きょうの社説 2009年4月19日

◎米粉・飼料米増産 北陸の農業振興には不可欠
 もっちり、ふっくらした食感は、お米ならではの魅力だろう。金沢市の「米心石川」が 同市内の直販店で売り出した米粉パンは、安くて「目からウロコ」のおいしさだった。石川県産米100%のあんパンやカレーパンなどがよく売れ、製造が追いつかないほどの人気という。

 追加経済対策で、転作により新たに米粉用、飼料用の米を生産する場合、十アール当た り二万五千円が上積みされ、助成単価が八万円になる見通しである。販売価格を含めると農家の収入は約十万円となり、主食用米の約十三万円に近づく。経費を差し引いても、一定の利益を得られるようになる意味は大きい。

 典型的な水稲単作地帯の北陸で農業の振興の柱になるのは、やはり米づくり以外にない 。少子高齢化で、主食米の消費は頭打ちだが、主食以外の需要はまだまだ掘り起しの余地がある。虫食いのように広がる耕作放棄地を減らし、農村の活気と水田の治水力を取り戻すために、米粉の消費拡大と飼料米の普及に全力を挙げてほしい。

 米粉の用途は、パン以外にも、ラーメンやパスタ、うどん、ケーキなど和洋の食材に広 がっている。小麦と違ったおいしさが注目されているが、どちらかというと米づくりが盛んな北陸や東北が中心で、首都圏や関西圏などではまだまだ認知度が低く、消費量も少ない。米粉の普及は、私たちが先頭に立つ意気込みで取り組みたい。

 飼料米はトウモロコシの代替飼料として、輸入飼料の価格高騰に苦しんだ畜産農家から の期待が高まっている。石川県では今年、JA能登わかばが豚の飼料米の試験栽培に乗り出す。耕作放棄地で栽培した米を用いた独自飼料で地元の畜産農家が豚を育て、その肉を直売するという。

 また、富山県では既に小矢部市農業青年協議会の稲作農家が昨年から養鶏農家と協力し て、鶏の飼料米栽培に乗り出しており、それを「売り」にしたブランド卵の販売に力を入れている。こうした取り組みが、稲作農家と畜産農家が協力し合う「耕畜連携」のモデルとなり、消費拡大に弾みが付くことを望みたい。

◎新安保宣言を提案 政権選択選挙のテーマに
 日米安保条約改定五十年の来年に向けて、浜田靖一防衛相が新たな日米安保共同宣言の 策定を米側に提案したという。橋本政権下の一九九六年に出された共同宣言に次いで、もう一度、日米同盟の在り方を「再定義」しようというものである。

 米側は回答を保留しているが、日米同盟の再定義は集団的自衛権の行使に関する憲法論 議など、日本の安全保障の根本問題と不可分であり、政権選択がかかった次期衆院選の格好のテーマといえる。外交・安保は票にならないなどといって議論を避けることがないよう各党に、とりわけ日米同盟に関する考え方が分かりにくい小沢民主党に求めたい。

 日米同盟は九六年に、日本防衛のためだけでなく「アジア太平洋地域の平和と安定」に 寄与するものと再定義された。その後の国際社会は、テロの拡大や海賊の横行といった新たな脅威を抱え、東アジアでは、空母建造などで海洋覇権の強い意欲をうかがわせる中国の軍事力増強や北朝鮮の核・ミサイル開発が進んでいる。

 東アジアの安保環境の変化はもとより、オバマ政権の下で米国の世界戦略そのものが変 わり始めている。日米同盟の再検討を促す要因は幾つもあるが、新安保宣言の協議に入れば、国際平和協力活動に対する日本側の意思がまず問われよう。米側は当面、アフガニスタンでの対テロ戦の支援拡大を求めてくるとみられる。

 日米同盟の懸案である集団的自衛権の議論から逃げるわけにもいかない。日本側が従来 通り、行使できないという立場であれば、新安保宣言に米側がどれほどの意義を見いだせるか疑問も残る。

 クリントン国務長官が浜田防衛相の提案に答えなかったのは、次の総選挙での政権交代 の可能性も考えてのこととみられる。気になるのは民主党の対米政策で、普天間飛行場の沖縄県内移設や米軍のアフガン増派、海上自衛隊の給油活動などことごとく反対している。従属的な対米関係からの脱却を説く小沢一郎代表は日米同盟の今後をどう考えているのか、もっと明確に語ってもらいたい。