに落ちた私は夢の狭間の…」
翠星石「…記憶の扉を開いた、ですか…」
真紅「えぇ…」
のり「真紅ちゃんはどんな夢を見たのかなー?」
雛苺「ヒナも知りたいのー!」
61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 23:12:11.79 ID:ldXTiZAH0
真紅「ふふっそんな楽しい夢ではないわ」
雛苺「うゆ…怖い夢だったの?」
真紅「怖い夢…えぇ怖くて、そしてとても悲しい夢…」
のり「真紅ちゃん…」
翠星石「悲しい夢…ひょっとして真紅は」
ジュン「アリスゲーム…か?」
67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 23:16:53.88 ID:ldXTiZAH0
ガチャンッ!
手に持ったフォークを皿に落とす真紅
三体のドール達の視線はアリスゲームという言葉を発した口に集まっていた
真紅「何故、それを…ジュン」
ジュン「僕も…同じ夢を見たんだ」
翠星石「指輪…ですか」
雛苺「だからジュンもうなされてたのね…」
のり「え? え?」
ただならぬ雰囲気に戸惑うのり
70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 23:22:41.02 ID:ldXTiZAH0
真紅「…」
ジュン「さっき記憶の扉って言ってたよな」
翠星石「それは…」
ジュン「つまり僕の見た夢は昔のお前達ってことか?」
雛苺「ジュ、ジュン…」
ジュン「あのアリスゲームは…夢じゃ」
のり「ジュン君…」
ジュン「あの言葉は…」
真紅「ジュン!」
72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 23:29:18.77 ID:ldXTiZAH0
ジュン「うっ…」
真紅の叫びに気圧されるジュン
真紅「その話は後で話すわ…」
雛苺「真紅…」
ジュン「…ごめん」
翠星石「…」
のり「あらら…あらら…」
そしてドール達とジュンは無言で食事を終え各々の場所へ戻っていった
翠星石と雛苺はリビングへ
のりは後片付けのためキッチンへ
ジュンと真紅は二階のジュンの部屋へ向かった
75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 23:33:59.13 ID:r4FYsFwE0
あらまぁ・・・
76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 23:34:26.59 ID:ldXTiZAH0
真紅「どこから話そうかしら…」
ジュン「…」
真紅「ジュン、あなたも夢を見たといったわね。私に聞かせてくれないかしら?」
ジュン「お前が…アリスゲームを始めましょうって嬉しそうに言ってた」
真紅「…そう」
ジュン「今のお前からは想像できない、信じられない光景だった」
真紅「…」
ジュン「雛苺も翠星石も…」
81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 23:41:20.65 ID:ldXTiZAH0
ジュン「あれは…夢じゃないのか?」
真紅「…残念ながら事実よ」
ジュン「…」
真紅「遠い遠い昔の話だけれど、私はアリスゲームに妄信していたわ」
ジュン「お前が…?」
真紅「えぇ…それは私だけでは無く雛苺も、あの争いを好まない翠星石でさえ…」
ジュン「翠星石も…」
真紅「そう…私達はくる日もくる日もアリスゲームに傾倒し…戦った」
94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 23:55:34.42 ID:ldXTiZAH0
ジュン「アリスになるため…ローゼンに会うためか」
真紅「…あの頃の私はそれ以外に生きる目的を…いえアリスになることのみが私達の原動力だったわ」
真紅「アリスゲームが私達の全てだった」
ジュン「でも今は…アリスにならなくてもいいと思ってるのか?」
真紅「それは違うわ、ジュン。私はアリスゲームを否定するけれどアリスに…お父様に会うのを諦めた訳ではないの」
ジュン「だってアリスゲームがお前達の父親にあう唯一の方法なんじゃあ…」
真紅「昔はね…私もそう思ったわ。でも長い年月をかけて幾多のミーディアムと触れ合うことで私の考えも変わったの」
真紅「アリスゲームが…アリスへの道の全てでは無いんじゃないかって」
110 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 00:09:56.99 ID:2Hdtgp2r0
ジュン「…じゃあ雛苺も翠星石も長い年月の中で今の考え方になっていったっていうのか」
真紅「そうね。翠星石の素直じゃない性格も雛苺のやさしい心もミーディアムとの触れ合いで培われていったものなの」
真紅「ふふっ、私のネコ嫌いも前のミーディアムのせいね」
ジュン「…」
真紅「あなたが見た夢の私達も今の私達も同じローゼンメイデンだけど…」
真紅「ジュン…今この時を貴方と一緒に生きてく事で私達の心は変わっていけるの」
122 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 00:16:57.44 ID:2Hdtgp2r0
ジュン「…」
真紅「ジュン…?」
ジュン「昔のお前達と今のお前達は違うってのは分かった。でも少し引っかかることが…」
真紅「…何かしら?」
ジュン「昔のお前達はアリスゲームが生きる…動く原動力と言ったな?」
真紅「えぇ、でも今はそれが全てでは…」
ジュン「ちょっとまって…」
真紅「…ジュン?」
132 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 00:22:25.22 ID:2Hdtgp2r0
ジュン「…それが本当なら…の…」
真紅の言葉を受け想像を巡らし一人思案するジュン
真紅「ジュン…」
ジュン「真紅」
真剣な眼差しで真紅を見つめるジュン
真紅「な、何かしら…」
少し頬を赤らませジュンに答える真紅
ジュン「これは僕の想像なんだけど、ローゼンの本当の目的…想いは…」
140 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 00:26:58.61 ID:2Hdtgp2r0
真紅「お父様の…?」
ジュン「あぁ、ローゼンは…」
シュバッ!
真紅「!?」
白い光がジュンの部屋を包み込み、光はジュンの体を飲み込んでいった
ジュン「う…うぁあああああああ!?」
真紅「ジュン! ジュン!」
141 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 00:28:01.72 ID:Nly93EAI0
なんだ、ジュンが宇宙人に改造されてJUMになる話か
148 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 00:33:07.51 ID:2Hdtgp2r0
パンッパンッパンッ
「さすがは第五ドールのミーディアム」
「ドールとミーディアムは似た者同士が惹かれあうといいますが」
「聡明なところまで一緒とは感嘆いたしました」
「で・す・が、パズルの最後のピースを完成させるのはドールの役目」
「残念ですがここでご退場いただきます」
真紅「あなたは…ラプラスの魔」
149 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 00:33:43.94 ID:UzWZGNas0
なん・・・だと
152 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 00:38:10.55 ID:qYhdNS9e0
いきなりエロ展開になったかと思った
153 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 00:39:09.61 ID:2Hdtgp2r0
真紅「ジュンを…私のミーディアムを返しなさい!」
ラプラスの魔「チッチッチ…」
人差し指を左右に振り拒否のサインを示すラプラスの魔
ラプラスの魔「ご機嫌如何かな? ローゼンメイデン第五ドール 真紅」
真紅「今どんな機嫌かわからなくって…ラプラスの魔ぁ!!」
右手をラプラスの魔へ向かってかざすと、その掌から無数の花弁がヒラヒラと舞い始めた
158 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 00:49:04.26 ID:2Hdtgp2r0
真紅「ローズテイル!」
真紅の掌から無数の花弁がラプラスの魔へ向かって放たれた
ラプラスの魔「おぉっと、怖い怖い」
ラプラスは軽々と花弁を交わし、飄々とした態度で真紅へ向き直った
真紅「くっ…」
ラプラスの魔「安心しなさい第五ドール。坊ちゃんは無事ですよ」
真紅「一体…何が目的なの!」
ラプラスの魔「目的・目標・道標 それを解き明かすのはあなたの役目」
真紅「何を言って…」
165 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 00:56:29.76 ID:2Hdtgp2r0
ラプラスの魔「坊ちゃんはパズルの最後のピースを手に入れてしまった」
真紅「パズルって…」
ラプラスの魔「そう…アリスの道標・目標・目的」
真紅「ア…リス」
ラプラスの魔「ですがいけません。最後の謎を解き明かすのは貴方達自身でなくては」
ゆっくりと光の中へ自分の体を溶け込ませていくラプラスの魔
真紅「!? 待ちなさい! ジュンを…ジュンを返しなさい!!」
ラプラスの魔「慌てなくても終着のベルには間に合います。あなたは最後のピースに手をかけているのですから…」
180 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 01:07:06.51 ID:2Hdtgp2r0
その体の大半が白い光に包まれ徐々に消え行くラプラスの魔
真紅「待って! ジュンを…ジュンを返して!」
ラプラスの魔「いずれ会うことになりましょう…そのいずれはもうすぐ傍に…」
真紅「お願い…返して…私の…ジュンを!」
ラプラスの魔「御機嫌よう、アリス…? いえ」
ラプラスの魔「ローゼンメイデン第五ドール…? いえ」
次々と呼び名を変えるがどれもしっくりこないとばかりに首をかしげるラプラスの魔
ラプラスの魔「そう…真紅。またお会いしましょう」
真紅「返して…返して…」
187 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 01:14:26.57 ID:2Hdtgp2r0
―――――――
翠星石「チビ人間の気配は…」
真紅「駄目…こっちも手がかり無しだわ」
雛苺「ジュン…ジュン…」
ジュンがラプラスの魔にさらわれて数日が経ち
ドール達はnのフィールドで自らのマスターを探し回っていた
190 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 01:21:56.36 ID:2Hdtgp2r0
翠星石「ラプラスの魔は何の目的で…」
真紅「ラプラスの魔はジュンがアリスの謎を解いた…と言っていたわ」
雛苺「アリスの謎…」
翠星石「アリスの謎って一体何ですか!」
真紅「それを私達自身が解かない限り、ジュンは戻ってこない…と」
雛苺「ジュン…」
翠星石「…だったらここで黙って待っててもしょうがねーです」
真紅「…」
翠星石「分かってるはずですよ、真紅。アリスの謎を解く鍵は…」
真紅「…アリスゲームの中に」
192 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 01:30:20.96 ID:2Hdtgp2r0
翠星石「分かってるですよ。真紅の辛い気持ちは…」
真紅「私は…」
雛苺「ヒナはね、ジュンを助けたいの!」
真紅「雛苺!?」
翠星石「雛苺も翠星石と同じ気持ちですか」
雛苺「だから…」
翠星石「なら、さっそく行くですよ!」
真紅「待ちなさい! 貴女達がやろうとしてることは…」
翠星石「でもやらずにはいられないんです…例え今までの自分を否定しようとも…」
翠星石「チビ人間を…ジュンを思う気持ちはとめられねぇーんです!」
194 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 01:39:35.79 ID:2Hdtgp2r0
真紅「翠星石…」
翠星石「無理にとは言わないですよ…真紅はやさしいですから」
翠星石「だから真紅にはそのまま…今のままで居て欲しいんです」
雛苺「ヒナね…真紅の家来になれてよかったの…」
雛苺「今までのミーディアムも大好きだったけどジュンと真紅と翠星石と一緒に暮らすこの時間が一番大好きになったの」
真紅「雛苺…」
雛苺「だから大好きなジュンと真紅の為に…」
翠星石「しっかりと翠星石達のアリスゲームを見てアリスの謎を解き明かすんですよ!」
197 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 01:47:58.61 ID:2Hdtgp2r0
真紅「ま、待ちなさい!」
雛苺「真紅…オ ルヴォワール」
翠星石と雛苺は真紅に一瞥しそのまま振り返らずにnのフィールド彼方へ飛び立っていった
真紅「雛苺…! 翠星石…」
真紅「私は…私はどうすれば…」
真紅「ジュンを助けたい…でもアリスゲームは…」
真紅「私は…私は…」
202 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 02:01:35.63 ID:2Hdtgp2r0
―――――――
めぐ「ねえ、水銀燈…」
水銀燈「…何よ」
めぐ「水銀燈の大事なものってなあに?」
水銀燈「ふん…お父様に決まってるじゃない」
めぐ「お父さん…か」
水銀燈「…」
めぐ「二番目でもいいから私、水銀燈の大切なものになりたいわ」
水銀燈「…馬鹿じゃないの」
203 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 02:09:58.42 ID:2Hdtgp2r0
めぐ「水銀燈は自分が好き?」
水銀燈「何を言い出すのよ…」
めぐ「私は自分が大キライ。だって壊れてるもの」
めぐ「だけど、水銀燈の一部になれたら…きっと自分が好きになれるかも」
水銀燈「…」
めぐ「私が水銀燈の一部になったら私の事を好きになってくれるよね」
水銀燈「付き合ってられないわ…」
水銀燈は病室の窓から身を乗り出し病院の屋上へと飛び立っていった
めぐ「水銀燈…」
205 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 02:16:40.18 ID:2Hdtgp2r0
水銀燈「お父様…めぐ…」
シュル…シュル…
白い茨が地面を伝い水銀燈の足元へ伸びていった
水銀燈「!」
シュシュシュ
咄嗟に飛び退き白い茨に向かって羽根を乱射する水銀燈
水銀燈「誰!?」
「さすがは第一ドール…そう隙は見せてくれないね」
206 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 02:24:02.72 ID:2Hdtgp2r0
水銀燈「あなたは…!?」
「僕の大事なものを返してくれないか」
水銀燈「…」
「君の一番大事なものと交換でもいいんだよ」
水銀燈「大事なもの…」
「そう、君のミーディアム…柿崎めぐ」
水銀燈「…ちっ、私の大事なものは…」
シャシャシャ!
四枚の翼を羽ばたかせ声の主に向かって羽根を繰り出す
水銀燈「お父様だけよ!」
211 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 02:32:19.70 ID:2Hdtgp2r0
乱射された羽根は白い茨に阻まれ声の主に届くことはなかった
「じゃあ、君のミーディアムを貰ってもいいよね」
水銀燈「いいわけ…ないでしょ!」
ガバッ!
