アウトドアエッセイ

西表に住もう! by山下智菜美

第25回 ゴキブリとたたかう
―カサカサ…カサカサ…、対策を怠ると、部屋中大変なことに!―

 蚊と並んで夏の大敵といえば、ゴキブリ。夏の長い西表でヤツらとのたたかいを制するには、東京で桜が咲くころから対策を始めなくてはなりません。
 北風が弱まり、気候が回復する3月、4月。地元の婦人会ではホウ酸ダンゴ作りを行います。材料はホウ酸、おろしタマネギ、小麦粉。香りづけに牛乳と砂糖も少々加え、よくこねます。それを直径2cmほどに丸め、平たくつぶして天日干し。乾いたらできあがりです。
 婦人会で配られた説明書きによると、置く場所は「台所、トイレ、お風呂場、部屋の隅」。それから、「食器棚、押し入れ、タンスの引き出し、タンスの裏、天井のはり、畳のすき間、下駄箱、ミシンの中」など。「ゴキブリは紙が好きなので、本棚にも」と書いてあります。つまり、家中あらゆるところに念入りに、ということです。それだけゴキブリに悩まされているのです。
 なぜこの季節にダンゴ作りなのかといえば、ヤツらがふ化する前だから。ダンゴを食べたゴキブリがたとえ卵を産んでも、かえった幼虫たちはそのうち死ぬそうです。
 このゴキブリダンゴの威力を過小評価していた私は、今シーズン、大失敗してしまいました。昨年は大してゴキブリも出ず、見かけても案外トロかったので、丸めた新聞紙で退治できていました。ところが今年は5月になると、やっつけてもやっつけても、威勢のいいゴキブリが毎日なん匹も出現するのです。


ゴキブリにかぶりつくヤモリ。


婦人会で作ったホウサンダンゴ。
いかにも効きそうなアメリカ製の殺虫剤。
 夕食を終え、一息つく夜8時ごろ。ヤツらはどこからともなく連れだって現れ、こともあろうに私の部屋をぶんぶん飛び交います。
「おかしいなぁ。昨日も2匹殺(や)ったのに」
などと思いながら、殺虫剤を持って立ち上がると、逃げる代わりにこちらに向かってくるではないですか。“攻撃は最大の防御”といわんばかりです。玄関をふと見ると、ドアの網戸の外側にも、仲間が数匹張りついています。ヒチコックもびっくりです。
 なぜこうなったのかと振り返れば、今年はホウ酸ダンゴを部屋に置いていませんでした。昨年は4月にあった婦人会でのダンゴ作りが、今シーズンは遅れていたのです。ホウ酸ダンゴがそれほど効くとは思っていなかったので、昨年の経験から「西表にはゴキブリは少ない」と勝手に判断し、対策を怠りました。その結果、一斉にふ化したゴキブリが、部屋の内外をわが物顔で飛び回ることに。ちなみにわが家に現れたゴキブリは、去年は大型で動きが鈍く、壁這い型。今年のは小ぶりで敏しょう、飛躍型。赤っぽい感じで、迫力の黒光りがないのが救いでした。
 さて、ヤツらの襲撃に悩まされた私は、すぐに市販のホウ酸ダンゴを部屋にばらまき、その後、婦人会で作った団子もダメ押しで、窓の桟やベッドの上にまで置きました。もう時期が遅いから今年はゴキブリと同棲かなぁ、と半分諦めていましたが、効果は案外早く現れ、間もなく去年並みに。あーよかった。
 そのほか供えてある武器は、昨年、「いちばん効く」と複数の人から勧められて買ったその名も「強力殺虫剤」。アメリカ軍が使っていそうな缶の色、ゴキブリのイラストをあしらわず文字だけというデザインからしてほかとは一線を画しており、実際、威力があります。定番のゴキブリホイホイも使っていますが、こちらはゴキブリより、大型のクモがよくかかります。ゴキブリとクモは、エサの好みが似ているんですかね?

(26回に続く)

ゴキブリホイホイにはよくクモがかかっている。


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