きょうのコラム「時鐘」 2009年4月19日

 石川県の作った観光ポスターに18年以上も前の千里浜の写真が使われていたことが分かり回収された。県は当初「イメージを大切にしており、使える範囲」と弁明したという

鏡は毎日見るからいいと言った養老孟司さんの講演を思い出す。なぜ毎日なのか。「5年に1回見るとショックを受けるから」というのがオチで、女性たちを笑わせていた。県側の言い訳は、若いころのきれいな写真をいつまでも使い続ける女優のようで、おかしかった

朝、鏡を見る。寝る前にまた見る。一日で顔は変わらない。しわも白髪も小説のようにひと晩で増えることはない。が、顔はいつの間にか老けて行く。郷土の姿も小さな変化は気づきにくい。記録されることも少ない

行政マンは郷土の変化に敏感であってほしい。微少な変化が積み重なって別物になってしまうことがある。毎日観察していて初めて分かる。役所は職場を次々と替わるから観察を正しく受け継ぐ体制も大切だ

微妙な変化に気づくのが早いか遅いか。姿勢の問題というより、能力の要素も大きい。行政だけでなく、どんな職場にも大事なことだろう。