茨を掻き分け声の主に掴みかかる水銀燈
そしてそのまま喉を締め上げる
水銀燈「一体何のつもりよ! こんな紛い物を担ぎ出してきて」
「紛い物とは酷いなあ…これでも本物ですのよ?」
水銀燈「あなた…」
212 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 02:40:00.18 ID:2Hdtgp2r0
「まあ動揺を誘えればいいと思いましたが…」
声の主が右手をかざすと水銀燈の足元から茨が伸び
その体を絡め取っていった
水銀燈「ぐっ…」
水銀燈「舐めるんじゃないわよぉ!」
ブチブチィ!
水銀燈は四枚の翼を展開し絡みついた茨を引きちぎっていった
「あらあら…」
水銀燈「あなたが蒼星石じゃないって分かってるのよ! 正体を現しなさい!!」
213 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 02:46:43.65 ID:2Hdtgp2r0
水銀燈「いつまでもかくれんぼを続ける気なら、こっちにも考えがあるわよぉ!」
バサッバサッ!
四枚の翼を大きく震わせ四方へ羽根を飛ばす体勢を作る水銀燈
「ふふふ…青薔薇のお姉様の体を傷物にするわけにはいきませんね」
シュル…シュル…
蒼星石の体を白い茨が包み込み、中から白い衣装を纏ったドールが姿を現した
水銀燈「あなたは…」
雪華綺晶「始めまして、黒薔薇のお姉様。私はローゼンメイデン第七ドール 雪華綺晶です」
218 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 02:58:16.62 ID:2Hdtgp2r0
水銀燈「第七ドール…!?」
雪華綺晶「ふふっ驚かれるのもしょうがありませんね。何せ体は青薔薇のお姉様のもの」
水銀燈「その体…本物の蒼星石のものだっていうの?」
雪華綺晶「はい…都合よくローザミスティカと魂を抜かれた器。有効に使わせてもらってますわ」
水銀燈「…」
雪華綺晶「これも黒薔薇のお姉様のおかげ。ふふふ…」
水銀燈「…で、その体を使ってアリスゲームをやろうっていうの?」
雪華綺晶「いえ、ひとつ協力の申し出をしようと思いまして」
水銀燈「協力?」
219 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 03:08:14.61 ID:2Hdtgp2r0
雪華綺晶「ええ、あなたがご所望のローザミスティカの収集に協力したいと」
水銀燈「ローザミスティカを…」
雪華綺晶「一人で姉妹達と渡り合うのも限界があると思いませんか?」
水銀燈「ふんっ!」
ガシッ
雪華綺晶の喉を掴み上げぎりぎりと締め上げていく
水銀燈「なら…あなたのローザミスティカからよこしなさいよぉ!」
雪華綺晶「ふふっ、こんなものでよろしければ…」
雪華綺晶が右手の拳をゆっくり開くと、そこには虹色に輝く結晶が静かに光を放っていた
221 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 03:13:04.43 ID:2Hdtgp2r0
水銀燈「なっ!?」
雪華綺晶「如何されました? 持っていってもよろしいのですよ」
ズサッ!
喉元を掴んだ手を離し、一足飛びに距離をとる水銀燈
水銀燈「あなた…一体!?」
雪華綺晶「ふふふ…私は最後のローゼンメイデン 末妹の雪華綺晶ですわ」
223 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 03:22:14.24 ID:2Hdtgp2r0
水銀燈「あなたの…本当の目的は何よ」
雪華綺晶「という事は私と協力するつもり…と受け取ってもよろしいですね」
水銀燈「目的は何って聞いてるのよ! ローゼンメイデンならお父様に…アリスになるのが目的でしょ!」
水銀燈「アリスになるためにはローザミスティカが必要なはず。あなたは一体…」
雪華綺晶「ふふっ私の目的はミーディアム…柿崎めぐを頂くこと」
水銀燈「めぐ…を?」
雪華綺晶「ええ、何も問題は無いでしょう。あなたの大事なものはお父様ただ一人であるのだから」
水銀燈「…」
225 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 03:28:41.83 ID:2Hdtgp2r0
雪華綺晶「今すぐにとはいいません。まずは貴女と共にローザミスティカの収集に協力しましょう」
水銀燈「…」
雪華綺晶「ほら、ローザミスティカが向こうからやってきましたよ」
水銀燈「え…?」
翠星石「水銀燈! 翠星石達とアリスゲームを始めるですよ!」
228 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 03:35:02.65 ID:2Hdtgp2r0
水銀燈「翠星石…」
翠星石(戦いは嫌いですけど蒼星石のローザミスティカを奪った水銀燈となら本気で戦えるですよ)
雛苺「うゆ…傍にいるドールは?」
雪華綺晶「始めまして、緑薔薇と桃薔薇のお姉様方。私はローゼンメイデン第七ドール 雪華綺晶です」
雛苺「第七ドール…」
翠星石「…雪華綺晶」
229 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 03:42:40.22 ID:2Hdtgp2r0
水銀燈「どういう風の吹き回しぃ? 戦いの嫌いな貴女達がアリスゲームなんて」
翠星石「こっちにはこっちの事情というものがあるんですよ…」
雛苺「ごめん…なの。水銀燈」
翠星石「何を謝ってるですか! まだ戦ってもいねぇーですよ!!」
雪華綺晶「くすくす…」
翠星石「何がおかしいですか…」
雪華綺晶「いえね…こういう時に言うセリフは ありがとう だと思いまして」
雛苺「ありがとう?」
雪華綺晶「ええ…ローザミスティカを持ってきてくれてありがとうってね!」
230 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 03:47:55.95 ID:2Hdtgp2r0
シュルルルッ!
翠星石「くっ…」
無数の茨が翠星石の体を絡めとり屋上に設置された鏡の中へ引き込んでいった
雛苺「翠星石ーッ!!」
雪華綺晶「桃薔薇のお姉様の相手はお願いしますね。黒薔薇のお姉様」
水銀燈「待ちなさい! まだ私は協力すると言った訳じゃ…」
水銀燈の言葉を最後まで聞くことは無く、雪華綺晶は鏡の中へ飛び込んでいった
231 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 03:53:52.58 ID:2Hdtgp2r0
水銀燈「…」
雛苺「水銀燈…」
水銀燈「アリスゲームの舞台から降りたあなたが今更何を…」
雛苺「それでもヒナは…」
シュル…シュル…
雛苺「戦わなくちゃいけないの!」
雛苺の足元から蔦が伸び、水銀燈へ向かって走り出した
232 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 04:00:29.18 ID:2Hdtgp2r0
水銀燈「こんなもの!」
水銀燈が宙に舞い、空中から雛苺へ向かって一直線に飛び掛った
雛苺「あっ…」
ガッ
水銀燈のブーツが雛苺の体を捉え、後方へ蹴り飛ばす
雛苺「あう!」
水銀燈「もう一度アリスを目指そうっていうの…?」
雛苺「それでもヒナは…」
よろよろと体を起こし水銀燈へ向かって歩みを進める雛苺
水銀燈「答えなさい! あなたは何のためにアリスゲームを…戦いをするっていうの!!」
235 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 04:07:37.59 ID:2Hdtgp2r0
雛苺「ヒナは…ヒナは…ジュンや真紅の為に…」
おぼつかない足取りで一歩ずつ水銀燈へ近づいていく
水銀燈「あの人間や真紅のため?」
雛苺「そう…ヒナは大好きなジュンと真紅の為に戦うの…苺わだち!」
シュルシュル!
水銀燈「…ざけ…」
雛苺(力を貸して…ジュン)
水銀燈「ふざけるんじゃないわよぉ!!!」
238 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 04:16:10.05 ID:2Hdtgp2r0
バリバリバリッ!
水銀燈は床に張り巡らされた苺わだちをなぎ払いそのまま雛苺へ体当たりを繰り出した
そして雛苺へ掴みかかり馬乗りの形になった
雛苺「あ…ぅ…」
水銀燈「もう一度言ってみなさいよ! 人間や真紅のためですって!?」
水銀燈「何馬鹿なことを言ってるの! 私達ローゼンメイデンにアリス以外の目的なんかある訳無いじゃない!!」
雛苺「違うの…」
水銀燈「ふんっ! 何が違うのよ!! アリスになってお父様の寵愛を受ける事が私達の…」
真紅「雛苺から離れなさい!」
239 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 04:20:15.05 ID:2Hdtgp2r0
水銀燈「真紅…」
雛苺「…真紅」
真紅「今すぐ雛苺から離れなさい、水銀燈!」
水銀燈「ふぅん…遅れて本命の登場って訳?」
ググッ
雛苺「ぅ…」
雛苺の喉を両手で締め上げる水銀燈
真紅「!? やめなさい!!」
水銀燈「それ以上近寄ると…この子がジャンクになるわよぉ」
241 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 04:27:15.84 ID:2Hdtgp2r0
真紅「雛苺…」
水銀燈「さあ、さっきの続きよぉ。雛苺…あなたは何のために何の目的で生きるの」
水銀燈「アリスゲームの舞台を降り…そして真紅の小間使いとして生き続ける」
水銀燈「あなた何のために…何を目標に生きていくの?」
雛苺「ぅ…」
真紅「雛苺!」
水銀燈「動くなっていったでしょ!」
ぐぐっ…
真紅「くっ…」
水銀燈「さぁ答えなさい、雛苺。あなたの生きる…動く原動力は…」
243 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 04:32:37.32 ID:2Hdtgp2r0
雛苺「ヒナは…ヒナは…」
水銀燈「さぁ…」
真紅「くっ…」
雛苺「ヒナは…ジュンや真紅の為に…」
水銀燈「!!」
グググッ
雛苺「かっ…く…」
水銀燈は渾身の力で雛苺の首を締め上げていく
真紅「雛苺!」
244 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 04:36:56.90 ID:2Hdtgp2r0
水銀燈「あなたアリスを…お父様を否定するって言うの!」
真紅「やめなさい! 水銀燈!!」
水銀燈「うるさい!!!」
シュババッ!
真紅「!」
真紅に向かって羽根を乱射する水銀燈
水銀燈「私達の動く原動力はアリスに…お父様に会うためにあるのよ。それをあなたは…」
雛苺「ぅ…くっ…」
真紅「やめなさい、水銀燈! お願い、やめて!!」
245 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 04:44:23.33 ID:2Hdtgp2r0
水銀燈「なら言ってみなさい…あなたのお父様への思いを…」
水銀燈「姉妹同士で戦わせる…アリスゲームという惨劇の舞台の元凶を…」
雛苺「お…父様…」
水銀燈「さぁ…」
雛苺「ヒナは…」
雛苺「ヒナは…みんなと…仲良く暮らしたかった…」
雛苺「戦いなんて…キライ…」
雛苺「そして…」
真紅「や、やめなさい…雛苺…」
247 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 04:51:59.84 ID:2Hdtgp2r0
雛苺「そして…」
真紅「やめなさい雛苺! それ以上口に出してはいけないわ!!」
水銀燈「あなたは黙ってなさい!!」
シュバッ!
真紅「くっ…」
雛苺「ヒナ達にこんなことをさせる…お父様が…」
真紅「雛苺ーーーーっ!」
雛苺「お父様が…」
雛苺「…キライだった…」
248 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 04:59:06.10 ID:2Hdtgp2r0
シュバッ!
水銀燈「何!?」
真紅「この光は…!」
白い光が雛苺の体を包み込み、雛苺の体は光の中へ溶け込んでいった
雛苺「…」
真紅「雛苺っ!」
真紅は咄嗟に駆け出し光の中へ手を伸ばした
真紅「この手を掴んで、雛苺!」
雛苺「…」
真紅「雛苺……!」
シュパン!
真紅の救いの手を掴むことなく雛苺の体は白い粒子となって消え去った
249 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 05:06:54.54 ID:2Hdtgp2r0
真紅「あっ…あっ…」
真紅「うっ…雛苺……」
水銀燈「くくっ…」
真紅「…水銀燈?」
水銀燈「あ〜っはっはっ…」
真紅「……何がおかしいの…」
水銀燈「何がって…創造主を否定して生きていられる訳が無いじゃないの…くくっ…あ〜っはっは」
真紅「……それ以上耳障りな声を聞かせないで…」
水銀燈「くくっ…怒ってるの? 真紅。でもねあなたも同じ末路を辿ることになるのよ」
真紅「…」
水銀燈「アリスゲームを否定するあなたも遠からずお父様を否定することになるのよ!!」
250 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 05:11:54.66 ID:2Hdtgp2r0
水銀燈「そうよ! お父様を否定して生きていられる訳が無いのよ!! くくっ…うっ…」
水銀燈の頬を一粒二粒と涙が伝い落ちていった
真紅「涙…?」
水銀燈「私達は…ローゼンメイデンはアリス以外の道なんてありっこないのよ!!」
水銀燈「さぁ真紅ぅ!」
水銀燈「アリスゲームを始めましょう!!」
真紅「くっ…」
252 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 05:20:57.72 ID:2Hdtgp2r0
―――――――
雪華綺晶「さあさ、私を倒さなければ桃薔薇を助けには行けないですよ…緑薔薇のお姉様」
翠星石「っ…(こいつ強いですぅ…)」
翠星石(でも誰が相手であろうとアリスゲームの答えを見つけるため…ジュンを助けるために…)
翠星石「やるしかねぇーんです!!」
翠星石「スィドリーム!」
人工精霊からまばゆい光が放たれ、光球から庭師の如雨露が姿を表した
254 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 05:28:28.12 ID:2Hdtgp2r0
翠星石「健やかにー伸びやかにー」
コォオオオォ…
庭師の如雨露から水が降り注ぎ、辺り一体を深い霧がたちこめた
雪華綺晶「ほぅ…」
翠星石(戦いは苦手ですけど…頑張るですよ)
シュッ…
雪華綺晶「霧に紛れての攻撃ですか…戦いが苦手だといっても中々」
255 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 05:37:39.97 ID:2Hdtgp2r0
雪華綺晶「緑薔薇のお姉様。ひとつご忠告申し上げますが、あなたは私に勝つことは出来ません」
翠星石(何を言うかと思えば…翠星石に声を出させて居場所でも探る気ですかね)
雪華綺晶「例えアリスゲームとはいえ姉妹の体を傷つけることは好みません。おとなしく降参していただけませんか?」
翠星石(そのセリフは翠星石に勝ってからいうです!)
