医療事故の再発を防ぐための原因究明制度について考えようと、弁護士や医師でつくる民間団体「九州・山口医療問題研究会」などが18日、福岡市中央区天神のNTT夢天神ホールでシンポジウムを行った。
原因究明制度については、患者に誤って消毒薬を点滴して死亡させた東京都立広尾病院事件(1999年)などをきっかけに必要性が叫ばれ、厚生労働省は医療安全調査委員会(仮称)の創設に向け、法案策定に取り組んでいる。
シンポでは、厚労省担当者が「医療事故の原因究明、再発防止を担う専門組織が日本にはない。調査委を創設し、故意や診断記録の改ざん、同種のミスを繰り返す場合は捜査機関に通知し、その他の場合は行政処分で対応すべきだ」と国の考え方を説明。広尾病院事件で妻を亡くした永井裕之さんは、事故を隠ぺいしようとする医療界の体質を批判した上で「多くの被害者、遺族は真相を知りたい。それに応えることが一番の被害者対応になる」と強調した。
全日本民医連副会長の小西恭司医師は「調査委を医師の責任追及の組織にしてはいけない」として、重大な過失や同種のミスを繰り返す医療者については捜査機関に通知せず、行政処分にとどめるように訴えた。医療版事故調推進フォーラム事務局の木下正一郎弁護士は、調査委の必要性について「院内調査では公正中立性や透明性が保てない。医療者に過重な刑事責任を負わせない制度にするべきだ」と述べた。
=2009/04/19付 西日本新聞朝刊=