【健康】関節リウマチ<下> 支える人たち2009年4月17日 リウマチ患者の温泉歩行訓練などで全国から患者が集まるJA静岡厚生連リハビリテーション中伊豆温泉病院(静岡県伊豆市)。認定作業療法士の林正春さんは「生物学的製剤で自由に動けるようになったリウマチ患者は増えてきた。それで満足ではなく、関節の変形を抑えつつ、いかに動かしていくかが重要なんです」と強調する。 作業療法は心身に障害を持ち、生活にさまざまな支障を来している人に、日常生活に必要な能力を維持、向上する目的で行われる。関節リウマチ患者への作業療法には、運動や手工芸作品の製作、調理実習、自助具(スプリント)の作製や紹介、装具を使ったリハビリなどがある。 このうち変形予防や関節保護の役割を担うのが装具だ。痛い、合わないといった理由から装具を使わなくなってしまう患者が多い中、林さんの装具は「使いやすい」と支持を得る。手に使う装具の素材は硬いプラスチックではなく、色が豊富なダイビング用のウエットスーツを使い、耐水性やフィット感を持たせた。 昨夏の新作は、小指側に指が変形した尺側偏位と呼ばれる変形に対応。関節を元の状態に戻した上で、指の付け根から手の甲にかけて装具で抵抗をかける仕組みだ。軽度な変形であれば矯正も期待でき、手首も固定されるので、装具を着けて訓練すれば、握力の強化につながる。六月の学会で発表する。 従来は手のひらまで覆ってしまう装具が多く、日常の動作を制限されることが多かった。新作は手のひらの部分が開いているため、「お茶をたてられるようになった」「自転車のハンドルを握ることができるようになった」といった声が寄せられている。 茨城県の石橋節子さん(68)は林さんの装具を五日間着け、スポンジをまいたラップの芯を握っていたところ、握力が二十mmHgアップした。「装具をするのがうれしいくらいおしゃれ。ペットボトルのふたが開けられるようになり、生き返った気分」と笑顔で話した。 だが実際は医師の処方がなければ作業療法は行えない。作業療法士のいる医療機関で治療を受ける患者が対象となるため、希望すれば装具を作ってもらえるというシステムにはなっていない。それでも林さんは患者の求める装具の開発に余念がない。「首から足の先まで何でも作る。そういう作業療法士がいることを知ってほしい」 日本福祉大(愛知県半田市)健康科学部の渡辺崇史准教授が作る自助具にも定評がある。肌の乾燥に悩んでいた女性に保湿目的の市販スプレーを改良したり、ネックレスをさりげなく着けられるようにしたりと、おしゃれを楽しみたい女性の気持ちに応えてきた。リハビリは重要だが「生活は訓練ではない。自分らしく豊かに生活できるよう、生活になじむ物を作って支援したい」と話す。 渡辺准教授の自助具を活用する名古屋市緑区の鎌田真澄さん(51)はリウマチ歴三十八年で二人の子の母。リウマチ患者が参考にできるホームページなどがなかった十年前に自身のホームページを作り、自助具の紹介や生活上の工夫などを載せている。 日本リウマチ友の会愛知支部の支部長を務める今は、自分と同じように若くしてリウマチを発症した若者のため、つどいなどを開いて交流の場を提供する。「治療は目覚ましく進歩していますが、心のケアはやはり患者同士なんです」と力を込めた。 (福沢英里)
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