「多くの人の力を得て、法の壁を越えたい」。迫り来る時効への危機感を共有する遺族が、法改正を求めて立ち上がった。趣旨に賛同する賛助会員も30人に上り、運動は広がりをみせている。結成後の記者会見では既に時効が成立した遺族や時効がない米国で肉親を殺害された遺族ら6事件の7人が現行制度の矛盾や理不尽さを訴えた。
世田谷一家殺害事件で妹を失った入江杏(あん)さん(51)は「人のきずな、社会の支援があってここまでこられた。遺族同士手を携えられ心強く、ありがたい」と語った。長女を殺害され、05年に時効が成立した札幌市の生井(なまい)澄子さん(72)は「時効の午前0時まで解決の電話を待ち、その瞬間娘にごめんねと謝った。偶然だが、娘の名前(宙恵(みちえ)さん)の1字が使われた。娘が会の活動を頑張れと言ってくれているような気がする」と言葉を詰まらせた。
兵庫県尼崎市で長女を殺害され08年7月に時効となった川田五十鈴(いすず)さん(61)は「時効は悲しく、苦しく、つらい地獄。犯人はいつまでも犯人であってほしい」と心情を訴えた。
代表幹事になった小林賢二さんは「昨年9月の娘の命日に時効撤廃の声を上げてから、他の遺族から連絡が入り、半年で会の発足まで来た。同じ思いの人たちと活動を続けたい」と語った。
「宙の会」の連絡先は〒101-0062東京都千代田区神田駿河台3の1の1大雅ビル7階(03・3292・4141、ファクス3292・4242、メールjikou74@nifmail.jp)。【宮川裕章、石丸整】
■「宙の会」会員遺族の主な事件
札幌信金女性職員殺害(90年12月)※
米国ペンシルベニア州男性殺害(92年5月)
兵庫県尼崎市女性殺害(93年7月)※
長野県松本市女性強盗殺害(94年3月)
上智大女子学生殺害(96年9月)
名古屋市西区主婦殺害(99年11月)
世田谷一家4人殺害(00年12月)
新宿歌舞伎町44人死亡ビル火災(01年9月)
佐賀県鳥栖市男性会社員撲殺(04年2月)
広島県廿日市市女子高生刺殺(04年10月)
イギリス人女性英会話講師殺害(07年3月)
※印は時効成立
2009年3月1日