シュッ!シュッ!
雪華綺晶の四方から蔦が襲い掛かり体の自由を奪っていった
雪華綺晶「ふぅ…聞いてはいただけないのですね」
翠星石「こんな状況でまだ強がりを言うですか!」
雪華綺晶「……やっと声を聞かせてくれたね」
翠星石「え…?」
256 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 05:44:13.74 ID:2Hdtgp2r0
雪華綺晶「翠星石…苦しいよ。早くこの縛めを解いて…」
翠星石「う、嘘ですよ…蒼星石は水銀燈にローザミスティカをとられて…」
雪華綺晶「苦しいよ…翠星石……」
翠星石「そ、蒼星石…」
シュル…
つい力を緩めてしまう翠星石
雪華綺晶「甘いですね…お姉様」
翠星石「なっ…」
257 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 05:52:39.84 ID:2Hdtgp2r0
シュルルルルルゥ…
翠星石「くっ…うぁ…」
白い茨で翠星石の体を絡めとり先程とは逆の立場になる二体
雪華綺晶「ふふ…形勢逆転といった所ですかね。この霧のおかげで白い茨を忍ばせることも容易でしたよ」
翠星石「な、何故…」
雪華綺晶「あぁ…申し遅れましたが、この体はあなたの双子の妹、蒼星石なのです」
翠星石「そんな…」
雪華綺晶「ほら、この通り」
クルッ
雪華綺晶がその場で旋回すると白い衣は青に変わり、その両目は緑と赤のオッドアイへ変わった
258 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 05:58:54.19 ID:2Hdtgp2r0
翠星石「あっ…あ…」
雪華綺晶「ふふっ…双子の貴女なら分かりますよね。この体が本物だって」
翠星石「な、なんで蒼星石の体が…」
雪華綺晶「例え双子の妹であろうとも手を出せないようであれば、あなたにアリスの資格なんてありっこないですよね」
翠星石「くっ…」
雪華綺晶「……ひとつお聞きしたいのですがあなたの生きる…動く原動力は何ですか?」
259 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 06:05:07.02 ID:2Hdtgp2r0
翠星石「何を…?」
雪華綺晶「いえね…双子の妹が討てないあなたがアリスを目指してるとも思えませんし…」
雪華綺晶「何の為に生きているのかと思いまして…」
翠星石「…」
雪華綺晶「私達ローゼンメイデンの目的は至高の少女、アリスとなってお父様に会うこと…」
雪華綺晶「なのに…当の本人にアリスになる気は無し。何があなたをここまで突き動かすのですか?」
翠星石「それは…」
水銀燈「くだらなぁい理由よ」
260 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 06:11:07.69 ID:2Hdtgp2r0
翠星石「水銀燈!?」
雪華綺晶「おや…黒薔薇のお姉様。仕事がお早い事で」
水銀燈「はい、これが成果よ」
ポイッ
水銀燈は無造作に引きずっていたモノを翠星石の目の前に放り投げた
真紅「うっ…」
翠星石「し、真紅!」
雪華綺晶「あら、桃薔薇のお姉様はどうされました?」
水銀燈「消えたわ」
翠星石「!?」
261 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 06:16:00.30 ID:2Hdtgp2r0
雪華綺晶「消えた…とは?」
水銀燈「言葉通りよ…白い光になってぱぁーっと消えちゃったの」
翠星石「う…嘘です!」
水銀燈「嘘じゃないわよ。あの子はね創造主を…お父様を否定したの」
翠星石「そんなの…信じられんです! 真紅、嘘って…嘘って言ってくれです!!」
真紅「…」
翠星石「そんな…」
262 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 06:21:01.29 ID:2Hdtgp2r0
翠星石「こんなの嘘です嘘です! お父様がそんなことする筈が…」
雪華綺晶「ふふっ…嘘かどうか確かめてみればいいじゃないですか?」
翠星石「え…?」
水銀燈「…」
真紅「まさか…」
雪華綺晶「あなた自身の口で確かめてみればいいと言っているんです」
263 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 06:28:18.22 ID:2Hdtgp2r0
真紅「!? お願い! やめて!」
水銀燈「…」
翠星石「え…あ…」
雪華綺晶「さて緑薔薇のお姉様、あなたにお尋ねします」
雪華綺晶「あなたの大事な妹、蒼星石。そして私達ローゼンメイデンの本能ともいえるお父様への愛…」
真紅「やめて! お願い…これ以上私から大事なものを奪わないで!!」
ガッ
真紅「うぁ…」
水銀燈「慌てなくても次は貴女の番よ…」
266 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 06:34:13.78 ID:2Hdtgp2r0
雪華綺晶「お父様と蒼星石…貴女はどちらを愛しているのですか?」
真紅「答えないで…翠星石!」
水銀燈「偽りの答えを言えばその愛は嘘になる。さあ貴女はどちらを愛しているんでしょおねえ…」
翠星石「翠星石は…翠星石は…」
雪華綺晶「さあ、緑薔薇のお姉様…お答えを」
翠星石「翠星石は…」
267 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 06:38:49.96 ID:2Hdtgp2r0
翠星石「翠星石は…お父様を愛しているです」
真紅「翠星石…」
水銀燈「…」
雪華綺晶「それが本当の答えなのですか?」
翠星石「でも…でも…それ以上に……」
真紅「え…」
水銀燈「あなた…」
雪華綺晶「ふふっ…」
翠星石「翠星石は……蒼星石を愛しているです! そう…お父様以上に!!」
269 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 06:49:08.57 ID:2Hdtgp2r0
翠星石「例えお父様に会うことが適わなくても…蒼星石を手にかけるくらいなら…」
真紅「翠星石!」
翠星石「翠星石はアリスになんかなりたくねぇーです!!」
水銀燈「……馬鹿ね…」
雪華綺晶「ふふっそれが真実…あなたにはアリスになる資格なんて最初っから無かったんです」
シュバッ!
白い光が翠星石の体を包み込み、翠星石の体は光の中へ消えつつあった
真紅「翠星石! 翠星石!」
翠星石「真紅…翠星石は後悔なんてこれっぽっちもしてねぇーです」
翠星石「言いたいことを言い、好きなように生きる…それが翠星石です。それを否定されるくらいなら…」
翠星石「創造主だろうと…お父様だろうと真っ向から立ち向かってやるです」
真紅「翠星石…」
270 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 06:56:34.08 ID:2Hdtgp2r0
翠星石「でも…でも…こんな事になっても…うっ…」
翠星石の目から大粒の涙が零れ落ち、ドレスに大きな染みを作っていった
翠星石「翠星石は…お父様が大好きですよ…」
翠星石「かすかな記憶しかありませんが、お父様の抱っこの…あの大きな胸は暖かかったんです…」
真紅「翠星石…」
翠星石「一番は蒼星石ですけど…お父様だってそれに劣らず好きで…愛して…」
シュパン!
翠星石の体は光の粒子となってその場から消え去った
273 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 07:07:01.13 ID:2Hdtgp2r0
真紅「翠星石…」
雪華綺晶「さぁ…次は貴女の番ですよ。紅薔薇のお姉様」
水銀燈「…」
真紅「雛苺…翠星石…」
雪華綺晶「寂しいことなんてありませんわ…桃薔薇も緑薔薇もきっとあちらの世界でお待ちですわ。ふふっ」
真紅「あちらの世界…?」
雪華綺晶「まあドールにあの世の世界があればの話ですがね。ふふふ」
雪華綺晶「さぁお答え下さい。紅薔薇のお姉様」
真紅「その必要は無いわ」
275 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 07:15:42.26 ID:2Hdtgp2r0
雪華綺晶「今更怖気付いたのですか?」
真紅「いいえ、分かったの…アリスの謎が」
水銀燈「アリスの謎? この後に及んで何を言い出すの」
水銀燈「あなたは負けたのアリスゲームに…それも戦ってではなく自らのリタイアでね」
真紅「雛苺や翠星石そして雪華綺晶と水銀燈…貴女達が教えてくれたんだわ」
水銀燈「…どうしたの、この子…壊れちゃったの?」
雪華綺晶「こんな状況で時間稼ぎも必要ないでしょう。お聞きします、紅薔薇のお姉様 あなたは…」
真紅「必要ないと言っているわ。私はアリスゲームを…アリスを否定する!」
278 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 07:24:30.57 ID:2Hdtgp2r0
水銀燈「なっ…!?」
雪華綺晶「自ら…」
シュバッ!
白い光が真紅の体を包み込み始めた
真紅「…」
水銀燈「何をやっているの! 自殺のつもり!?」
雪華綺晶「さすがは高貴な第五ドール…引き際も美しいですわ」
真紅「……今の貴女達では無理かもしれないけど、きっといつか分かる日がくるわ」
雪華綺晶「え…」
水銀燈「何を言って…」
シュパン!
真紅の体は光の粒子となってその場から消え去った
280 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 07:35:38.19 ID:2Hdtgp2r0
水銀燈「し、真紅!」
スッ!
