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【農は国の本なり】第3部・バラマキの果て〔3〕 農業予算で事業乱発2009年3月23日
「島内のコメや野菜の販売促進にもつながる」 建設費4億2000万円。1995年、能登島(石川県七尾市)にオープンしたレストラン併設の2階建て観光物産館「交流市場」(道の駅)も、農林水産省の予算獲得の常とう句「農業振興」が名目だった。 館内。北陸地方の民芸品や海産物などをかき集めた売り場の隅っこに、農産物産直コーナーはあった。面積は売り場の10分の1程度で「販売促進にもつながる」というには無理がある。 建設時を知る旧能登島町農林課職員(60)は「観光に使える国の補助事業を探していたら、農業予算が利用できた」と振り返る。 能登島では82年に「能登島大橋」が開通して島と陸続きになると、観光開発に力を入れ始めた。ガラス美術館、水族館、ゴルフ場などを次々と誘致。島が衰退する農業から観光へとかじを切ったにもかかわらず、国の農業予算はさまざまな名目で漫然と流れ続けた。 旧能登島町幹部は「農業予算はいろいろ使えてメニューが豊富だった」と打ち明ける。 大橋完成で、島は国の補助金が手厚い離島振興法の適用対象から外れた。とって代わったのが農業予算。過疎の農村の要望をかなえてくれる新たな“打ち出の小づち”となった。 農水省の事業といえども地元負担分があるが、それも国の支援がある過疎債の発行でまかない、「元手が必要ないからタダ同然。どんどん申請できた」と元幹部は話す。 農水省が地方で推進した「農村公園」は島内に5カ所。そのうち3つが「美しい村作りモデル地区整備事業」で、残り2つは「農村総合整備モデル事業」として建設された。 北陸農政局の担当者も「事業の名目は違ったが、結果的には同じものができてしまった」と認める。集会所もキャンプ場も農業予算。先行きの見通しがたたない島の現実に目をつぶり、「農業振興」を名目に事業を乱発した結果だった。
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