国は子育て支援策の目玉として、「妊婦健診を14回分は無料で受けられる」と掲げているが、実際は、住む市町村で対応が異なっている。一部自己負担を求められたり、無料となるのが14回を下回ったりするところも。不況で税収が落ち込む中、厳しい財政状況が影響しているようだ。
妊婦健診は14回受けるのが望ましいとされ、費用は内容により1回5千〜1万円程度。健康保険は適用されない。
国はこれまで、1人当たり5回分(約5万4千円)を地方交付税で自治体に渡してきたが、少子化対策として、10年度までの時限措置で助成を増額。6〜14回分(約6万4千円)も、国庫補助と地方交付税で半分ずつ手当てすることを決定。助成額は、1人当たり約11万8千円になった。麻生首相は1月28日の施政方針演説で「14回分すべて無料にする」と述べている。
ただ、地方交付税の使い道は自治体が独自に決めるため、妊婦健診に全額充てられるとは限らない。また、健診内容や受診機関によっては費用が約11万8千円を超え、自己負担が生じる場合もある。
大阪府枚方市は、4月から3回(1回平均約7千円)を13回に増やした。だが、市の負担は1回2500円、13回でも3万2500円に抑えた。国の予算措置の3割弱にとどまるが、「財政状況を考えたうえでのこと」とする。
大阪府守口市は2回(1回平均6千円)だった助成を、4月から5回に増やした。1回あたりの助成額を2500円に抑えたため、助成総額は500円増の1万2500円にとどまる。市民からは「助成は14回ではないのか」といった問い合わせがあるという。市は「妊婦健診の重要性は分かっているが、市の財政状況が厳しい」と説明する。
福岡県太宰府市は近隣の4市町と歩調を合わせ、4月から5回(1回平均6800円)を10回(同6712円)に増やした。14回への引き上げは検討課題だが、「財政的に厳しい。11年度以降に国の補助制度がどうなるのかも分からない」。
厚生労働省母子保健課は「決定権は自治体にあるが、妊婦健診の重要性を理解し、取り組んでいただきたい」とする。4月1日現在の各自治体の実施状況を調査しており、5月にも発表する予定だ。