水銀燈は真紅が居た場所に手を伸ばしたが、その手は虚しく空を掴むのみであった
水銀燈「真紅……」
雪華綺晶「よほどお気に入りのようでしたね…紅薔薇のお姉様が」
水銀燈「…」
雪華綺晶「ふふっ…これは失礼。私が居ては涙も流せませんものね」
水銀燈「…消えなさいよ」
雪華綺晶「今は退きますが、ローゼンメイデンは全部で七体。黄薔薇のお姉様の事もお忘れなく…」
白い茨に身を包み、その場から立ち去る雪華綺晶
水銀燈「…真紅…真紅…真紅ぅぅうーーーーーーーーっ!!」
nのフィールドに水銀燈の叫びがこだました
282 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 07:40:28.89 ID:2Hdtgp2r0
・・・・・・
「…ん…真…」
「真紅!」
真紅「はっ…」
「やっと目を覚ましたか」
真紅「あっ…あ…」
「おいどうした? どこか壊れたのか」
真紅「ぶ、無事だったのね…もう会えないものかと……」
284 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 07:43:32.65 ID:2Hdtgp2r0
真紅「ジューーーン!」
ガバッ
ジュン「わっ!?」
真紅は傍らに座るジュンに向かって雛苺のように飛び掛った
真紅「会いたかったわ、ジュン! ジュン!」
ジュン「お、おい離れろよ…」
真紅「もう少し…もう少しだけこのまま……」
ジュン「……しょうがないな」
285 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 07:48:01.88 ID:2Hdtgp2r0
真紅「…」
ジュン「…」
真紅&ジュン「あ、あの…」
真紅「あ、あなたから…」
ジュン「お、お前から…」
真紅「…」
ジュン「…」
真紅&ジュン「あ、あの…」
真紅「…」
ジュン「…」
パンッパンッパンッ
287 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 07:55:01.91 ID:2Hdtgp2r0
ラプラスの魔「これはこれは初々しいお二方。まるで恋人のようですな」
真紅「なっ!」
ジュン「…」
ラプラスの魔「まあまあお二方の蜜月を邪魔したことは謝ります。ですが私の方もあなた方を主の下へお連れせねばいけないので…」
真紅「主…」
ジュン「…ローゼン…だな」
ラプラスの魔「はい、さすがは聡明なお二方ですな」
ジュン「か、からかうな!」
真紅「…」
289 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 08:02:36.22 ID:2Hdtgp2r0
ラプラスの魔に連れられ、長い廊下を進む真紅とジュン
ジュン「お前がここに居るってことは…分かったんだなアリスの意味が」
真紅「ええ…でもここに来るまでは半信半疑…半ば賭けみたいなものでしたけど」
ジュン「お、おまえそれでよくあの言葉を言えたもんだな…」
真紅「ふふ…冗談よ。雛苺が消えた時点で薄々分かってはいたけど…」
真紅「確証に変わったのは翠星石の言葉を聞いた時よ」
真紅「あの子はお父様をはっきりと愛してると言った」
真紅「そんな子を見捨てるほど私達のお父様は愚か者ではないのだわ」
ジュン「愚か者ね…怖くないのか? 創造主をそんな風に言って」
真紅「だって私は信じているんですもの…お父様を」
291 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 08:12:04.68 ID:2Hdtgp2r0
ラプラスの魔「さあ、お二方お喋りはここまでです。主の部屋に着きましたよ」
二人は白い工房のような部屋に通され、部屋の中央には静かに男が佇んでいた
その膝の上には赤子のように安らかに眠る二体のドールの姿があった
ジュン「雛苺! 翠星石!」
真紅「あっ…あ…」
真紅は視線は部屋の中央の男に注がれ、真紅の視線に気づいた男は穏やかな顔で微笑を返した
真紅「お父…様」
293 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 08:17:57.24 ID:2Hdtgp2r0
ジュン「あれが…ローゼンなのか…真k…」
真紅「お父様ー!」
タタタッ
ジュンの言葉の全てを聞かず、真紅は男の…ローゼンの胸に飛び込んでいった
真紅「お父様…会いたかった…会いたかったわ!」
ローゼン「あぁ…私もだ。真紅」
ジュン「ふん…よかったな、真紅」
少しふてくされたような表情で親子の対面を見守るジュン
294 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 08:23:07.72 ID:2Hdtgp2r0
真紅「お父様! お父様!」
雛苺「うっぅーん…うるさいのー…」
翠星石「うー何ですか…騒がしい」
ローゼン「起こしてしまったか…」
ラプラスの魔「いいではありませんか、丁度役者も揃ったことです。お話を始めるにはいい頃合かと」
ローゼン「そう…だな」
ローゼン「真紅…翠星石…雛苺…そして少年、すこし昔話を聞いてくれないか?」
ジュン「え?…はい」
297 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 08:38:23.01 ID:2Hdtgp2r0
昔…とある人形師がそれはそれは美しい人形を作った
その人形師は思った。この人形に命を吹き込みたい…と。
人間と同じ、自ら考えて動く人形
そして男は長年の錬金術の研究の後、生命の石…ローザミスティカを生み出した
そして男はローザミスティカを七つに割りそれを六つのドールへ分け与えた
男は歓喜した。これでこの人形達は命を持った…と
だが人形は自ら動こうとしない。簡単な命令は聞くもののまるで操り人形だ。
自ら考えて動かなければ人形と同じではないか。男は考えた
人間は生まれて誰から教えられたものでもなく母親のお乳にすがりつく
これは生きるという本能からきているものだ。
人間は生まれてすぐ生きるための戦いを始める。そう生きるということは戦いなのだ
300 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 08:54:26.37 ID:2Hdtgp2r0
男は人形達に本能を与えることを考えた
だがどうしたものか…本能というものは与えられるものではなく生まれ持ってくるものだ。
ある日男は人形に自分の服を持ってくるよう命じた
するとどうしたことだろう? 銀髪のドールと赤い服のドールが私の服を巡って争いあっている
いつもなら命令どおりにしか動かない人形が私の意に反する行動をしている
私の頭に一筋の光明がさした。この人形達の本能は私に愛されたいという事か…と
そして偶然二体のドールは私に愛されたいがばかりに主人の意に反して争いを始めた
争いの中から人は切磋琢磨し成長する。私は人形達を競い合わせ心の成長を願うことにした
無論私の願いは人形達を人間に近づけること
それぞれの人形に人工精霊を与え性質の近い人間の元へ置く事によって
その人間の考えや行動を学ばせようとした
そして長い年月を経てその人形達は私に愛されたいという偽りの本能を破り自ら生きる道を選ぶことが出来た
302 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 09:05:04.80 ID:2Hdtgp2r0
ジュン「つまりアリスは…」
真紅「偽り…」
雛苺「じゃあ今までの戦いは…」
翠星石「…」
ローゼン「…今まで悲しい思いをさせたことはすまないと思っている」
ローゼン「だが、お前達は今やローゼンメイデンという呪縛から解き放たれ、真紅、翠星石、雛苺として生きていくことができるんだ」
ローゼン「ここからはお前達の人生を…本能のままに生きなさい」
翠星石「待って!」
307 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 09:15:45.78 ID:2Hdtgp2r0
翠星石「蒼星石は…蒼星石はどうなるんですか!」
真紅「まだ残った水銀燈や…」
雛苺「雪華綺晶は!」
ローゼン「残念ながら…彼女達はまだアリスの呪縛に囚われたままだ」
ローゼン「今お前達が真実を話したところで信じはしないだろう」
ローゼン「そこでお前達に問う」
ローゼン「残ったドール達と別世界で生きるか」
ローゼン「ここで永い眠りにつくか」
ローゼン「現在のドール達を眠りにつかせお前達は元の世界へ戻る」
ローゼン「さあ選びなさい」
雛苺「ヒナは…」
翠星石「翠星石は…」
真紅「私は…」
309 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 09:24:25.52 ID:2Hdtgp2r0
―――――――
ラプラスの魔「嬉しそうですね」
ローゼン「あぁ…こんなに嬉しいことは無い」
ラプラスの魔「ふふっあなたのその顔、自分の子供の成長を目の当たりにしたようですよ」
ローゼン「自分の子供…そうだな。彼女達は私の娘だ」
ローゼン「子供の成長とは親の想像を上回るものだな」
ローゼン「あの子達は一番過酷で一番私の望む答えを出してくれた」
ラプラスの魔「ふふふ、それはあの子達があなたを思い愛してくれるからですよ」
ローゼン「私には見える…姉妹全員が手を取り合い助け合っていく姿が」
ラプラスの魔「それも遠くない将来にね」
ローゼン「今日は気分がいい。ラプラス、紅茶を入れてくれないか?」
ラプラスの魔「はいはい…ふふっ」
311 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 09:27:51.18 ID:2Hdtgp2r0
―――――――
金糸雀「くっ! 攻撃のワルツ!!」
水銀燈「遅いわ!」
雪華綺晶「あなたのミーディアム頂きますわ」
金糸雀「このままじゃ…」
「待ちなさい!」
312 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 09:35:13.68 ID:2Hdtgp2r0
金糸雀「み、みんな!」
雪華綺晶「な、何故貴女達がここに…」
水銀燈「し、真紅!?」
雛苺(ヒナ達はみんな同じ答えを出したの)
翠星石(それはアリスゲームを継続し続けること)
真紅(他のドール達のアリス以外の生きる目標が見つかるまで戦い続けると)
翠星石(待っててくれです、蒼星石。いつかきっと…)
水銀燈「あ、あなたがあれ位で参ったとは思って無かったわぁ! いくわよ真紅!!」
真紅「くすっ、相変わらずね水銀燈…」
真紅「さあ、アリスゲームを始めましょう」
おわり
314 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 09:40:58.28 ID:2Rbti14QO
>>1乙!
315 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 09:44:32.71 ID:hYlE01b6O
>>1乙
超乙
321 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 10:09:07.50 ID:reEEmLVXO
>>1乙 面白かったよ
---------------
当ブログについて
※欄406さんありがとうです。
------------
お絵かき掲示板よりうな重さんありがとうです。

読み物:ローゼン
お絵かき掲示板
画像掲示板
「…ン…ジュ…」
「ジュン!」
ジュン「はっ…」
小さな手で体を揺さぶられジュンはゆっくりと瞼を開いた
雛苺「ジュン! ジュン!」
ジュン「…なんだよ」
雛苺「だって、ジュンがうなされてたから…」
ジュン「うなされてた…僕が?」
まだ覚めやらぬ頭で先刻までの夢の内容を反芻する
9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 21:52:15.31 ID:ldXTiZAH0
ジュン(確か…真紅達が戦っていた、いつものアリスゲーム)
ジュン(でも雛苺や真紅達の様子が…)
雛苺「ねぇ、ジュンったら!」
雛苺がジュンの袖を引き、自分の方へ注意を促す
ジュン(夢とはいえあんな好戦的な雛苺は初めてだ)
雛苺「うゆ? どうしたの、ジュン」
ジュン「ん、いや何でもない…」
ジュンは体を起こすと机上にある眼鏡を手に取り階下へと降りていった
11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 22:01:08.08 ID:ldXTiZAH0
翠星石「おはようです、チビ人間」
キッチンで翠星石いつもの調子でお菓子作りに励んでいた
ジュン「あぁ、おはよう(そういえばこいつも夢の中じゃ…)」
翠星石「ん? どうしたですか。翠星石の顔に何かついてるですか?」
ジュンの視線を感じ取り、頬を赤らめながら言葉を投げる翠星石
ジュン「…いや、何でもないよ。そういえば真紅は?」
ジュンの言葉に不満げな顔で答える翠星石
翠星石「…真紅はnのフィールドに行ってるですよ」
13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 22:09:41.78 ID:ldXTiZAH0
ジュン「nのフィールド? なんでまた」
翠星石「なんでって…そんなに真紅の事が気になるですか」
頬を膨らませムッとした顔で答える翠星石
ジュン「何怒ってるんだよ…」
翠星石「怒ってないですよ!」
翠星石は手元にあるスコーンをジュンに投げつけた
ジュン「わっ!? おい、やめろって!」
翠星石「その薔薇の指輪は飾りですか! もうチビ人間の事なんか知らんです!」
キッチンから飛び出すと二階へ向かって駆け出す翠星石
ジュン「何だよ、あいつ…」
自分の手の指輪を見つめるジュン
ジュン「そういえば、この指輪で僕とあいつらの心が繋がってたんだっけ…」
15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 22:17:20.96 ID:ldXTiZAH0
ジュン(あいつらの考えが時々分かる事があったな)
雛苺「ジューン!」
ジュン「雛苺…(こいつの好物が分かった時も指輪のおかげだったな)」
雛苺「翠星石が怒ってたのよ」
ジュン「あぁ、怒ってたな」
雛苺「怒ってたな、じゃないのよ。分かってないの?」
ジュン「何が…?(こういう時に考えが分からないなんて気まぐれな指輪だな)」
雛苺「翠星石はね、ジュンの為にお菓子を作って待ってたのよ」
19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 22:24:05.77 ID:ldXTiZAH0
ジュン「んあ? それが何で怒る理由になるんだ?」
雛苺「はぁ…翠星石は褒めて貰いたかったのよ」
ジュン「褒める? まだお菓子を出されてもいなかったぞ」
雛苺「うゆ? じゃあ何で…」
ジュン「さあな…うっ」
雛苺「ジュン?」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「いつもいつも真紅、真紅ばかり…」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
ジュン(これは…翠星石の心か?)
雛苺「ジュン…?」
20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 22:28:49.02 ID:ldXTiZAH0
ジュン「あぁ、何でもないよ」
雛苺「…そう」
ジュン「何となく怒ってる理由が分かったよ」
雛苺「ホント?」
ジュン「あぁ、ちょっと翠星石の所に行ってくる」
雛苺「みんな仲良しが一番なのよー」
無邪気な笑顔でジュンを見送る雛苺
ジュン(こうやっていつでも考えが分かれば便利なんだけどな)
25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 22:35:40.62 ID:ldXTiZAH0
ゆっくりと二階への階段を登るジュン
ジュン(まったくこんなことで怒るなんて困った奴だ…)
ジュン(さっきだって真紅の事を少し口に出しただけじゃないか)
ジュン(真紅…そういえばnのフィールドに居るって言ってたっけ。一体何しに?)
ジュン(あいつらの考えが分かる指輪…)
ジュン(さっきの夢はまさか…)
ジュン(ははっ、考えすぎか)
二階へ上がり自分の部屋のノブに手をかけるジュン
ジュン「おーい、翠星石」
・・・・・・
32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 22:45:27.29 ID:ldXTiZAH0
夕食時―
のり「今日はみんなの大好きな花丸ハンバーグよー」
雛苺「わーい花丸ハンバーグ大好きなのー」
翠星石「こら! ちゃんとチビ人間がくるまで待つんです!」
雛苺「はーい(翠星石の機嫌がなおってよかったのー)」
ジュン「別に僕を待つ必要は無いぞ」
キッチンへ入り自分の席に着くジュン
翠星石「何言ってるですか! みんなで食べたほうがおいしいに決まってるです!」
真紅「そうね。それに食事は暖かいうちにいただくのが作ってくれた人への礼儀よ」
ジュン「戻ってたのか…真紅」
ジュンが席に着くのを確認するとリビングのソファから自分の席へ向かう真紅
34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 22:49:00.39 ID:ldXTiZAH0
真紅をじっと見つめるジュン。そしてその視線に気づく真紅
真紅「どうしたのジュン?」
ジュン「いや…」
翠星石「…」
真紅を見つめるジュンに苛立ちを隠せない翠星石
のり「みんな揃った事だし、いただきましょうか」
雛苺「はーい」
42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 22:55:54.84 ID:ldXTiZAH0
ジュン「そういえば昼間はnのフィールドに行ってたんだって?」
真紅「え…」
自分へふられた質問に少し戸惑う真紅
真紅「えぇ…nのフィールドに居たわ。でも珍しくないことでしょ?」
ジュン「そうだな…」
真紅「ふふっ、あなたが私の行動に興味を持つなんて珍しいわね」
ジュン「別にそんなんじゃ…」
翠星石「しゃ、喋りながら食べるのは行儀が悪いですぅ!」
少しむくれ顔で言葉を発する翠星石
51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 23:03:49.42 ID:ldXTiZAH0
雛苺「真紅はnのフィールドで何をしてたのー?」
翠星石「チビチビ!」
のり「ふふふ、いいじゃない。お喋りしながらの食事も楽しいわ」
翠星石「…ですぅ」
のりの言葉に渋々うなずく翠星石
真紅「そう…夢を見ていたわ。遠い遠い昔の…」
55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 23:07:53.47 ID:ldXTiZAH0
ジュン「夢…」
真紅「深い眠りに落ちた私は夢の狭間の…」
翠星石「…記憶の扉を開いた、ですか…」
真紅「えぇ…」
のり「真紅ちゃんはどんな夢を見たのかなー?」
雛苺「ヒナも知りたいのー!」
61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 23:12:11.79 ID:ldXTiZAH0
真紅「ふふっそんな楽しい夢ではないわ」
雛苺「うゆ…怖い夢だったの?」
真紅「怖い夢…えぇ怖くて、そしてとても悲しい夢…」
のり「真紅ちゃん…」
翠星石「悲しい夢…ひょっとして真紅は」
ジュン「アリスゲーム…か?」
67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 23:16:53.88 ID:ldXTiZAH0
ガチャンッ!
