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「アザラシ猟残酷」EUが禁輸法案、輸出国カナダ猛反発

4月17日23時14分配信 読売新聞


「アザラシ猟残酷」EUが禁輸法案、輸出国カナダ猛反発

アザラシ猟に反対する民間団体が16日付欧州紙に載せた意見広告。こん棒でアザラシを殴り殺す狩猟シーンを使い、全面禁輸への支持を訴えている

 【ブリュッセル=尾関航也】毛皮などを目当てにアザラシを殺すのは「残酷」だとして、欧州連合(EU)がアザラシ製品の全面禁輸へ向けた立法手続きを進めている。

 これに対し、最大輸出国のカナダが猛反発し、外交問題に発展する様相を見せている。

 EUの禁輸法案は、5月の欧州議会本会議と6月の閣僚理事会で可決される公算が大きい。成立すると、北極圏で暮らす先住民の輸出品を除き、全アザラシ製品の取引が禁止される。

 アザラシは、主に毛皮の衣類やソーセージなどの加工食品に使われる。カナダ政府が設定した今年の捕獲枠は28万頭で、カナダ通信によると、同国の取引総額は年間約1300万カナダ・ドル(約11億円)。ノルウェーなどほかにも輸出国はあるが、捕獲数ではカナダが圧倒的だ。

 カナダ政府は4月3日、EUが全面禁輸に踏み切った場合、世界貿易機関(WTO)に提訴する方針を宣言。徹底抗戦の構えだ。EUとカナダは5月6日に首脳会議を開き、自由貿易協定(FTA)締結へ向けた交渉に着手するが、その進展も危ぶまれる状況だ。

 EUの動きの背景には、アザラシ猟を「虐殺」(国際ヒュメーン・ソサエティー)と見なす野生動物保護団体の強い働きかけがある。アザラシ猟は猟銃で頭部を撃つのが主流だが、こん棒を使う場合もあり、白い氷上で行われるために血痕が目立ち、凄惨(せいさん)な印象につながっている。

 EUの官僚機構である欧州委員会は当初、捕殺方法を分類したうえで、苦痛を伴う「非人道的」な方法で捕獲されたアザラシに限って禁輸対象とする法案を作成したが、民間団体の働きかけを受けた欧州議会での審議で全面禁輸に修正された。

 カナダ政府は、アザラシ猟反対派の主張が「感情論ばかりで根拠がない」(ゲイル・シェイ漁業海洋相)とし、禁輸で捕獲量が減ると、アザラシが増えすぎて生態系破壊につながると警告している。

 欧州でのアザラシ禁輸の動きは、「かわいそう」という世論に突き動かされており、捕鯨問題で反捕鯨派が「生態系保全」を前面に立て論陣を張るのとも異なる。このため、カナダ政府が生態系への影響を持ち出しても議論がかみ合う余地は乏しい。

最終更新:4月17日23時14分

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