独立行政法人「日本原子力研究開発機構」(茨城県東海村)が20年以上前に購入した同県那珂市の土地約70ヘクタールが雑木林になって放置され、4月末に一部が残土置き場にされることが分かった。「地上の太陽」と呼ばれる「国際熱核融合実験炉」(ITER)の誘致・建設を夢見たが挫折。国は売却を指示したが不況で買い手がつかない。関係者からは「誘致は国策だったのに今さら売れと言われても」と恨み節も聞こえる。
機構によると、問題の土地は那珂核融合研究所に隣接する約70ヘクタール(約50億円相当)。機構の前身、日本原子力研究所が県開発公社から79〜86年に計93億円で取得した約130ヘクタールの一部。研究所拡張が目的で、約60ヘクタールは研究施設などに使われた。
ITERは太陽で起きている核融合反応を地上で実現し、エネルギーとして使う計画。欧米や日本などが共同で進めており、那珂町(現那珂市)と茨城県は90年代半ばから、この土地にITERの誘致活動を展開。総事業費は約1兆7000億円で、県は当時、誘致の経済効果を1000億円以上と試算した。
ところが、政府は02年、国内の誘致候補地を青森県六ケ所村に決定。その後、建設地はフランスに決まった。
07年末、政府は独立行政法人の整理合理化計画を決定。機構に対し「保有する合理的理由が認められない土地」として、70ヘクタールのうち30ヘクタールを08年度末までに売却などの措置を講じるよう指示。しかし買い手がつかず、機構は08年末、約7ヘクタールについて公共事業の建設残土置き場にする契約を結び、現在、作業が続いている。【八田浩輔】
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