手に持ったフォークを皿に落とす真紅
三体のドール達の視線はアリスゲームという言葉を発した口に集まっていた
真紅「何故、それを…ジュン」
ジュン「僕も…同じ夢を見たんだ」
翠星石「指輪…ですか」
雛苺「だからジュンもうなされてたのね…」
のり「え? え?」
ただならぬ雰囲気に戸惑うのり
70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 23:22:41.02 ID:ldXTiZAH0
真紅「…」
ジュン「さっき記憶の扉って言ってたよな」
翠星石「それは…」
ジュン「つまり僕の見た夢は昔のお前達ってことか?」
雛苺「ジュ、ジュン…」
ジュン「あのアリスゲームは…夢じゃ」
のり「ジュン君…」
ジュン「あの言葉は…」
真紅「ジュン!」
72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 23:29:18.77 ID:ldXTiZAH0
ジュン「うっ…」
真紅の叫びに気圧されるジュン
真紅「その話は後で話すわ…」
雛苺「真紅…」
ジュン「…ごめん」
翠星石「…」
のり「あらら…あらら…」
そしてドール達とジュンは無言で食事を終え各々の場所へ戻っていった
翠星石と雛苺はリビングへ
のりは後片付けのためキッチンへ
ジュンと真紅は二階のジュンの部屋へ向かった
75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 23:33:59.13 ID:r4FYsFwE0
あらまぁ・・・
76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 23:34:26.59 ID:ldXTiZAH0
真紅「どこから話そうかしら…」
ジュン「…」
真紅「ジュン、あなたも夢を見たといったわね。私に聞かせてくれないかしら?」
ジュン「お前が…アリスゲームを始めましょうって嬉しそうに言ってた」
真紅「…そう」
ジュン「今のお前からは想像できない、信じられない光景だった」
真紅「…」
ジュン「雛苺も翠星石も…」
81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 23:41:20.65 ID:ldXTiZAH0
ジュン「あれは…夢じゃないのか?」
真紅「…残念ながら事実よ」
ジュン「…」
真紅「遠い遠い昔の話だけれど、私はアリスゲームに妄信していたわ」
ジュン「お前が…?」
真紅「えぇ…それは私だけでは無く雛苺も、あの争いを好まない翠星石でさえ…」
ジュン「翠星石も…」
真紅「そう…私達はくる日もくる日もアリスゲームに傾倒し…戦った」
94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/03(金) 23:55:34.42 ID:ldXTiZAH0
ジュン「アリスになるため…ローゼンに会うためか」
真紅「…あの頃の私はそれ以外に生きる目的を…いえアリスになることのみが私達の原動力だったわ」
真紅「アリスゲームが私達の全てだった」
ジュン「でも今は…アリスにならなくてもいいと思ってるのか?」
真紅「それは違うわ、ジュン。私はアリスゲームを否定するけれどアリスに…お父様に会うのを諦めた訳ではないの」
ジュン「だってアリスゲームがお前達の父親にあう唯一の方法なんじゃあ…」
真紅「昔はね…私もそう思ったわ。でも長い年月をかけて幾多のミーディアムと触れ合うことで私の考えも変わったの」
真紅「アリスゲームが…アリスへの道の全てでは無いんじゃないかって」
110 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 00:09:56.99 ID:2Hdtgp2r0
ジュン「…じゃあ雛苺も翠星石も長い年月の中で今の考え方になっていったっていうのか」
真紅「そうね。翠星石の素直じゃない性格も雛苺のやさしい心もミーディアムとの触れ合いで培われていったものなの」
真紅「ふふっ、私のネコ嫌いも前のミーディアムのせいね」
ジュン「…」
真紅「あなたが見た夢の私達も今の私達も同じローゼンメイデンだけど…」
真紅「ジュン…今この時を貴方と一緒に生きてく事で私達の心は変わっていけるの」
122 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 00:16:57.44 ID:2Hdtgp2r0
ジュン「…」
真紅「ジュン…?」
ジュン「昔のお前達と今のお前達は違うってのは分かった。でも少し引っかかることが…」
真紅「…何かしら?」
ジュン「昔のお前達はアリスゲームが生きる…動く原動力と言ったな?」
真紅「えぇ、でも今はそれが全てでは…」
ジュン「ちょっとまって…」
真紅「…ジュン?」
132 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 00:22:25.22 ID:2Hdtgp2r0
ジュン「…それが本当なら…の…」
真紅の言葉を受け想像を巡らし一人思案するジュン
真紅「ジュン…」
ジュン「真紅」
真剣な眼差しで真紅を見つめるジュン
真紅「な、何かしら…」
少し頬を赤らませジュンに答える真紅
ジュン「これは僕の想像なんだけど、ローゼンの本当の目的…想いは…」
140 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 00:26:58.61 ID:2Hdtgp2r0
真紅「お父様の…?」
ジュン「あぁ、ローゼンは…」
シュバッ!
真紅「!?」
白い光がジュンの部屋を包み込み、光はジュンの体を飲み込んでいった
ジュン「う…うぁあああああああ!?」
真紅「ジュン! ジュン!」
141 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 00:28:01.72 ID:Nly93EAI0
なんだ、ジュンが宇宙人に改造されてJUMになる話か
148 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 00:33:07.51 ID:2Hdtgp2r0
パンッパンッパンッ
「さすがは第五ドールのミーディアム」
「ドールとミーディアムは似た者同士が惹かれあうといいますが」
「聡明なところまで一緒とは感嘆いたしました」
「で・す・が、パズルの最後のピースを完成させるのはドールの役目」
「残念ですがここでご退場いただきます」
真紅「あなたは…ラプラスの魔」
149 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 00:33:43.94 ID:UzWZGNas0
なん・・・だと
152 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 00:38:10.55 ID:qYhdNS9e0
いきなりエロ展開になったかと思った
153 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 00:39:09.61 ID:2Hdtgp2r0
真紅「ジュンを…私のミーディアムを返しなさい!」
ラプラスの魔「チッチッチ…」
人差し指を左右に振り拒否のサインを示すラプラスの魔
ラプラスの魔「ご機嫌如何かな? ローゼンメイデン第五ドール 真紅」
真紅「今どんな機嫌かわからなくって…ラプラスの魔ぁ!!」
右手をラプラスの魔へ向かってかざすと、その掌から無数の花弁がヒラヒラと舞い始めた
158 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 00:49:04.26 ID:2Hdtgp2r0
真紅「ローズテイル!」
真紅の掌から無数の花弁がラプラスの魔へ向かって放たれた
ラプラスの魔「おぉっと、怖い怖い」
ラプラスは軽々と花弁を交わし、飄々とした態度で真紅へ向き直った
真紅「くっ…」
ラプラスの魔「安心しなさい第五ドール。坊ちゃんは無事ですよ」
真紅「一体…何が目的なの!」
ラプラスの魔「目的・目標・道標 それを解き明かすのはあなたの役目」
真紅「何を言って…」
165 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 00:56:29.76 ID:2Hdtgp2r0
ラプラスの魔「坊ちゃんはパズルの最後のピースを手に入れてしまった」
真紅「パズルって…」
ラプラスの魔「そう…アリスの道標・目標・目的」
真紅「ア…リス」
ラプラスの魔「ですがいけません。最後の謎を解き明かすのは貴方達自身でなくては」
ゆっくりと光の中へ自分の体を溶け込ませていくラプラスの魔
真紅「!? 待ちなさい! ジュンを…ジュンを返しなさい!!」
ラプラスの魔「慌てなくても終着のベルには間に合います。あなたは最後のピースに手をかけているのですから…」
180 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 01:07:06.51 ID:2Hdtgp2r0
その体の大半が白い光に包まれ徐々に消え行くラプラスの魔
真紅「待って! ジュンを…ジュンを返して!」
ラプラスの魔「いずれ会うことになりましょう…そのいずれはもうすぐ傍に…」
真紅「お願い…返して…私の…ジュンを!」
ラプラスの魔「御機嫌よう、アリス…? いえ」
ラプラスの魔「ローゼンメイデン第五ドール…? いえ」
次々と呼び名を変えるがどれもしっくりこないとばかりに首をかしげるラプラスの魔
ラプラスの魔「そう…真紅。またお会いしましょう」
真紅「返して…返して…」
187 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 01:14:26.57 ID:2Hdtgp2r0
―――――――
翠星石「チビ人間の気配は…」
真紅「駄目…こっちも手がかり無しだわ」
雛苺「ジュン…ジュン…」
ジュンがラプラスの魔にさらわれて数日が経ち
ドール達はnのフィールドで自らのマスターを探し回っていた
190 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 01:21:56.36 ID:2Hdtgp2r0
翠星石「ラプラスの魔は何の目的で…」
真紅「ラプラスの魔はジュンがアリスの謎を解いた…と言っていたわ」
雛苺「アリスの謎…」
翠星石「アリスの謎って一体何ですか!」
真紅「それを私達自身が解かない限り、ジュンは戻ってこない…と」
雛苺「ジュン…」
翠星石「…だったらここで黙って待っててもしょうがねーです」
真紅「…」
翠星石「分かってるはずですよ、真紅。アリスの謎を解く鍵は…」
真紅「…アリスゲームの中に」
192 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 01:30:20.96 ID:2Hdtgp2r0
翠星石「分かってるですよ。真紅の辛い気持ちは…」
真紅「私は…」
雛苺「ヒナはね、ジュンを助けたいの!」
真紅「雛苺!?」
翠星石「雛苺も翠星石と同じ気持ちですか」
雛苺「だから…」
翠星石「なら、さっそく行くですよ!」
真紅「待ちなさい! 貴女達がやろうとしてることは…」
翠星石「でもやらずにはいられないんです…例え今までの自分を否定しようとも…」
翠星石「チビ人間を…ジュンを思う気持ちはとめられねぇーんです!」
194 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 01:39:35.79 ID:2Hdtgp2r0
真紅「翠星石…」
翠星石「無理にとは言わないですよ…真紅はやさしいですから」
翠星石「だから真紅にはそのまま…今のままで居て欲しいんです」
雛苺「ヒナね…真紅の家来になれてよかったの…」
雛苺「今までのミーディアムも大好きだったけどジュンと真紅と翠星石と一緒に暮らすこの時間が一番大好きになったの」
真紅「雛苺…」
雛苺「だから大好きなジュンと真紅の為に…」
翠星石「しっかりと翠星石達のアリスゲームを見てアリスの謎を解き明かすんですよ!」
197 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 01:47:58.61 ID:2Hdtgp2r0
真紅「ま、待ちなさい!」
雛苺「真紅…オ ルヴォワール」
翠星石と雛苺は真紅に一瞥しそのまま振り返らずにnのフィールド彼方へ飛び立っていった
真紅「雛苺…! 翠星石…」
真紅「私は…私はどうすれば…」
真紅「ジュンを助けたい…でもアリスゲームは…」
真紅「私は…私は…」
202 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 02:01:35.63 ID:2Hdtgp2r0
―――――――
めぐ「ねえ、水銀燈…」
水銀燈「…何よ」
めぐ「水銀燈の大事なものってなあに?」
水銀燈「ふん…お父様に決まってるじゃない」
めぐ「お父さん…か」
水銀燈「…」
めぐ「二番目でもいいから私、水銀燈の大切なものになりたいわ」
水銀燈「…馬鹿じゃないの」
203 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 02:09:58.42 ID:2Hdtgp2r0
めぐ「水銀燈は自分が好き?」
水銀燈「何を言い出すのよ…」
めぐ「私は自分が大キライ。だって壊れてるもの」
めぐ「だけど、水銀燈の一部になれたら…きっと自分が好きになれるかも」
水銀燈「…」
めぐ「私が水銀燈の一部になったら私の事を好きになってくれるよね」
水銀燈「付き合ってられないわ…」
水銀燈は病室の窓から身を乗り出し病院の屋上へと飛び立っていった
めぐ「水銀燈…」
205 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 02:16:40.18 ID:2Hdtgp2r0
水銀燈「お父様…めぐ…」
シュル…シュル…
白い茨が地面を伝い水銀燈の足元へ伸びていった
水銀燈「!」
シュシュシュ
咄嗟に飛び退き白い茨に向かって羽根を乱射する水銀燈
水銀燈「誰!?」
「さすがは第一ドール…そう隙は見せてくれないね」
206 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 02:24:02.72 ID:2Hdtgp2r0
水銀燈「あなたは…!?」
「僕の大事なものを返してくれないか」
水銀燈「…」
「君の一番大事なものと交換でもいいんだよ」
水銀燈「大事なもの…」
「そう、君のミーディアム…柿崎めぐ」
水銀燈「…ちっ、私の大事なものは…」
シャシャシャ!
四枚の翼を羽ばたかせ声の主に向かって羽根を繰り出す
水銀燈「お父様だけよ!」
211 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 02:32:19.70 ID:2Hdtgp2r0
乱射された羽根は白い茨に阻まれ声の主に届くことはなかった
「じゃあ、君のミーディアムを貰ってもいいよね」
水銀燈「いいわけ…ないでしょ!」
ガバッ!
茨を掻き分け声の主に掴みかかる水銀燈
そしてそのまま喉を締め上げる
水銀燈「一体何のつもりよ! こんな紛い物を担ぎ出してきて」
「紛い物とは酷いなあ…これでも本物ですのよ?」
水銀燈「あなた…」
212 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 02:40:00.18 ID:2Hdtgp2r0
「まあ動揺を誘えればいいと思いましたが…」
声の主が右手をかざすと水銀燈の足元から茨が伸び
その体を絡め取っていった
水銀燈「ぐっ…」
水銀燈「舐めるんじゃないわよぉ!」
ブチブチィ!
