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きょうのコラム「時鐘」 2009年4月18日
イチロー選手に通算安打記録を抜かれた張本勲さんは、現役時代、何度も所属チームを変わった。「巨人の主砲だ」「ロッテの大打者だよ」と、周囲の記憶もまちまち
「東映の暴れん坊」として活躍したころを知るのはかなりの年配で、少年時代は、空き地で「三角ベース」に興じた人々であろう。二塁がなく、内野は三角、外野手はたいがい1人。少人数の野球である 独特のルールがあり、ヒットを打っても、実際には塁に行かない「透明ランナー」もその1つ。走者がいると想定して試合を進める。いちいち出塁していると、打者の数が足りなくなるからである。今の野球少年に鼻先で笑われそうなルールだが、そうまでして野球に熱中した イチロー選手が張本さんを抜くまでに、28年かかった。スター選手は、簡単には出ない。ファンの記憶から消え去った大勢の「透明ランナー」に似た選手たちが日本の野球を支え続け、1人の天才打者を誕生させた その大記録は、海の向こうで達成された。また、有望選手の米国行きに拍車が掛かるのか。そう思うと、誇らしさに、複雑な気持ちも交じる。 |