日本による6カ国協議の破壊は成功
日本のごり押しによる北朝鮮ロケット発射を非難する国連安保理の議長声明は、あきらかにダブルスタンダードであり、国際法を無視した筋の通らないものだ。いくら何でも特定の国家だけ人工衛星打ち上げロケットの発射を禁ずるなどということはできない。議長声明では「発射」は「違反」としているが、ミサイルではないことが明らか故に、「発射」する対象が何を示すのか欠いたまま、「違反」とブチあげてしまった。
拘束力がないとはいえ、こんな無様で政治的公正さを欠いた声明がまともなわけがない。日本に配慮した為に、国連安保理はまた大きな失敗を犯した。(国連安保理改革など止めて、肝心なことに役立たずの国連安保理は廃止した方が良いと思う。)
この結果は6カ国協議でやっと一歩前進した朝鮮半島の非核化交渉の成果を日米によって葬ることになり、この地域の緊張関係をかえって増すことになった。
日本を除く6ヶ国協議参加国は、6ヶ国協議を壊すつもりはなく、日本の顔を立てつつバランスをとったつもりであろうが、読みは浅かったと言わざる得ない。北朝鮮が6ヶ国協議からの離脱を表明したことで、米中は慌てている。北 朝鮮は理詰めだ。これまで圧倒的に力の小さい北朝鮮は交渉相手国を公正なルールが期待できる土俵にあげたうえで、相手のイカサマを逆手に要求を通してき た。米国は力の外交しかできないので、なんども北朝鮮に苦汁を飲まされている。今回も北朝鮮に理がある。米国は北朝鮮に頭を下げざる得ないだろう。
国連安保理に決議案を提出した日本の狙いは何なのだろうか?
米朝関係改善を妨害すること。それと北朝鮮を挑発することでこの地域の緊張を高め、自らの安全保障の危機を作り出し、プロパガンダによって世論を誘導して戦争の放棄を謳った憲法のくびきから逃れ軍事力をもって覇権国家の復活を実現することだ。
元々6ヶ国協議も北朝鮮を追い込むためだけに参加していて、はなから朝鮮民主主義人民共和国の存在を認めたくない日本政府と世論は、これまでも度々6ヶ国協議を妨害する行動をとってきた。頭の中は北朝鮮を追い詰めることだけしかない。
”拉致問題”も”核問題”も、米国の安全保障に関わる”ICBM”も北朝鮮を潰すためのカードとして扱われてきた。
前回にも書いたが、日朝間の関係は大きく変わった。これまで日本と北朝鮮は、無視はするが、敵対もしていない関係だったが、今は日本が現在休戦中の朝鮮戦争当事国である米国を差し置いて、北朝鮮と敵対する関係になろうとしている。これについては別に書くが、日本には抜きがたい朝鮮コンプレックスが潜在的にあるからだろう。
日本のメディアは、北朝鮮の反応を”瀬戸際外交”を繰り返す呆れた国家と揶揄するばかりで思考停止している。
週刊金曜日2009.4.10号「戦争ごっこに巻き込まれるな」青木 理の文章から
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それにしても、人民を飢えさせながらハリボテに近い「ミサイル」や「核」に狂奔する北朝鮮の独裁はつくづく罪深い
しかし、その困窮の独裁の一挙手一投足にいきり立つ素振りを見せ、「北風」に必死で帆を立てている日本の政治、メディアの佇まいも滑稽で、なおかつ胡散臭い。
いま求められているのは、徹底的に冷徹な視座で困窮の独裁と脅威の実相を見つめ、なんとしても軟着陸へと導くための真摯な方途の模索であろう。同時に私たちは、奇妙な「北風」に乗じて日本国内に蔓延り続ける浅はかな空気を戒めねばならない。
ここでもやはり、北朝鮮が困窮しながらも周りに害毒をまき散らす迷惑な隣人として、その愚行を指導しなければいけないと、まるで迷惑を一方的に受けている被害者ぶって善人面までしているが、そもそも北朝鮮が独裁軍事政権を維持しなければならないのは、米国の軍事・経済的な圧迫によるところが大きいのではないのか。たしかに、北朝鮮はその独裁的国家体制の中で国民を弾圧してきた。しかし、そのことと現在問題としていることは別なことだ。しかも近年の北朝鮮の激しい威嚇行動は米国と日本による不公正な挑発への反動・反発であるのは明らかだ。
日米の対北朝鮮政策が口先とは裏腹に北朝鮮の独裁政権を維持させ、経済制裁と独裁政治が市民を飢えさせ、核兵器所有までさせたという加害者であることの想像力の無さには絶句するしかない。それは侵略しておきながら被害者意識しかないイスラエルに近いものだ。
欧米の中東政策同様に力の弱い者に対して勝手にルールをつくって追い込んで、必死の抵抗をテロ・犯罪・瀬戸際外交と決めつける帝国主義的思考を続ける限り紛争はなくならない。
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