水銀燈は四枚の翼を展開し絡みついた茨を引きちぎっていった
「あらあら…」
水銀燈「あなたが蒼星石じゃないって分かってるのよ! 正体を現しなさい!!」
213 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 02:46:43.65 ID:2Hdtgp2r0
水銀燈「いつまでもかくれんぼを続ける気なら、こっちにも考えがあるわよぉ!」
バサッバサッ!
四枚の翼を大きく震わせ四方へ羽根を飛ばす体勢を作る水銀燈
「ふふふ…青薔薇のお姉様の体を傷物にするわけにはいきませんね」
シュル…シュル…
蒼星石の体を白い茨が包み込み、中から白い衣装を纏ったドールが姿を現した
水銀燈「あなたは…」
雪華綺晶「始めまして、黒薔薇のお姉様。私はローゼンメイデン第七ドール 雪華綺晶です」
218 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 02:58:16.62 ID:2Hdtgp2r0
水銀燈「第七ドール…!?」
雪華綺晶「ふふっ驚かれるのもしょうがありませんね。何せ体は青薔薇のお姉様のもの」
水銀燈「その体…本物の蒼星石のものだっていうの?」
雪華綺晶「はい…都合よくローザミスティカと魂を抜かれた器。有効に使わせてもらってますわ」
水銀燈「…」
雪華綺晶「これも黒薔薇のお姉様のおかげ。ふふふ…」
水銀燈「…で、その体を使ってアリスゲームをやろうっていうの?」
雪華綺晶「いえ、ひとつ協力の申し出をしようと思いまして」
水銀燈「協力?」
219 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 03:08:14.61 ID:2Hdtgp2r0
雪華綺晶「ええ、あなたがご所望のローザミスティカの収集に協力したいと」
水銀燈「ローザミスティカを…」
雪華綺晶「一人で姉妹達と渡り合うのも限界があると思いませんか?」
水銀燈「ふんっ!」
ガシッ
雪華綺晶の喉を掴み上げぎりぎりと締め上げていく
水銀燈「なら…あなたのローザミスティカからよこしなさいよぉ!」
雪華綺晶「ふふっ、こんなものでよろしければ…」
雪華綺晶が右手の拳をゆっくり開くと、そこには虹色に輝く結晶が静かに光を放っていた
221 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 03:13:04.43 ID:2Hdtgp2r0
水銀燈「なっ!?」
雪華綺晶「如何されました? 持っていってもよろしいのですよ」
ズサッ!
喉元を掴んだ手を離し、一足飛びに距離をとる水銀燈
水銀燈「あなた…一体!?」
雪華綺晶「ふふふ…私は最後のローゼンメイデン 末妹の雪華綺晶ですわ」
223 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 03:22:14.24 ID:2Hdtgp2r0
水銀燈「あなたの…本当の目的は何よ」
雪華綺晶「という事は私と協力するつもり…と受け取ってもよろしいですね」
水銀燈「目的は何って聞いてるのよ! ローゼンメイデンならお父様に…アリスになるのが目的でしょ!」
水銀燈「アリスになるためにはローザミスティカが必要なはず。あなたは一体…」
雪華綺晶「ふふっ私の目的はミーディアム…柿崎めぐを頂くこと」
水銀燈「めぐ…を?」
雪華綺晶「ええ、何も問題は無いでしょう。あなたの大事なものはお父様ただ一人であるのだから」
水銀燈「…」
225 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 03:28:41.83 ID:2Hdtgp2r0
雪華綺晶「今すぐにとはいいません。まずは貴女と共にローザミスティカの収集に協力しましょう」
水銀燈「…」
雪華綺晶「ほら、ローザミスティカが向こうからやってきましたよ」
水銀燈「え…?」
翠星石「水銀燈! 翠星石達とアリスゲームを始めるですよ!」
228 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 03:35:02.65 ID:2Hdtgp2r0
水銀燈「翠星石…」
翠星石(戦いは嫌いですけど蒼星石のローザミスティカを奪った水銀燈となら本気で戦えるですよ)
雛苺「うゆ…傍にいるドールは?」
雪華綺晶「始めまして、緑薔薇と桃薔薇のお姉様方。私はローゼンメイデン第七ドール 雪華綺晶です」
雛苺「第七ドール…」
翠星石「…雪華綺晶」
229 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 03:42:40.22 ID:2Hdtgp2r0
水銀燈「どういう風の吹き回しぃ? 戦いの嫌いな貴女達がアリスゲームなんて」
翠星石「こっちにはこっちの事情というものがあるんですよ…」
雛苺「ごめん…なの。水銀燈」
翠星石「何を謝ってるですか! まだ戦ってもいねぇーですよ!!」
雪華綺晶「くすくす…」
翠星石「何がおかしいですか…」
雪華綺晶「いえね…こういう時に言うセリフは ありがとう だと思いまして」
雛苺「ありがとう?」
雪華綺晶「ええ…ローザミスティカを持ってきてくれてありがとうってね!」
230 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 03:47:55.95 ID:2Hdtgp2r0
シュルルルッ!
翠星石「くっ…」
無数の茨が翠星石の体を絡めとり屋上に設置された鏡の中へ引き込んでいった
雛苺「翠星石ーッ!!」
雪華綺晶「桃薔薇のお姉様の相手はお願いしますね。黒薔薇のお姉様」
水銀燈「待ちなさい! まだ私は協力すると言った訳じゃ…」
水銀燈の言葉を最後まで聞くことは無く、雪華綺晶は鏡の中へ飛び込んでいった
231 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 03:53:52.58 ID:2Hdtgp2r0
水銀燈「…」
雛苺「水銀燈…」
水銀燈「アリスゲームの舞台から降りたあなたが今更何を…」
雛苺「それでもヒナは…」
シュル…シュル…
雛苺「戦わなくちゃいけないの!」
雛苺の足元から蔦が伸び、水銀燈へ向かって走り出した
232 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 04:00:29.18 ID:2Hdtgp2r0
水銀燈「こんなもの!」
水銀燈が宙に舞い、空中から雛苺へ向かって一直線に飛び掛った
雛苺「あっ…」
ガッ
水銀燈のブーツが雛苺の体を捉え、後方へ蹴り飛ばす
雛苺「あう!」
水銀燈「もう一度アリスを目指そうっていうの…?」
雛苺「それでもヒナは…」
よろよろと体を起こし水銀燈へ向かって歩みを進める雛苺
水銀燈「答えなさい! あなたは何のためにアリスゲームを…戦いをするっていうの!!」
235 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 04:07:37.59 ID:2Hdtgp2r0
雛苺「ヒナは…ヒナは…ジュンや真紅の為に…」
おぼつかない足取りで一歩ずつ水銀燈へ近づいていく
水銀燈「あの人間や真紅のため?」
雛苺「そう…ヒナは大好きなジュンと真紅の為に戦うの…苺わだち!」
シュルシュル!
水銀燈「…ざけ…」
雛苺(力を貸して…ジュン)
水銀燈「ふざけるんじゃないわよぉ!!!」
238 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 04:16:10.05 ID:2Hdtgp2r0
バリバリバリッ!
水銀燈は床に張り巡らされた苺わだちをなぎ払いそのまま雛苺へ体当たりを繰り出した
そして雛苺へ掴みかかり馬乗りの形になった
雛苺「あ…ぅ…」
水銀燈「もう一度言ってみなさいよ! 人間や真紅のためですって!?」
水銀燈「何馬鹿なことを言ってるの! 私達ローゼンメイデンにアリス以外の目的なんかある訳無いじゃない!!」
雛苺「違うの…」
水銀燈「ふんっ! 何が違うのよ!! アリスになってお父様の寵愛を受ける事が私達の…」
真紅「雛苺から離れなさい!」
239 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 04:20:15.05 ID:2Hdtgp2r0
水銀燈「真紅…」
雛苺「…真紅」
真紅「今すぐ雛苺から離れなさい、水銀燈!」
水銀燈「ふぅん…遅れて本命の登場って訳?」
ググッ
雛苺「ぅ…」
雛苺の喉を両手で締め上げる水銀燈
真紅「!? やめなさい!!」
水銀燈「それ以上近寄ると…この子がジャンクになるわよぉ」
241 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 04:27:15.84 ID:2Hdtgp2r0
真紅「雛苺…」
水銀燈「さあ、さっきの続きよぉ。雛苺…あなたは何のために何の目的で生きるの」
水銀燈「アリスゲームの舞台を降り…そして真紅の小間使いとして生き続ける」
水銀燈「あなた何のために…何を目標に生きていくの?」
雛苺「ぅ…」
真紅「雛苺!」
水銀燈「動くなっていったでしょ!」
ぐぐっ…
真紅「くっ…」
水銀燈「さぁ答えなさい、雛苺。あなたの生きる…動く原動力は…」
243 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 04:32:37.32 ID:2Hdtgp2r0
雛苺「ヒナは…ヒナは…」
水銀燈「さぁ…」
真紅「くっ…」
雛苺「ヒナは…ジュンや真紅の為に…」
水銀燈「!!」
グググッ
雛苺「かっ…く…」
水銀燈は渾身の力で雛苺の首を締め上げていく
真紅「雛苺!」
244 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 04:36:56.90 ID:2Hdtgp2r0
水銀燈「あなたアリスを…お父様を否定するって言うの!」
真紅「やめなさい! 水銀燈!!」
水銀燈「うるさい!!!」
シュババッ!
真紅「!」
真紅に向かって羽根を乱射する水銀燈
水銀燈「私達の動く原動力はアリスに…お父様に会うためにあるのよ。それをあなたは…」
雛苺「ぅ…くっ…」
真紅「やめなさい、水銀燈! お願い、やめて!!」
245 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 04:44:23.33 ID:2Hdtgp2r0
水銀燈「なら言ってみなさい…あなたのお父様への思いを…」
水銀燈「姉妹同士で戦わせる…アリスゲームという惨劇の舞台の元凶を…」
雛苺「お…父様…」
水銀燈「さぁ…」
雛苺「ヒナは…」
雛苺「ヒナは…みんなと…仲良く暮らしたかった…」
雛苺「戦いなんて…キライ…」
雛苺「そして…」
真紅「や、やめなさい…雛苺…」
247 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 04:51:59.84 ID:2Hdtgp2r0
雛苺「そして…」
真紅「やめなさい雛苺! それ以上口に出してはいけないわ!!」
水銀燈「あなたは黙ってなさい!!」
シュバッ!
真紅「くっ…」
雛苺「ヒナ達にこんなことをさせる…お父様が…」
真紅「雛苺ーーーーっ!」
雛苺「お父様が…」
雛苺「…キライだった…」
248 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 04:59:06.10 ID:2Hdtgp2r0
シュバッ!
水銀燈「何!?」
真紅「この光は…!」
白い光が雛苺の体を包み込み、雛苺の体は光の中へ溶け込んでいった
雛苺「…」
真紅「雛苺っ!」
真紅は咄嗟に駆け出し光の中へ手を伸ばした
真紅「この手を掴んで、雛苺!」
雛苺「…」
真紅「雛苺……!」
シュパン!
真紅の救いの手を掴むことなく雛苺の体は白い粒子となって消え去った
249 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 05:06:54.54 ID:2Hdtgp2r0
真紅「あっ…あっ…」
真紅「うっ…雛苺……」
水銀燈「くくっ…」
真紅「…水銀燈?」
水銀燈「あ〜っはっはっ…」
真紅「……何がおかしいの…」
水銀燈「何がって…創造主を否定して生きていられる訳が無いじゃないの…くくっ…あ〜っはっは」
真紅「……それ以上耳障りな声を聞かせないで…」
水銀燈「くくっ…怒ってるの? 真紅。でもねあなたも同じ末路を辿ることになるのよ」
真紅「…」
水銀燈「アリスゲームを否定するあなたも遠からずお父様を否定することになるのよ!!」
250 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 05:11:54.66 ID:2Hdtgp2r0
水銀燈「そうよ! お父様を否定して生きていられる訳が無いのよ!! くくっ…うっ…」
水銀燈の頬を一粒二粒と涙が伝い落ちていった
真紅「涙…?」
水銀燈「私達は…ローゼンメイデンはアリス以外の道なんてありっこないのよ!!」
水銀燈「さぁ真紅ぅ!」
水銀燈「アリスゲームを始めましょう!!」
真紅「くっ…」
252 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 05:20:57.72 ID:2Hdtgp2r0
―――――――
雪華綺晶「さあさ、私を倒さなければ桃薔薇を助けには行けないですよ…緑薔薇のお姉様」
翠星石「っ…(こいつ強いですぅ…)」
翠星石(でも誰が相手であろうとアリスゲームの答えを見つけるため…ジュンを助けるために…)
翠星石「やるしかねぇーんです!!」
翠星石「スィドリーム!」
人工精霊からまばゆい光が放たれ、光球から庭師の如雨露が姿を表した
254 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 05:28:28.12 ID:2Hdtgp2r0
翠星石「健やかにー伸びやかにー」
コォオオオォ…
庭師の如雨露から水が降り注ぎ、辺り一体を深い霧がたちこめた
雪華綺晶「ほぅ…」
翠星石(戦いは苦手ですけど…頑張るですよ)
シュッ…
雪華綺晶「霧に紛れての攻撃ですか…戦いが苦手だといっても中々」
255 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 05:37:39.97 ID:2Hdtgp2r0
雪華綺晶「緑薔薇のお姉様。ひとつご忠告申し上げますが、あなたは私に勝つことは出来ません」
翠星石(何を言うかと思えば…翠星石に声を出させて居場所でも探る気ですかね)
雪華綺晶「例えアリスゲームとはいえ姉妹の体を傷つけることは好みません。おとなしく降参していただけませんか?」
翠星石(そのセリフは翠星石に勝ってからいうです!)
シュッ!シュッ!
雪華綺晶の四方から蔦が襲い掛かり体の自由を奪っていった
雪華綺晶「ふぅ…聞いてはいただけないのですね」
翠星石「こんな状況でまだ強がりを言うですか!」
雪華綺晶「……やっと声を聞かせてくれたね」
翠星石「え…?」
256 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 05:44:13.74 ID:2Hdtgp2r0
雪華綺晶「翠星石…苦しいよ。早くこの縛めを解いて…」
翠星石「う、嘘ですよ…蒼星石は水銀燈にローザミスティカをとられて…」
雪華綺晶「苦しいよ…翠星石……」
翠星石「そ、蒼星石…」
シュル…
つい力を緩めてしまう翠星石
雪華綺晶「甘いですね…お姉様」
翠星石「なっ…」
257 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 05:52:39.84 ID:2Hdtgp2r0
シュルルルルルゥ…
翠星石「くっ…うぁ…」
白い茨で翠星石の体を絡めとり先程とは逆の立場になる二体
雪華綺晶「ふふ…形勢逆転といった所ですかね。この霧のおかげで白い茨を忍ばせることも容易でしたよ」
翠星石「な、何故…」
雪華綺晶「あぁ…申し遅れましたが、この体はあなたの双子の妹、蒼星石なのです」
翠星石「そんな…」
雪華綺晶「ほら、この通り」
クルッ
雪華綺晶がその場で旋回すると白い衣は青に変わり、その両目は緑と赤のオッドアイへ変わった
258 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 05:58:54.19 ID:2Hdtgp2r0
翠星石「あっ…あ…」
雪華綺晶「ふふっ…双子の貴女なら分かりますよね。この体が本物だって」
翠星石「な、なんで蒼星石の体が…」
雪華綺晶「例え双子の妹であろうとも手を出せないようであれば、あなたにアリスの資格なんてありっこないですよね」
翠星石「くっ…」
雪華綺晶「……ひとつお聞きしたいのですがあなたの生きる…動く原動力は何ですか?」
259 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 06:05:07.02 ID:2Hdtgp2r0
翠星石「何を…?」
雪華綺晶「いえね…双子の妹が討てないあなたがアリスを目指してるとも思えませんし…」
雪華綺晶「何の為に生きているのかと思いまして…」
翠星石「…」
雪華綺晶「私達ローゼンメイデンの目的は至高の少女、アリスとなってお父様に会うこと…」
雪華綺晶「なのに…当の本人にアリスになる気は無し。何があなたをここまで突き動かすのですか?」
翠星石「それは…」
水銀燈「くだらなぁい理由よ」
260 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 06:11:07.69 ID:2Hdtgp2r0
翠星石「水銀燈!?」
雪華綺晶「おや…黒薔薇のお姉様。仕事がお早い事で」
水銀燈「はい、これが成果よ」
ポイッ
水銀燈は無造作に引きずっていたモノを翠星石の目の前に放り投げた
真紅「うっ…」
翠星石「し、真紅!」
雪華綺晶「あら、桃薔薇のお姉様はどうされました?」
水銀燈「消えたわ」
翠星石「!?」
261 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 06:16:00.30 ID:2Hdtgp2r0
雪華綺晶「消えた…とは?」
水銀燈「言葉通りよ…白い光になってぱぁーっと消えちゃったの」
翠星石「う…嘘です!」
水銀燈「嘘じゃないわよ。あの子はね創造主を…お父様を否定したの」
翠星石「そんなの…信じられんです! 真紅、嘘って…嘘って言ってくれです!!」
真紅「…」
翠星石「そんな…」
262 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 06:21:01.29 ID:2Hdtgp2r0
翠星石「こんなの嘘です嘘です! お父様がそんなことする筈が…」
雪華綺晶「ふふっ…嘘かどうか確かめてみればいいじゃないですか?」
翠星石「え…?」
水銀燈「…」
真紅「まさか…」
雪華綺晶「あなた自身の口で確かめてみればいいと言っているんです」
263 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 06:28:18.22 ID:2Hdtgp2r0
真紅「!? お願い! やめて!」
水銀燈「…」
翠星石「え…あ…」
雪華綺晶「さて緑薔薇のお姉様、あなたにお尋ねします」
雪華綺晶「あなたの大事な妹、蒼星石。そして私達ローゼンメイデンの本能ともいえるお父様への愛…」
真紅「やめて! お願い…これ以上私から大事なものを奪わないで!!」
ガッ
真紅「うぁ…」
水銀燈「慌てなくても次は貴女の番よ…」
266 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 06:34:13.78 ID:2Hdtgp2r0
雪華綺晶「お父様と蒼星石…貴女はどちらを愛しているのですか?」
真紅「答えないで…翠星石!」
水銀燈「偽りの答えを言えばその愛は嘘になる。さあ貴女はどちらを愛しているんでしょおねえ…」
翠星石「翠星石は…翠星石は…」
雪華綺晶「さあ、緑薔薇のお姉様…お答えを」
翠星石「翠星石は…」
267 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 06:38:49.96 ID:2Hdtgp2r0
翠星石「翠星石は…お父様を愛しているです」
真紅「翠星石…」
水銀燈「…」
雪華綺晶「それが本当の答えなのですか?」
翠星石「でも…でも…それ以上に……」
真紅「え…」
水銀燈「あなた…」
雪華綺晶「ふふっ…」
翠星石「翠星石は……蒼星石を愛しているです! そう…お父様以上に!!」
269 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 06:49:08.57 ID:2Hdtgp2r0
翠星石「例えお父様に会うことが適わなくても…蒼星石を手にかけるくらいなら…」
真紅「翠星石!」
翠星石「翠星石はアリスになんかなりたくねぇーです!!」
水銀燈「……馬鹿ね…」
雪華綺晶「ふふっそれが真実…あなたにはアリスになる資格なんて最初っから無かったんです」
シュバッ!
白い光が翠星石の体を包み込み、翠星石の体は光の中へ消えつつあった
真紅「翠星石! 翠星石!」
翠星石「真紅…翠星石は後悔なんてこれっぽっちもしてねぇーです」
翠星石「言いたいことを言い、好きなように生きる…それが翠星石です。それを否定されるくらいなら…」
翠星石「創造主だろうと…お父様だろうと真っ向から立ち向かってやるです」
真紅「翠星石…」
270 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 06:56:34.08 ID:2Hdtgp2r0
翠星石「でも…でも…こんな事になっても…うっ…」
翠星石の目から大粒の涙が零れ落ち、ドレスに大きな染みを作っていった
翠星石「翠星石は…お父様が大好きですよ…」
翠星石「かすかな記憶しかありませんが、お父様の抱っこの…あの大きな胸は暖かかったんです…」
真紅「翠星石…」
翠星石「一番は蒼星石ですけど…お父様だってそれに劣らず好きで…愛して…」
シュパン!
翠星石の体は光の粒子となってその場から消え去った
273 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 07:07:01.13 ID:2Hdtgp2r0
真紅「翠星石…」
雪華綺晶「さぁ…次は貴女の番ですよ。紅薔薇のお姉様」
水銀燈「…」
真紅「雛苺…翠星石…」
雪華綺晶「寂しいことなんてありませんわ…桃薔薇も緑薔薇もきっとあちらの世界でお待ちですわ。ふふっ」
真紅「あちらの世界…?」
雪華綺晶「まあドールにあの世の世界があればの話ですがね。ふふふ」
雪華綺晶「さぁお答え下さい。紅薔薇のお姉様」
真紅「その必要は無いわ」
275 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 07:15:42.26 ID:2Hdtgp2r0
雪華綺晶「今更怖気付いたのですか?」
真紅「いいえ、分かったの…アリスの謎が」
水銀燈「アリスの謎? この後に及んで何を言い出すの」
水銀燈「あなたは負けたのアリスゲームに…それも戦ってではなく自らのリタイアでね」
真紅「雛苺や翠星石そして雪華綺晶と水銀燈…貴女達が教えてくれたんだわ」
水銀燈「…どうしたの、この子…壊れちゃったの?」
雪華綺晶「こんな状況で時間稼ぎも必要ないでしょう。お聞きします、紅薔薇のお姉様 あなたは…」
真紅「必要ないと言っているわ。私はアリスゲームを…アリスを否定する!」
278 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 07:24:30.57 ID:2Hdtgp2r0
水銀燈「なっ…!?」
雪華綺晶「自ら…」
シュバッ!
白い光が真紅の体を包み込み始めた
真紅「…」
水銀燈「何をやっているの! 自殺のつもり!?」
雪華綺晶「さすがは高貴な第五ドール…引き際も美しいですわ」
真紅「……今の貴女達では無理かもしれないけど、きっといつか分かる日がくるわ」
雪華綺晶「え…」
水銀燈「何を言って…」
シュパン!
真紅の体は光の粒子となってその場から消え去った
280 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 07:35:38.19 ID:2Hdtgp2r0
水銀燈「し、真紅!」
スッ!
水銀燈は真紅が居た場所に手を伸ばしたが、その手は虚しく空を掴むのみであった
水銀燈「真紅……」
雪華綺晶「よほどお気に入りのようでしたね…紅薔薇のお姉様が」
水銀燈「…」
雪華綺晶「ふふっ…これは失礼。私が居ては涙も流せませんものね」
水銀燈「…消えなさいよ」
雪華綺晶「今は退きますが、ローゼンメイデンは全部で七体。黄薔薇のお姉様の事もお忘れなく…」
白い茨に身を包み、その場から立ち去る雪華綺晶
水銀燈「…真紅…真紅…真紅ぅぅうーーーーーーーーっ!!」
nのフィールドに水銀燈の叫びがこだました
282 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 07:40:28.89 ID:2Hdtgp2r0
・・・・・・
「…ん…真…」
「真紅!」
真紅「はっ…」
「やっと目を覚ましたか」
真紅「あっ…あ…」
「おいどうした? どこか壊れたのか」
真紅「ぶ、無事だったのね…もう会えないものかと……」
284 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 07:43:32.65 ID:2Hdtgp2r0
真紅「ジューーーン!」
ガバッ
ジュン「わっ!?」
真紅は傍らに座るジュンに向かって雛苺のように飛び掛った
真紅「会いたかったわ、ジュン! ジュン!」
ジュン「お、おい離れろよ…」
真紅「もう少し…もう少しだけこのまま……」
ジュン「……しょうがないな」
285 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 07:48:01.88 ID:2Hdtgp2r0
真紅「…」
ジュン「…」
真紅&ジュン「あ、あの…」
真紅「あ、あなたから…」
ジュン「お、お前から…」
真紅「…」
ジュン「…」
真紅&ジュン「あ、あの…」
真紅「…」
ジュン「…」
パンッパンッパンッ
287 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 07:55:01.91 ID:2Hdtgp2r0
ラプラスの魔「これはこれは初々しいお二方。まるで恋人のようですな」
真紅「なっ!」
ジュン「…」
ラプラスの魔「まあまあお二方の蜜月を邪魔したことは謝ります。ですが私の方もあなた方を主の下へお連れせねばいけないので…」
真紅「主…」
ジュン「…ローゼン…だな」
ラプラスの魔「はい、さすがは聡明なお二方ですな」
ジュン「か、からかうな!」
真紅「…」
289 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 08:02:36.22 ID:2Hdtgp2r0
ラプラスの魔に連れられ、長い廊下を進む真紅とジュン
ジュン「お前がここに居るってことは…分かったんだなアリスの意味が」
真紅「ええ…でもここに来るまでは半信半疑…半ば賭けみたいなものでしたけど」
ジュン「お、おまえそれでよくあの言葉を言えたもんだな…」
真紅「ふふ…冗談よ。雛苺が消えた時点で薄々分かってはいたけど…」
真紅「確証に変わったのは翠星石の言葉を聞いた時よ」
真紅「あの子はお父様をはっきりと愛してると言った」
真紅「そんな子を見捨てるほど私達のお父様は愚か者ではないのだわ」
ジュン「愚か者ね…怖くないのか? 創造主をそんな風に言って」
真紅「だって私は信じているんですもの…お父様を」
291 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 08:12:04.68 ID:2Hdtgp2r0
ラプラスの魔「さあ、お二方お喋りはここまでです。主の部屋に着きましたよ」
二人は白い工房のような部屋に通され、部屋の中央には静かに男が佇んでいた
その膝の上には赤子のように安らかに眠る二体のドールの姿があった
ジュン「雛苺! 翠星石!」
真紅「あっ…あ…」
真紅は視線は部屋の中央の男に注がれ、真紅の視線に気づいた男は穏やかな顔で微笑を返した
真紅「お父…様」
293 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 08:17:57.24 ID:2Hdtgp2r0
ジュン「あれが…ローゼンなのか…真k…」
真紅「お父様ー!」
タタタッ
ジュンの言葉の全てを聞かず、真紅は男の…ローゼンの胸に飛び込んでいった
真紅「お父様…会いたかった…会いたかったわ!」
ローゼン「あぁ…私もだ。真紅」
ジュン「ふん…よかったな、真紅」
少しふてくされたような表情で親子の対面を見守るジュン
294 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 08:23:07.72 ID:2Hdtgp2r0
真紅「お父様! お父様!」
雛苺「うっぅーん…うるさいのー…」
翠星石「うー何ですか…騒がしい」
ローゼン「起こしてしまったか…」
ラプラスの魔「いいではありませんか、丁度役者も揃ったことです。お話を始めるにはいい頃合かと」
ローゼン「そう…だな」
ローゼン「真紅…翠星石…雛苺…そして少年、すこし昔話を聞いてくれないか?」
ジュン「え?…はい」
297 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 08:38:23.01 ID:2Hdtgp2r0
昔…とある人形師がそれはそれは美しい人形を作った
その人形師は思った。この人形に命を吹き込みたい…と。
人間と同じ、自ら考えて動く人形
そして男は長年の錬金術の研究の後、生命の石…ローザミスティカを生み出した
そして男はローザミスティカを七つに割りそれを六つのドールへ分け与えた
男は歓喜した。これでこの人形達は命を持った…と
だが人形は自ら動こうとしない。簡単な命令は聞くもののまるで操り人形だ。
自ら考えて動かなければ人形と同じではないか。男は考えた
人間は生まれて誰から教えられたものでもなく母親のお乳にすがりつく
これは生きるという本能からきているものだ。
人間は生まれてすぐ生きるための戦いを始める。そう生きるということは戦いなのだ
300 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 08:54:26.37 ID:2Hdtgp2r0
男は人形達に本能を与えることを考えた
だがどうしたものか…本能というものは与えられるものではなく生まれ持ってくるものだ。
ある日男は人形に自分の服を持ってくるよう命じた
するとどうしたことだろう? 銀髪のドールと赤い服のドールが私の服を巡って争いあっている
いつもなら命令どおりにしか動かない人形が私の意に反する行動をしている
私の頭に一筋の光明がさした。この人形達の本能は私に愛されたいという事か…と
そして偶然二体のドールは私に愛されたいがばかりに主人の意に反して争いを始めた
争いの中から人は切磋琢磨し成長する。私は人形達を競い合わせ心の成長を願うことにした
無論私の願いは人形達を人間に近づけること
それぞれの人形に人工精霊を与え性質の近い人間の元へ置く事によって
その人間の考えや行動を学ばせようとした
そして長い年月を経てその人形達は私に愛されたいという偽りの本能を破り自ら生きる道を選ぶことが出来た
302 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 09:05:04.80 ID:2Hdtgp2r0
ジュン「つまりアリスは…」
真紅「偽り…」
雛苺「じゃあ今までの戦いは…」
翠星石「…」
ローゼン「…今まで悲しい思いをさせたことはすまないと思っている」
ローゼン「だが、お前達は今やローゼンメイデンという呪縛から解き放たれ、真紅、翠星石、雛苺として生きていくことができるんだ」
ローゼン「ここからはお前達の人生を…本能のままに生きなさい」
翠星石「待って!」
307 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 09:15:45.78 ID:2Hdtgp2r0
翠星石「蒼星石は…蒼星石はどうなるんですか!」
真紅「まだ残った水銀燈や…」
雛苺「雪華綺晶は!」
ローゼン「残念ながら…彼女達はまだアリスの呪縛に囚われたままだ」
ローゼン「今お前達が真実を話したところで信じはしないだろう」
ローゼン「そこでお前達に問う」
ローゼン「残ったドール達と別世界で生きるか」
ローゼン「ここで永い眠りにつくか」
ローゼン「現在のドール達を眠りにつかせお前達は元の世界へ戻る」
ローゼン「さあ選びなさい」
雛苺「ヒナは…」
翠星石「翠星石は…」
真紅「私は…」
309 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 09:24:25.52 ID:2Hdtgp2r0
―――――――
ラプラスの魔「嬉しそうですね」
ローゼン「あぁ…こんなに嬉しいことは無い」
ラプラスの魔「ふふっあなたのその顔、自分の子供の成長を目の当たりにしたようですよ」
ローゼン「自分の子供…そうだな。彼女達は私の娘だ」
ローゼン「子供の成長とは親の想像を上回るものだな」
ローゼン「あの子達は一番過酷で一番私の望む答えを出してくれた」
ラプラスの魔「ふふふ、それはあの子達があなたを思い愛してくれるからですよ」
ローゼン「私には見える…姉妹全員が手を取り合い助け合っていく姿が」
ラプラスの魔「それも遠くない将来にね」
ローゼン「今日は気分がいい。ラプラス、紅茶を入れてくれないか?」
ラプラスの魔「はいはい…ふふっ」
311 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 09:27:51.18 ID:2Hdtgp2r0
―――――――
金糸雀「くっ! 攻撃のワルツ!!」
水銀燈「遅いわ!」
雪華綺晶「あなたのミーディアム頂きますわ」
金糸雀「このままじゃ…」
「待ちなさい!」
312 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 09:35:13.68 ID:2Hdtgp2r0
金糸雀「み、みんな!」
雪華綺晶「な、何故貴女達がここに…」
水銀燈「し、真紅!?」
雛苺(ヒナ達はみんな同じ答えを出したの)
翠星石(それはアリスゲームを継続し続けること)
真紅(他のドール達のアリス以外の生きる目標が見つかるまで戦い続けると)
翠星石(待っててくれです、蒼星石。いつかきっと…)
水銀燈「あ、あなたがあれ位で参ったとは思って無かったわぁ! いくわよ真紅!!」
真紅「くすっ、相変わらずね水銀燈…」
真紅「さあ、アリスゲームを始めましょう」
おわり
314 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 09:40:58.28 ID:2Rbti14QO
>>1乙!
315 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 09:44:32.71 ID:hYlE01b6O
>>1乙
超乙
321 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/04(土) 10:09:07.50 ID:reEEmLVXO
>>1乙 面白かったよ
---------------
当ブログについて
※欄406さんありがとうです。
------------
お絵かき掲示板よりうな重さんありがとうです。
ヤン・シュヴァンクマイエル アリス [DVD] | |
ヤン・シュヴァンクマイエル コロムビアミュージックエンタテインメント 2005-02-23 売り上げランキング : 1296 おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
読み物:ローゼン
お絵かき掲示板
画像掲示板
この記事へのコメント
-
名前: 通常のナナシ #-: 2009/04/14(火) 16:27: :edit泣いた
-
名前: 通常のナナシ #-: 2009/04/14(火) 16:38: :edit胸板
-
名前: 通常のナナシ #-: 2009/04/14(火) 16:41: :editいい話だった(;▽;)
金辺りが次に気付いてくれそうだな -
名前: 通行人α #-: 2009/04/14(火) 16:56: :editこれは面白かった!
このお話が、そのまま原作のエンディングで良いくらいだと思いました。 -
名前: 通常のナナシ #-: 2009/04/14(火) 17:00: :editまな板
-
名前: 通常のナナシ #-: 2009/04/14(火) 17:13: :edit面白かた
-
名前: 通常のナナシ #-: 2009/04/14(火) 17:16: :editこれはいいネタ潰し(褒)
まあ、自立を促すのが目的なら
アリスゲームじゃなくてもよさそうだが -
名前: 通常のナナシ #-: 2009/04/14(火) 17:20: :editいいんじゃね?
-
名前: 通常のナナシ #-: 2009/04/14(火) 17:27: :edit面白かった!
ただ、セリフの合間に入れる状況描写はいらなかったかな
何か脚本っぽいと言うか……
文章力はあると感じるから、わざとなのかもだけどね -
名前: #-: 2009/04/14(火) 17:34: :editその昔チームイノセントというゲームがあってだな
それはともかく最後の真紅のセリフとかいいね -
名前: 通常のナナシ #-: 2009/04/14(火) 17:36: :edit蒼い子が可哀想過ぎる件について
-
名前: 通常のナナシ #TNMtb/9k: 2009/04/14(火) 17:43: :edit何か「12週打ち切り最終回」って感じもしたけど面白かった。
この後、皆がどういう人生を送るのか…とか、蒼やきらきーはどうなるのかが気になるなぁ…。 -
名前: 通常のナナシ #-: 2009/04/14(火) 17:51: :edit最近この手のスレをみると
なんか落ち着かない。
原作が最後どういう盛り上がりを見せるか、はっきりしないからかもしれないが。 -
名前: #-: 2009/04/14(火) 18:02: :editハルヒと違って解釈を出されれば出されるほどSSが作りにくくなるのがローゼンなんだよな・・・・
ある程度方向が制限されているってのが大きな理由なんだけど
読み込む奴は読み込みまくるから、うかうかしてるとネタを先にやられるかも知れんぜ? -
名前: 通常のナナシ #-: 2009/04/14(火) 18:17: :edit蒼い子が変態ですらなかった(´;ω;
`) -
名前: 通常のナナシ #-: 2009/04/14(火) 18:37: :editおい。エンジュはジュンのアナグラムって既出か?
おい。 -
名前: 通常のナナシ #-: 2009/04/14(火) 18:41: :edit水銀燈の伏線も回収して欲しかった
父親を愛しているのか憎んでいるのかの表情を
チラチラ覗かせるのがツボだったのに・・・ -
名前: 通常のナナシ #-: 2009/04/14(火) 19:23: :editとりあえず、ローゼンはきらきーの体を作るべきだろう・・。
-
名前: 通常のナナシ #-: 2009/04/14(火) 19:38: :edit最近はローゼンが多くてヤッホーな気分だ
-
名前: 通常のナナシ #vZbA1Su2: 2009/04/14(火) 19:42: :edit原作設定だとばらしーが出なくてかなしい
原作でもばらしーが出たら買う -
名前: 通常のナナシ #-: 2009/04/14(火) 20:00: :editおお・・・これは見事な・・・
これって大抵のファンが望むドールズの姿だよな
ドールズが自分として生きれる強さを手に入れるってのが
まあ原作のローゼンが狂人なのはほぼ確実だから、
こういう感じのENDは原作では有り得ないだろうがな -
名前: 通常のナナシ #-: 2009/04/14(火) 20:23: :edit思わず涙出た
原作でもこうであってほしい
ありえないだろうが… -
名前: 通常のナナシ #-: 2009/04/14(火) 20:37: :editローゼンしね
-
名前: 通常のナナシ #-: 2009/04/14(火) 20:52: :editすげー綺麗にまとめてるなー
銀さまときらきーが協力するのも原作を上手く使ってるし
おもしろかった!! -
名前: 通常のナナシ #-: 2009/04/14(火) 20:57: :editおお、久し振りの良い話。
原作も救われてほしいなあ -
名前: 通常のナナシ #-: 2009/04/14(火) 20:59: :edit良い話だったよ><
-
名前: 通常のナナシ #-: 2009/04/14(火) 21:45: :editおもしろかったよ!!
ただ蒼い子の扱いがひどいよ・・・
金糸雀?誰それ? -
名前: 通常のナナシ #-: 2009/04/14(火) 22:20: :edit久しぶりにジュンがJUMじゃないSSを見た気がする
-
名前: 通常のナナシ #-: 2009/04/14(火) 22:23: :editドットーレもアリスになったのかな
-
名前: 通常のナナシ #-: 2009/04/14(火) 23:09: :edit久しぶりに原作に忠実なSSだったな。
これが原作でもおかしくないからなあ。
>>153 あるあるwww
作者&ぷん太乙!
-
名前: 通常のナナシ #-: 2009/04/14(火) 23:14: :edit訂正
>>153 ×
>>152 ○
申し訳です(´・ω・`) -
名前: 通常のナナシ #-: 2009/04/15(水) 00:10: :edit冒頭と最後の真紅のセリフはまったく同じものだけど
意味合いが姉妹を倒すから救う目的へと変わっていったのがよかった -
名前: 通常のナナシ #-: 2009/04/15(水) 01:35: :edit厨二みたいな描写がなかっただけに読みやすかった
そして何より面白かった -
名前: 通常のナナシ #-: 2009/04/15(水) 02:41: :edit真紅「ローゼンなど、己になんの関係もないわ!」
-
名前: 通常のナナシ #-: 2009/04/15(水) 02:54: :edit※34
何でドットーレが出てきたのかと思ったらそう言うことかwww -
名前: 通常のナナシ #-: 2009/04/15(水) 03:06: :edit面白かった
どうでもいいがきらきーが言うまで金糸雀を忘れてたwww -
名前: 通常のナナシ #-: 2009/04/15(水) 03:41: :edit空気!空気!金糸雀空気!
ラストにちょろっとだけ出すとかwwww -
名前: 通常のナナシ #-: 2009/04/15(水) 08:20: :edit原作はジュン成長ENDで〆そうな予感
-
名前: 通常のナナシ #NJsiWxd2: 2009/04/15(水) 12:12: :edit原作準拠なのに「ミーディアム」だったのが惜しいけど、面白かった。
-
名前: いちご姫 #-: 2009/04/15(水) 15:31: :edit感動的ぃいいいいいいいいい
-
名前: 通常のナナシ #-: 2009/04/16(木) 01:46: :edit何番煎じだしシリアスなふいんきのわりには山場もなにもないし※欄は相変わらず薄ら寒いし
-
名前: 通常のナナシ #JalddpaA: 2009/04/16(木) 13:02: :edit※41
どこ縦? -
名前: #-: 2009/04/16(木) 14:24: :edit※41はそこまで嫌悪するSSを
こんだけ長いのにキッチリ読んだんだなw
どこまで律儀なんだキサマはw -
名前: 通常のナナシ #-: 2009/04/17(金) 14:56: :edit俺はてっきりJUMがアリスになると思ってたがそんなことは無かったぜ
-
名前: 通常のナナシ #-: 2009/04/17(金) 23:07: :edit※44
ねぇよw